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2004年7 月18日 (日曜日)

【映画評】ゼブラーマン (2003)

落ちこぼれ教師が忘れ去られたTVヒーローとなって大活躍!

【満足度:★★★☆】

 時は2010年、横浜市八千代区では巨大ザリガニの発生、アゴヒゲアザラシの異常繁殖などの奇っ怪な現象が続発していた。
 防衛庁が極秘裏に調査を始めたこの街の片隅に、落ちこぼれ教師の市川新市(哀川翔)は居た。
 彼の密かな趣味は、34年前に7話だけ放送されて打ち切りとなったTVヒーロー『ゼブラーマン』のコスプレだった。やがてこの趣味が高じ、街で悪党を倒すという快感に酔い始めたが…。

 “ゼブラーマン”は完全に映画オリジナルの架空のTVヒーローで、TVヒーローをこよなく愛するダメ男が本物のヒーローになっていくという寓話。
 一般的な知名度は低いと思われるので引き合いに出すのはどうかと思うが、傑作『ギャラクシー・クエスト』を髣髴とさせる快作だ。あちらの元ネタが『スター・トレック』なら、こちらは変身モノのアクションヒーローというわけだ。

 売れっ子脚本家・クドカンこと宮藤官九郎の脚本がさすがによくできている。
 軽い笑いを織り込みながらも一貫して夢と親子愛というテーマを前面に押し出していて、最後はファンタジーとして弾けていく展開は、日本映画が忘れかけていたフィクションだからこそのカタルシスを体感させてくれる。
 綿密な計算の上に構成された脚本で、なにはともあれ架空のTVヒーロー“ゼブラーマン”の設定が秀逸。シマウマがモチーフだというこのキャラクターにとても映画オリジナルと思えないぐらい説得力があり、「どうして打ち切りになるほど子供たちに受け入れられなかったか」まで納得させられる基本設定の緻密さには恐れ入った。この緻密さがあってこそ後半の絵空事な展開が夢物語に昇華してるといえるだろう。

 脚本がいいとなると職人監督・三池崇史がハズすわけもなく、ここでもそつのない仕事っぷり。この作品世界をおもちゃにして楽しんでいる。

 楽しんでいるといえば、誰よりも主演の哀川翔だろう。ヤクザ役の多かった彼の主演100本目を飾る作品がこんなとぼけた作品だとは、彼自身も含め誰も思わなかっただろうが、ダメ教師の市川が夢を貫き、練習を通してヒーローに目覚めていく姿を観ていると、この役は彼しかいないと思えてくるから不思議だ。
 ヒロイン役の鈴木京香がこれまたびっくりさせてくれる。せっかくなので詳しく書かないが、まさに女優として旬といえる彼女がよくこの役を引き受けたものだと感服させられた。
 市川の娘・みどりを演じた市川由衣も同様。一昔前ならこういう汚れ役紙一重のキワドイ役はアイドルと呼ばれる人種は引き受けなかったものだが、と変なところで時代の違いを痛感した。若い人たちはともかく、市川由衣という名前をまだ知らない人もいるだろうが、彼女は最近めきめきと頭角を現しているグラビアアイドル。女優としても今後が楽しみな注目株なので名前を覚えておいて損はない。

 TVヒーローが題材なので子供向け、或いはファミリー向けの作品と思われるかもしれないが、内容的には完全に大人向けのファンタジー作品。この作品の唯一の欠点がこれで、後半を勢いで押し切ってしまうのなら小さな子供も観れる内容にしてもよかったんじゃないかと思うのだ。
 まあ、童心を忘れない大人ヘの贈り物と思えば、コスプレを楽しむ市川の如く大人だけが密かに楽しむのがオツなのかもしれないが。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】哀川翔/鈴木京香/内村光良/市川由衣/近藤公園/安河内ナオキ/渡辺真起子/古田新太/麻生久美子/袴田吉彦/柄本明/岩松了/大杉漣/渡部篤郎
  • 【監督】三池崇史
  • 【脚本】宮藤官九郎
  • 【エグゼクティブ・プロデューサー】黒澤満/平野隆
  • 【企画】福地公美/遠藤茂行
  • 【プロデューサー】岡田真/服部紹男
  • 【撮影】田中一成
  • 【CGIプロデューサー】坂美佐子
  • 【音楽】遠藤浩二
  • 【美術】坂本朗
  • 【照明】三重野聖一郎
  • 【録音】小原善哉
  • 【編集】島村泰司
  • 【企画協力】がんも
  • 【ロケ協力】水海道市/水海道市フィルムコミッション
  • 【製作】東映/TBS/東映ビデオ/MBS/WOWOW/小学館/毎日新聞社/電通/スポーツニッポン/BINGO
  • 【製作協力】セントラル・アーツ
  • 【配給】東映
  • 【日本公開】2004年
  • 【製作年】2003年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】104分

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