« 【映画評】さくや 妖怪伝 | メイン | 【映画評】ピッチブラック »

2000年9 月14日 (木曜日)

【映画評】U-571 (2000)

大西洋を舞台に極限状態で繰り広げられる潜水艦戦争アクション大作。

【満足度:★★】

 第2次世界大戦真っ只中、ドイツが誇る高性能潜水艦UボートのU-571が大西洋での戦いの末に故障、本国ドイツへ応援の要請を打電した。
 その情報を掴んだ連合軍は、U-571から当時解読不能だった暗号器「エニグマ」を奪取するという極秘ミッションを旧型潜水艦S-33のベテラン艦長・マイク・ダルグレン大佐(ビル・バクストン)に命じる。
 S-33の副艦長・アンドリュー・タイラー大尉(マシュー・マコノヒー)は実力は認められながらもダルグレン艦長からの推薦を受けられず、艦長に昇進できないわだかまりを抱えていたのだが…。

 なんとも不思議なリアリティを持ったドキュメンタリータッチの戦争アクション大作。潜水艦映画と言った方が通りはいいだろう。
 いまどきの戦争映画でありながら声高に戦争反対を掲げるでなく、かといってアメリカ万歳の娯楽志向とも違う。ここで描こうとしているのは極限状態に置かれた男たちの戦いぶりそのもの。
 と、同時に精神的な脆さが弱点だった副艦長・タイラー大尉(マシュー・マコノヒー)の成長記でもある。

 操縦法やドイツ語表記すらわからない敵軍Uボートの乗っ取りや、艦長に成りたくてしょうがないタイラー大尉(マシュー・マコノヒー)が成り行きで艦長の立場となることへの味方内での不協和音など、手の込んだプロットは娯楽映画的要素がたくさん盛り込んであるにもかかわらず、隠し味程度にしか扱われない。
 結局のところこれらは皆、先に書いたように主人公たちを極限状態に追い詰めるための仕掛けとしての機能しか与えられていないのである。そんな中でタイラー大尉(マシュー・マコノヒー)は目に見えて頼もしくなってゆき、その成長ぶりは確かに感動的。
 しかし作品としては物足りなさを感じずにはいられない。

 これがホントに戦争中にその場に居合わせればこの上もない極限状態だろうと想像できるが、しょせんこれは2時間前後の上映時間で描かれる映画の中の世界。生きるか死ぬかの極限状態ではあっても、少なくともクライマックスまではどんなに危機的状況であろうと辛うじて生き残ることを予想してしまう。
 そういう意味で筆者的には潜水艦映画ってあまり楽しめない。
 潜水艦映画では、一発でも命中すれば一巻の終わりという爆雷攻撃をただ天井を見上げて耐えてる姿がひとつのお決まりとしてよく描かれるが、あそこで息を呑むのは当事者だからであって、映画の観客としては「そうは簡単にやられっこないでしょう」と思って眺めるしかないのよ。
 そういった楽観を覆す“なにか”がないと劇映画のサスペンスって成立しないと思うんだけど、大概の潜水艦映画ってそれだけでサスペンス、潜水艦映画の醍醐味だと言い張るからのめり込めない。存在そのものが極限状態でサスペンス的という潜水艦という題材の面白味は認めるけど、劇映画としてはそれに頼らないで欲しい。
 で、この『U-571』もご多分にもれずその傾向が強いのが惜しい。

 下手に情緒的にならないで、ただただ戦いぶりを描いているので、硬派な本格的戦争映画だと言えるが、娯楽性では今一歩。
 硬派な戦争映画としても、意図的に残酷な描写を避けているので、白々しく感じられる。
 成長記としてみても、ほとんどの登場人物に個性が乏しく、人間ドラマとして弱い。個性のなさが、人間が駒として扱われる戦争のリアリティ描写とも採れなくもないが、やはり強引。
 ロック歌手のボン・ジョヴィが出演していることも話題のひとつだが、素顔を知らない筆者が役名を確認し、2度観てもどれが彼かわからなかったのも登場人物の描き込みの貧しさを立証している。ごく一部の主要キャラを除くと個人の名前すらわかりづらいのだ。
 どれもこれもが中途半端なのよ。全体としては大作らしくよくできているのに、これじゃ作品としても印象に残らない。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】マシュー・マコノヒー/ビル・バクストン/ハーベイ・カイテル/ジョン・ボン・ジョヴィ/デビッド・キース/ジェイク・ウェイパー/マシュー・セトル/エリック・パラディーノ/ディブ・パワー/トーマス・グアリー/ジャック・ノーズワージー
  • 【監督/共同脚本】ジョナサン・モストゥ
  • 【共同脚本】サム・モンゴメリー/デビッド・エイヤー
  • 【製作】ディノ・デ・ラウレンティス/マーサ・デ・ラウレンティス
  • 【製作総指揮】ハル・リーバーマン
  • 【撮影監督】オリヴァー・ウッド
  • 【美術】ウィリアム・ラッド・スキナー/ゴエス・ウェイドナー
  • 【編集】ウェイン・ワールマンA.C.E
  • 【衣装】エイプリル・フェリー
  • 【音楽】リチャード・マーヴィン
  • 【原題】U-571
  • 【字幕翻訳】林完治
  • 【日本公開】2000年
  • 【製作年】2000年
  • 【製作国】アメリカ
  • 【上映時間】116分

コメント (0)

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック (3)

この記事のトラックバックURL: ※承認制
http://www.typepad.com/services/trackback/6a0128762d7a9d970c0120a72a4bb5970b

この記事へのトラックバック一覧: 【映画評】U-571:

» 映画『U・ボート(Das Boot)』 ヴォルフガング・ペーターゼン (~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録)
世界映画史上に残る超激渋作品のひとつ。 しかし凄い作品です。本当に。 そして世評の多くには、「圧倒的に強烈に心に残る」こと、「見終った後しばらく呆然とした」こと、そして「これを超える潜水艦映画はありえないだろう」ことが記されています。 では、観客にそ..... [続きを読む]

» 映画『U−571』 ジョナサン・モストウ (~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録)
ハリウッド製の潜水艦戦映画。 ハードコアな戦史マニアからは『U・ボート』との比較でくそみそにけなされている一方、世間一般では「まさに男のドラマ。サスペンスフルでなかなかグッドでした!」という声価もある程度得ているらしいので興味を持ってみたのですが........ [続きを読む]

» DVDをホームシアターで(U-571編) (AV初心者のホームシアターレビュー)
U-571を借りてきて見ました。 5chで見るならやっぱり戦争物でしょと探して来たのがコレ。 初見だと思ってたら一度見ていました(・∀・) でもアカデミー音響賞は伊達じゃなかったです。 5chで見ると全く違った映画に見えました! スゲーーー!! アッチコッチで爆雷がドカ..... [続きを読む]

このページについて - About This Page

  •  『未完の映画評』は、映像業界で働く現役現場製作スタッフかみぃによる個人的な映画サイトです。
     “自戒としての映画批評”と銘打ち、映画館まで足を運んで観た劇場公開最新作の批評・感想・レビューをメインに、リアルタイムに進行する製作日誌、映画にとどまらない業界全般にまつわる雑談・裏話なども掲載しています。
     詳しくはこのサイトについてをご覧ください。

最近のコメント - Comments

2012年度 満足度評価 - Rating 2012

  • 2011年12月11日(日)~ 公開作品
  • ★★★★★ ≒ 溺愛
  • ★★★★☆ ≒ 秀逸
    | 最強のふたり | おおかみこどもの雨と雪 | アーティスト |
  • ★★★★ ≒ 満悦
    | 崖っぷちの男 | 捜査官X |
  • ★★★☆ ≒ 良好
    | 映画 ひみつのアッコちゃん | HOME 愛しの座敷わらし | バトルシップ | ドラゴン・タトゥーの女 |
  • ★★★ ≒ なかなか
    | トータル・リコール | 幸せへのキセキ | テルマエ・ロマエ | ももへの手紙 |
  • ★★☆ ≒ まあまあ
    | アベンジャーズ | ダークナイト ライジング | BRAVE HEARTS 海猿 | 臨場 劇場版 | 外事警察~その男に騙されるな | ブライズメイズ~史上最悪のウェディングプラン | ライアーゲーム-再生- | はやぶさ 遙かなる帰還 |
  • ★★ ≒ いまいち
    | エイトレンジャー | Another アナザー | ヘルタースケルター | ダーク・シャドウ |
  • ★☆ ≒ つまらん
    | Black&White/ブラック&ホワイト |
  • ★ ≒ ダメダメ
    | プロメテウス | 幸せの教室 |
  • ☆ ≒ ふざけんな
    |

最近のつぶやき - Twitter