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2001年1 月31日 (水曜日)

【映画評】バトル・ロワイアル (2000)

42人の中学生が殺し合う、深作欣二監督によるバイオレンスムービー。

【満足度:★★】

 城岩町立城岩学園中学校3年B組七原秋也(藤原竜也)、中川典子(前田亜季)ら、総勢40人の生徒たちは修学旅行中、なんの予告もなく連れ去られる。
 無人島の朽ち果てた廃校で目を覚ました彼らは、自衛隊に守られる元教師のキタノ(ビートたけし)から、彼らは新世紀教育改革法、通称BR法によって選ばれたクラスであること、そしてこの法律により、三日の間に最後のひとりになるまで互いに殺し合わなければならないことを伝えられる。
 こうして、謎の転校生二人(山本太郎、安藤政信)を加えた42人の中学生による殺人ゲームはスタートした…。

 公開前から話題となっていた問題作である。そして筆者の結論としては、なんとも不快な映画である。まさか、ホントに中学生がただ殺し合っている姿を2時間も見続けさせられるとは思わなかった。
 いや、それこそがこの作品のテーマを体現しているのであり、だからこそ『仁義なき戦い』シリーズで知られる深作監督がこの作品を手掛けたかったいうのは想像にかたくない。
 ここの映画評集に並べられた作品群を見れば一目瞭然なように、筆者自身はホラー映画だろうがマフィア映画だろうがまんべんなく観るし、残虐な殺人シーンや血に染まった死体がごろごろ露出する作品を拒絶はしないのだが、この作品の中学生が殺し合うという様は、作品としての善し悪し以前にとうとう最後まで受けつけなかった。

 その上であえて述べておくが、この作品は決して駄作ではない。それどころか、正月映画らしく丁寧に作られた、巨匠による正真正銘の大傑作である。
 某代議士が公開に際してとやかく横槍を入れるというのは、彼がこの作品のテーマを理解していないにほかならず、そういう意味で深作監督のやりたかったことは公開前から勝利している。
 それを踏まえても、筆者と同様にこの作品に対して不快感を抱く観客も少なくなかろう。だが、これもまた監督の勝利。
 この作品は人殺しの良し悪しを語る道徳映画ではなく、ましてや殺し合いのカタルシスを売りとする娯楽としてのスプラッター映画でもない。殺さなければ殺されるという極限状態で人間が採る行動を克明に描いたドキュメンタリータッチの群像劇というのが一番近い表現に思う。

 この極限状態に堪えられず自ら命を断つ恋仲の生徒、マシンガンで一網打尽に殺しまくる生徒、このときとばかりに日頃の怨恨を吐露して襲う生徒、色仕掛けで男子生徒を血祭りにあげる女子生徒、最初は仲良く集団を作っていても些細なことから相手を信じられなくなり反旗を翻す生徒、などなど、ここに描かれる生徒たちの姿は社会の縮図でもあり、また普段は隠されている人間本来の本性でもある。
 さしずめ、この作品に不快感を感じる筆者などは、こんな状況におかれたら、きっと真っ先に殺されることだろう。そういう残酷でみじめな真実が再確認される。
 不快感でまったく受けつけなかった筆者とは逆に、この作品に共感し、諸手を上げて絶賛する向きも少なくなかろう。そういう人たちはきっと生きるためには人をも殺す。念を押すが、そのことを非難するわけでない。それはこの極限状態を生き抜く力の裏返しなだけ。そういことなのだ。

 R-15指定を受けた本作は、やはりそれなりに残酷な描写もあるが、それもホラー映画なら珍しくない程度のものだ。ただ、これを冷静に判断できるかどうかは大人の良識が必要ということ。
 問題作はまず観なければなにも始まらない。この作品もまずご覧になって、貴方自身がこれをどう感じるか、そして、貴方は殺す側か、殺される側か再確認していただきたい。
 そしてさらに、貴方がこんな社会を望むのかどうかも。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】藤原竜也/前田亜季/山本太郎/栗山千明/塚本高史/高岡蒼祐/小谷幸弘/石川絵里/神谷涼/三村恭代/島田豊/松沢蓮/本田博仁/新田亮/池田早矢加/永田杏奈/金澤祐香利/加藤操/日向瞳/石井里弥/金井愛砂美/花村怜美/柴田陽亮/郷志郎/増田裕生/広川茂樹/三原珠紀/嶋木智実/佐野泰臣/日下慎/西村豪起/山口森広/大西修/横道智/内藤淳一/木下統耶子/関口まい/馬場喬子/野見山晴可/井上亜紀/岩村愛/美波/山村美智子/滝川剛/谷口高史/中井出健/深浦加奈子/宮村優子/柴咲コウ/安藤政信/ビートたけし
  • 【声の出演】前田愛
  • 【監督】深作欣二
  • 【企画】佐藤雅夫/岡田真澄/鎌谷照夫/香山哲
  • 【エグゼクティブ・プロデューサー】高野育郎
  • 【プロデューサー】片岡公生/小林千惠/深作健太/鍋島壽夫
  • 【協力プロデューサー】麓一志/富山和弘/加藤哲朗/大野誠一/松橋真三/竹本克明
  • 【原作】高見広春『バトル・ロワイアル』
  • 【脚本】深作健太
  • 【音楽】天野正道
  • 【撮影】柳島克己(J.S.C.)
  • 【照明】小野晃
  • 【美術】部谷京子
  • 【録音】安藤邦男
  • 【編集】阿部浩英
  • 【監督補】原田徹
  • 【製作担当】田中敏雄
  • 【主題歌】『静かな日々の階段を』 [唄]Doragon Ash [作曲/作詞]降谷建志
  • 【制服デザイン】BA-TSU
  • 【製作】「バトル・ロワイアル」製作委員会/東映/アム アソシエイツ/広美/日本出版販売/MFピクチャーズ/WOWOW/ギャガ・コミュニケーションズ
  • 【製作協力】深作組
  • 【配給】東映
  • 【日本公開】2000年
  • 【製作年】2000年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】113分

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