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2000年6 月24日 (土曜日)

【映画評】千里眼 (2000)

ヒット作『催眠』と同じ原作者によるサスペンス。

【満足度:★】

 ある日突然、日本各地を米軍のミサイルが襲うというとんでもない事件が起こる。それは既に多数の奇っ怪な事件で世間を不安に陥れていた謎のテロ組織「ミドリの猿」の仕業だった。次なる攻撃目標は日本の主要都市。
 しかしこの第2波攻撃は、人の心のすべてを見通すことができ“千里眼”の異名を持つカリスマ的心理カウンセラー・友里佐知子(黒木瞳)の神業的洞察力によって食い止められる。
 目の前で友里の力を見せつけられたエリート女性自衛官・岬美由紀(水野美紀)は、友里の協力を得ながら「ミドリの猿」の謎を追い始めるが…。

 期待をさせるオープニングは、最近観た日本映画で一番の出来かもしれない。この作品の世界観の大きさを物語るに充分な迫力。
 が、まもなくこの期待は見事なまでに裏切られる。典型的な、説明にてこずった煮詰めの甘い展開となってしまう。

 心理カウンセラーが鍵を握るというのにこだわり過ぎたか、作品世界もやけに縮小。ほとんど身の回りに起こっていること、心の問題に終始する。
 いや、見かけだけは日本征服を狙う悪の組織が暗躍しているわけで、それなりの規模なのだが、なんかこう、○○戦隊××レンジャーみたいに、地球征服を狙う巨大な悪の組織が、小学生相手においしくないお菓子を売りつけて食物不審に陥らせ、ついには日本中の子供らは皆ガリガリの痩せっぽちになるぞと言って喜んでいるような、そんなノリなのだ。…もちろん「ミドリの猿」の策略はもっとまっとうだけどさ。

 ストーリーとしては「ミドリの猿」の全貌、正体の謎解きが縦糸となるわけだが、展開のかったるさと相まって(というか、これがすべて)、まるっきり盛り上がりに欠ける。
 こういう作品の場合ネタばらしになってしまうのであまり書けないが、「ミドリの猿」の全貌が判明する経緯そのものが説明的と言うか、「そろそろ時間ですのでご説明しましょう」的でいただけない。
 感情が高ぶらないから、「絶対許さない」という言葉が説明台詞となってしまうのよ。「ああそうね。怒ってんのね」と冷静に観てしまう。

 しかし惜しいと思うのは、時折見せるスリリングなシーンが日本映画離れした出色の出来なこと。オープニングもそうだが、後半以降で唐突に見せる、文字どおり劇的に変化するアクションシーンでのボルテージの高さはかなり素晴らしい。作品としての意味付けが薄いので絶賛とは言わないが。
 映画としてのクライマックスの盛り上がり方も申し分ない。結末が結末になっていないので、物足りないというより未完成だが。

 クライマックスのテンションの高さのおかげもあって、主演の水野美紀はえらくかっこいい女性になってる。F15パイロットでもあるエリート自衛官というのができ過ぎな感じだが、そのキャラクター設定が活かされていないので、逆に親近味はある。
 一方の黒木瞳も相変わらずそつがなくいい感じだが、黒木瞳自体をあちこちで見かけるのでなんか食傷気味。
 キーパーソンとして柳葉敏郎も好演しているが、これは役自体がなんとも蛇足。一応狂言回し的な位置付けだが、この役、ホントに必要か?

 …と、結局褒めてない?
 つまらなさに不満を漏らすというより、悪いとこと良いとことのあまりの落差で苦笑してしまった。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】水野美紀/黒木瞳/柳葉敏郎/矢島健一/深浦加奈子/田口トモロヲ/根津甚八
  • 【監督】麻生学
  • 【原作】松岡圭祐『千里眼』
  • 【製作】佐藤雅夫/山下暉人
  • 【プロデューサー】渡邊範雄
  • 【脚本】時中進/松岡圭祐
  • 【音楽】千住明
  • 【撮影監督】加藤雄大
  • 【美術】稲垣尚夫
  • 【照明】和栗一彦
  • 【録音】今井善孝
  • 【編集】川島章正
  • 【監督補】鬼頭理三
  • 【制作担当】榊田茂樹
  • 【主題歌】『千里眼-No One Knows Me-』 [唄]Chino [詞]色川百 [曲]千住明
  • 【日本公開】2000年
  • 【製作年】2000年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】100分

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