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2000年8 月 6日 (日曜日)

【映画評】ジュブナイル (2000)

不思議でかわいいロボット・テロラに出逢った少年少女たちのひと夏の大冒険。

【満足度:★★★★★】

 2000年夏のある夜、林間学校に来ていた祐介(遠藤雄弥)、秀隆(清水京太郎)、俊也(YUKI)、岬(鈴木杏)の四人は、森の中にまばゆい光に包まれて現れた小型ロボット・テトラ(声・林原めぐみ)を見つける。テトラは第一声で「テトラ、ユースケニ、アッタ」と。
 これが少年少女たちの人生をも左右するひと夏の大冒険の始まりであった…。

 「素晴らしい」の前に書くべきことが…。この『ジュブナイル』、筆者にとって「大好き」な作品の一本に加わりました。この作品に携わったすべてのスタッフ、キャストの皆様に感謝。
 その上であらためて言わせて。素晴らしいっ!

 基本的には子供向けのSFファンタジーということになるでしょう。
 しかし、この作品を本当に楽しめるのは、『鉄腕アトム』や『ドラえもん』、『機動戦士ガンダム』などに夢中となって幼少期を過ごした大人たちじゃないでしょうか。もちろん、子供たちにもお薦めのファミリー映画の傑作でありますが。
 21世紀へ向けた日本映画の新たなスタートとなる革命といったら褒め過ぎか。

 昨年、ハリウッド大作『マトリックス』が日本製アニメーションの影響を色濃く受けた快作として話題となりましたが、この『ジュブナイル』はそれに対する日本人の答えといっていい内容。
 愛くるしいロボット・テトラは、鉄腕アトムやドラえもんを産み出した日本人の抱く「優しいロボット」像を継承し、また一方でこのテトラが作る戦闘型ロボット・ガンゲリオンは、これまた日本製アニメーションの独壇場だったコンバトラーVやガンダム、パトレイバー、エヴァンゲリオンといった「かっこいいロボット」の流れを見事なまでに実写化してくれている。
 これだけでも幼い頃を思い出させるのに充分なのに、「昭和」の匂いがそこかしこから漂う港町を舞台に、いたずら盛りで海辺や野山を駆け回った少年少女の姿を描き、淡い初恋物語をも織り交ぜ、それらが皆、無理なくこのSFファンタジーの世界で息づいているのだから恐れ入る。主題歌、挿入歌を山下達郎が提供しているのもまた泣かせる。
 さらに周辺の大人たちの描き方も実に丁寧で、この作品が単に子供騙しの作品ではなく、また、昔を懐かしむ大人たちに媚びただけの作品でない、監督を始めとするスタッフ、キャスト一同の作品に対する愛情を感じるのが、またうれしい。
 さらにさらに、筆者がこの作品を愛さずにはいられない決定打となったのが、この作品の視点が少年少女たちに託すべく未来へ向いているということ。ストレートに言えば、誰しも一度は抱いたことのある、そして今まさにその真っ只中にいる子供たちの「夢」を描いた作品ということ。

 この作品を観た子供たちが「僕も(わたしも)将来テトラのようなロボットを作りたい!」と思って科学の道へと進んでくれたら、うれしいじゃないですか。
 その道へ進まないまでも「いつかはテトラみたいなロボットが活躍する時代が来るのかも」っていう夢は、『鉄腕アトム』や『ドラえもん』に「いつかはこんな…」と希望の未来を夢見た今の大人たちとなんら変わらないんですよ。
 そういった夢を抱いていたいい年をした大人たちが、この夢を絶やさないように、今の子供たち、強いては未来へと継承していこうという意気込みがひしひしと感じられて、それがまた感動的。それ自体に感じ入ってしまった映像関係者の端くれである筆者なのです。
 私情ついでに書くと、この作品を観た子供たちが、「将来こんな映画を作りたい!」と思うかもしれない。そう思わせるに充分な力を持っている。

 キャストも香取慎吾、酒井美紀を筆頭に、皆さんいい演技している。
 ただ特別に触れておきたいのは、鈴木杏ちゃん。まだ13歳らしいけど、この子は本物。女優のオーラを持ってる。きっと将来大物になるよ。

 SF作品ということで、テトラの胴体に書かれた「TETRA」の文字が反転しているなど、劇中ではほとんど触れられない細かなことにも気を配った設定がなされている。のですが、正直言って科学的に破綻しているところもいくつかあります。
 しかしこの作品の場合、ドラえもんの秘密道具を科学的にどうこういうのと一緒で、そういうことは無視できる。そんな理屈は抜きにして、充分楽しめるエンターテイメント作品です。
 そして、ハンカチは忘れずに。子供向けだと思ってあなどっていると、ふいに泣かされますぞ。

 …と、書きならがまた涙ぐむ筆者。今回は思い入れ度120%だもんで。
 筆者自身は『ドラえもん』に夢中になった口なんですが、この作品も一番影響を受けているのは『ドラえもん』と断言していいと思います。
 さしずめひょうひょうとした祐介くん(遠藤雄弥)がのび太で、浴衣姿のかわいい岬ちゃん(鈴木杏)はしずかちゃん。もちろんテトラがドラえもん。
 それゆえに、見事に波長が合ってしまった筆者なのでありますが、筆者と同類という方は、どうか子供連れであっても、エンドクレジットも最後まで観るように。
 ちなみに鈴木杏ちゃんの入浴シーンはありませんので、あしからず。(笑)

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】香取慎吾/酒井美紀/鈴木杏/遠藤雄弥/清水京太郎/YUKI/高橋克実/麻木久仁子/桜金造/松尾貴史/林原めぐみ/角替和枝/田原洋/平賀雅臣/黒木宜彦/山根祐夫/田鍋謙一郎/小松和重/海原ローラ/水上潤/小形雄二/北林実季/谷畑聡/鈴木祥二郎/則友謙司/松井哲哉/北浦実千枝/安藤一平/Jerald K Torferson/Adam Chrny/吉岡秀隆/緒川たまき/高杉亘/川平慈英
  • 【声の出演】林原めぐみ/武野功雄
  • 【監督/脚本/VFX】山崎貴
  • 【エグゼクティブプロデューサー】阿部秀司/島村達雄
  • 【プロデューサー】波止康雄/沢辺信政/樫野孝人/安藤親広
  • 【Co.プロデューサー】堀部徹
  • 【撮影】柴崎孝三
  • 【音楽】清水靖晃
  • 【照明】上田なりゆき
  • 【美術】上条安里
  • 【ポストプロダクションスーパーバイザー】百瀬慶一
  • 【ダビングエンジニア】佐藤忠治
  • 【録音】宮内一男
  • 【編集】北澤良雄
  • 【スクリプター】石山久美子
  • 【助監督】佐野智樹
  • 【制作担当】竹内勝一
  • 【キャスティングディレクター】原田泉
  • 【ラインプロデューサー】山際新平
  • 【主題歌】『Juvenileのテーマ~瞳の中のRainbow~』 [作詞/作曲/編曲/歌]山下達郎
  • 【日本公開】2000年
  • 【製作年】2000年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】100分

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