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2001年4 月 3日 (火曜日)

【映画評】回路 (2000)

容赦のない恐怖が襲い掛かる、『CURE キュア』の黒沢清監督による黙示録ホラー。

【満足度:★★★★☆】

 なんとはなしに、ふらっと劇場に入ったことを後悔し始めるのにそんなに時間は掛からなかった。つまらないんじゃない。本気で怖いのだ。…ったく、映倫はなにをやってんだ。こういう尋常じゃない作品こそR指定にしてくれなきゃ、心構えができないじゃないか。
 すっかり忘れてたんだよ。世界に通用する、第二の黒沢とまで呼ばれる黒沢清監督の渾身の作だもの、そりゃ怖いに決まってるよな。これ冗談でなく、ほんとに子供らが観たら精神破戒しかねないんじゃなかろうかと余計な心配してしまうほど怖い。ワーワー、キャーキャーと絶叫するような怖さじゃない。劇場全体が静まり返るような重厚な恐怖。背筋が凍るとか、身の毛もよだつとかいった例えが実感できてしまうぞ。
 それから、「容赦のない恐怖が襲い掛かる」というキャッチもこの映画のためにあるようなもんだ。だいたい映画ってのは大衆娯楽なんだからさ、いくら恐怖映画だといってもさ、緩急織り交ぜながらの、息をつかせる暇ぐらい与えてくれるもんだろうに、ことこの『回路』に至ってはそんな容赦というか、配慮というか、よくある娯楽映画としてのホラーのスタイルではなく、とことんイッちゃってる。さしずめ“恐怖”そのものを追い詰めようとするドキュメンタリーの如く、2時間の上映時間中、ずーっと息つく暇ナシの緊張しっぱなし。こんな作品を撮っちゃえる監督の気が知れない。
 そもそもストーリーがあるんだか、ないんだかよくわからないまま突き進んで、気づくと貴方も私も死人の仲間入り。劇場出たら、今もどこかで“それ”が進行しているんじゃないかという恐怖にさいなまれる羽目になってんだから。

 初っぱなから怖い怖いの感想ばかりで、ストーリー紹介をしなかったけど、したくないんだよ、実は。
 まぁ、これもノルマなんで紹介するとさ、なんかようわからんけど、身のまわりの人たちがどんどん死んでったり、失踪したりしてる。一方、これまた訳のわからん“死人の覗きサイト”らしきものが暗躍してたりして、とにかくようわからんことになっとる。それがそのままエスカレートしてって、世の終わりって顛末。

 な、ちんぷんかんぷんだろ。それはいいんだ。怖いものが見たかったら観ろ。観るかどうかの判断基準はこれだけで充分。

 筆者のそう多くもなく少なくもない映画鑑賞歴の中で、これほど怖い思いをさせられた作品は記憶にない。この映画評を書くために、いつものように劇場用プログラムを見ながら、スタッフやキャストのリストを書きだすんだけど、劇場用プログラムだから当然劇中の写真が数多く載ってる。その一コマ一コマのすべてが悪寒を掻き立てるのよ。あの恐怖の時間が蘇ってくる。
 しかもさ、“死人の覗きサイト”の光景がさ、今こうしてこれを部屋でひとり打ち込んでる自分の姿とダブっちゃうのよ。だからさ、思い出したくもないのに、ほら、思い出してるぅ。(T_T)…と、顔文字使って、自分を和ませてみたりして。

 最後に断言しておく。
 今後この『回路』より怖い作品は出てきません。黒沢監督自身ですらこの作品を越えることはできない。
 そして本作は歴代の全世界の恐怖映画の頂点、金字塔である。そんな作品がこの日本から産まれたことを皆で喜ぼう。
 ね、そういうことにしようよ。だって、これより怖い作品なんて上映禁止だよ。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】加藤晴彦/麻生久美子/小雪/有坂来瞳/松尾政寿/菅田俊/水橋研二/塩野谷正幸/一条かおり/高野八誠/高島郷/結城淳/森下能幸/丹治匠/哀川翔/長谷川憲司/北村明子/小野輝男/基常結子/狸穴善五郎/安田理英/風吹ジュン/武田真治/役所広司
  • 【監督/脚本】黒沢清
  • 【製作総指揮】徳間康快
  • 【製作】山本洋/萩原敏雄/小野清司/高野力
  • 【プロデューサー】清水俊/奥田誠治/井上健/下田淳行
  • 【協力プロデューサー】神野智
  • 【企画】土川勉/横山茂幹/大塚康高
  • 【撮影】林淳一郎
  • 【照明】豊見山明長
  • 【美術】丸尾知行
  • 【録音】井家眞紀夫
  • 【音楽プロデューサー】和田亨
  • 【音楽】羽毛田丈史
  • 【編集】菊池純一
  • 【スクリプター】小山三樹子
  • 【助監督】吉村達矢
  • 【製作担当】藤原恵美子
  • 【ビジュアルエフェクト】浅野秀二
  • 【主題歌】『羽根~lay down my arms~』 [唄]Cocco [詞/曲]こっこ [編]根岸孝旨
  • 【製作】大映株式会社/日本テレビ放送網株式会社/株式会社博報堂/株式会社IMAGICA
  • 【製作協力】株式会社ツインズジャパン
  • 【配給】東宝株式会社
  • 【日本公開】2001年
  • 【製作年】2000年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】118分

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