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2000年6 月25日 (日曜日)

【映画評】クロスファイア (2000)

傑作平成ガメラシリーズの金子修介監督が放つ哀しいSFアクション。

【満足度:★★☆】

 パイロキネシス(念力発火能力)という特殊能力を持って生まれた青木淳子(矢田亜希子)は、その秘密をひた隠し、目立たないOL生活を送っていた。
 そんなある日、彼女が密かに想いを寄せていた多田一樹(伊藤英明)の妹・雪江が快楽殺人を繰り返していた小暮昌樹(徳山秀典)の率いる少年グループによって惨殺される。
 しかし、小暮自身が犯行をほのめかしているにもかかわらず、警察は彼が未成年であり、父親が実力者であることから逮捕することができずにいた。
 多田の無念を察した淳子は、自分の持つ特殊能力を彼に打ち明け、彼に代わってこの能力で小暮たちを焼き殺すと宣言する…。

 傑作平成ガメラシリーズの金子修介監督がここでも炎の特撮を駆使しながら、特殊能力を持ってしまった女性の哀しみを描き出す。

 美しく、かつ派手な炎の特撮はやはりガメラシリーズを思い出させてくれるのだが、単純明快な娯楽作品のガメラシリーズと趣が違い、常に哀しみの漂う本作はなんともやりきれない思いにさせられる。
 あまりにタイムリーな時代を反映した少年犯罪もそうだが、淳子の存在そのものが哀しみの象徴のよう。その哀しみが深いからこそ、怒りの炎が文字どおりの火花を散らす。
 主演の矢田亜希子が好演しているからこそ、いかに派手な炎で極悪非道なやつらを燃やしつくそうとも、悪い意味ではなく、爽快な気分にはなれない。
 だが、強いて言えば、これがこの作品の自縛(自爆!?)である。

この先ネタバレなので…

















































では続きをどうぞ

 最終的に彼女の背負った運命が、決して晴れやかな結末を迎えないにせよ、全編に満たされ過ぎている哀しみは、作品としてのカタルシスを放棄してしまってないか?暗いから悪いのではない。展開に感情の波が乏しいのである。
 この作品のような全編哀しみに包まれた作品が嫌いなわけではない。いや、個人的には結構好きなほうだと思う。
 ただ、どんなに暗い内容であろうとも、傑作・名作であれば必ず喜怒哀楽の展開があり、何らかの形で喜や楽が打ち壊されたときに怒りや哀しみの感情が浮き立ち、観客であるわたしたちはそれに感情移入するもんだ。
 しかし本作での淳子は、常に自らの宿命を負い、一瞬でも忘れることがない。
 想いを寄せていた男と歩み寄れたなら、それに身を委ねればよい。結果的にそれが宿命によってやはり成就されないものであっても。その瞬間の喜びが壊されるからこそ、哀しみのカタルシスが産まれる。
 しかし淳子の場合、自分を忘れることがないのだ。
 自律され過ぎた感情は、常に制御され、それはプログラミングされたアンドロイドと変わらず、観客としてはその行き着く結末の確認作業としてしか作品の展開を追うことができない。
 究極の愛の力とは我を忘れることだと思うが、違うか?

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】矢田亜希子/伊藤英明/原田龍二/長澤まさみ/吉沢悠/徳山秀典/永島敏行/桃井かおり
  • 【監督】金子修介
  • 【原作】宮部みゆき『鳩笛草』『クロスファイア』
  • 【主題歌】『The One Thing』 [唄]Every Little Thing
  • 【製作】柴田徹/原田俊明
  • 【脚本】山田耕大/横谷昌宏/金子修介
  • 【音楽】大谷幸
  • 【プロデューサー】瀬田一彦/本間英行/濱名一哉/田上節朗
  • 【撮影】高間賢治
  • 【美術】三池敏夫
  • 【録音】宮内一男
  • 【照明】斉藤薫
  • 【編集】冨田功
  • 【視覚効果】小川利弘
  • 【ビジュアルエフェクトスーパーバイザー】松本肇/根岸義幸/杉木信章
  • 【音響効果】佐々木英世
  • 【日本公開】2000年
  • 【製作年】2000年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】115分

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