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2001年2 月 3日 (土曜日)

【映画評】13デイズ (2000)

キューバ危機を舞台に描かれる白熱の政治サスペンス。

【満足度:★★★★☆】

 1962年10月16日、アメリカ大統領補佐官ケネス・オドネル(ケビン・コスナー)はいつもと変わらぬ家族との朝を迎えた。彼はまだ、隣国キューバがアメリカ本土に照準を合わせた弾道ミサイルを設置中とは知らなかった。ましてやこの日が、人類史上もっとも緊迫した13日間の始まりなどとは知る由もなかった…。

 これぞ映画。久しぶりにハッピーエンドで本気の安堵を実感させてくれた傑作。
 筆者自身、キューバ危機という史実は自分が生まれるより前のできごとで、教科書の中で習っただけ。リアルタイムに体験したわけではないし、歴史に詳しいわけでもない。そんなことは関係なく、映画としての2時間25分が“あのとき”の13日間として息つく間もなく駆け抜ける。

 決して派手な映画ではないが、ジョン・F・ケネディ(ブルース・グリーンウッド)の国家の長としての重責、身内どうしの感情のぶつかり合い、そしてなにより、姿の見えない敵国・ソビエト連邦との全面核戦争と紙一重な頭脳戦や駆け引き、知的戦争映画とも呼べるこの傑作は、いかに脚本が重要かを教えてくれる。
 大ヒット作『タイタニック』も史実を元にした感動作だったが、あれは主人公二人を創作し、タイタニックの沈没という史実に放り込むことで成功した、結局のところフィクション。だが本作は限りなく史実に忠実に作られた再現ドキュメンタリーでありながら、こうも映画的に密度の高い作品に仕上がっており立派。『タイタニック』が恋愛映画のお手本のような傑作なら、さしずめ本作は政治ドラマのお手本となる傑作。
 物語の展開に一瞬足りとも隙がなく、13日間の史実から汲み取ったエピソード選択の的確さと組み立てのうまさが冴える。戦争目前の相手国は当然ソビエト連邦であるが、そのソビエト国内の様子は一切描かないことにより頭脳戦の緊張感を高め、一方映画として主人公たちの敵と呼べるのは国内の軍部という巧みな構成のお陰で、単に難解な政治映画ではなく、わかり易いエンターテイメント性も失っていない。
 映画王国ハリウッドの底力を見せつけてくれたようで感無量。普段ただ安易に能天気な映画ばかり作っているわけじゃない。娯楽映画のツボを押さえた脚本、演出はおいそれと真似のできない職人技だ。

 フィクション、ノンフィクションを問わず世界の危機が迫るという題材を描いた作品は数多くあるが、本作を観たあとでは、その多くが薄っぺらく平易な作り物だったと感じてしまう。
 いうまでもなくこのキューバ危機は回避されるという既に誰でも知っている結末だが、演出の巧さがその既知の知識を上回り、観客を充実の感動へと導く。
 クライマックスへ向けてそつなく積み上げられる危機また危機の連続が、危機回避というわかりきった結末へ収束し、ただ平凡な毎日こそが平和そのものという普遍のメッセージに結実した瞬間、このなんの飾りっ気もない政治ドラマが映画史に残る名作へ昇華したと確信した。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】ケビン・コスナー/ブルース・グリーンウッド/スティ-ブン・カルプ/ディラン・ベイカー/マイケル・フェアマン/ヘンリー・ストロツィエー/フランク・ウッド/ケビン・コンウェイ/ティム・ケラー/レン・キャリオー/ビル・スミトロヴィッチ
  • 【監督】ロジャー・ドナルドソン
  • 【脚本】デビッド・セルフ
  • 【製作】アーミアン・バーンスタイン/ピーター・O・アーモンド/ケビン・コスナー
  • 【製作総指揮】イロナ・ハーツバーグ/マイケル・デ・ルカ/トーマス・A・ブリス/マーク・エイブラハム
  • 【製作補】ポール・ディーソン/メアリー・モンティフィート
  • 【撮影】アンジェイ・バートコウィアク,A.S.C
  • 【プロダクション・デザイナー】デニス・ワシントン
  • 【編集】コンラッド・バフ,A.C.E.
  • 【コスチューム・デザイナー】イシス・マセンデン
  • 【音楽】テレバー・ジョーンズ
  • 【製作】ビーコン・ピクチャーズ
  • 【提供】日本ヘラルド映画/ポニーキャニオン/丸紅/角川書店
  • 【配給協力】角川書店
  • 【配給】日本ヘラルド映画
  • 【原題】THIRTEEN DAYS
  • 【字幕翻訳】戸田奈津子
  • 【日本公開】2000年
  • 【製作年】2000年
  • 【製作国】アメリカ
  • 【上映時間】145分

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