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2004年12 月25日 (土曜日)

【映画評】スイミング・プール (2003)

避暑地のプールを舞台に繰り広げられる幻惑的な女のミステリー。

【満足度:★★★☆】 (鑑賞日:2004/06/29)

 スランプに陥っていた人気女流ミステリー作家のサラ(シャーロット・ランプリング)は、出版社社長ジョン(チャールズ・ダンス)の薦めで彼の所有するプール付きの別荘へ単身訪れる。
 あとから来ることになっていたジョンが一向に現れないことを訝しがるサラだったが、美しい自然に囲まれたその別荘での生活は順調に彼女の創作意欲を取り戻させていった。
 しかしそこにジョンの娘・ジュリー(リュディヴィーヌ・サニエ)が現れる。夜な夜な別荘に男を連れ込むジュリーにいらだちを覚えるサラだったが…。

 フランソワ・オゾン監督の作品は初見だったのだが、いいね、この語り口。
 ジュリーの妖艶な美しさといい、嫉妬するサラの冷たい視線といい、透き通ったブルーを湛えるプールといい、全編が静かな緊張感に満ちていて息が抜けない。そして迎える驚きのラスト。

 このラストがまたいい。すべての謎が氷解するとかの類いの結末ではない。逆に観る者それぞれにそれぞれの答えを探させる、より深みにはまる鮮烈な幕引き
 男たちとの狂乱を繰り返すジュリーの姿から“ある映画”が頭をよぎった筆者はこの結末はある程度予想できていたのだが、その引き際があまりにも見事で、感づいていてもあっけにとられた。
 このラストも含め、ミステリアスな空気感の中に女性への讃歌を描き切った秀作。

 そういう作品なので、ネタバレしないでどうこう言うのは難しい。ネタバレを含めて書くので、素で楽しみたい未見の方はこれ以降は読まずにいて欲しい。
 ただ、観た人なりの解釈ができてしまう作品なんで、あくまで筆者なりの解釈。

この先ネタバレなので…

















































では続きをどうぞ

 ごく端的に言えば、自分が枯れてしまったと思っていたサラがジュリーとの出会いによって自分に自信を取り戻す話。
 ただ、その取り戻す過程の描き方が恐ろしく象徴的で、そもそもジュリーって存在したの?って結末。
 終わってみればジュリーはサラ自身が書いていた小説の登場人物、つまり架空の女ということになるのだが、さらに言えばジュリーとはサラ自身のことなんだろう。

 サラは若かりし頃の自分をモデルに小説を書こうとした。自分をジョンの娘・ジュリーに置き換えて話を膨らませながら。
 しかし寝る間を惜しんで仕事をし、一方で若気の至りを繰り返してきた自分に嫌気がさしてくる。
 でも、それはそれで若さの特権と興味を示し、ネタに尽きない執筆は順調に進み始める。
 が、重くのしかかるのは、妊娠中絶、言い換えると殺人を犯した過去。
 さすがにそれを書くのは過去の自分が許さない。そのことに狼狽した過去の自分が。
 でもそもそも自分は隠しごとを文章にする仕事をしてきたじゃない。人生に秘密なんていくらでもあるもの。
 かくして過去の自分に翻弄されることなく、小説は佳境へ。
 今ある自分が主導権を取り戻したことそのことで自信を取り戻し、新たな秘め事を求めて我が人生を謳歌。

 とまあ、はなはだ強引に映画の筋立てを解釈してみたが、実際のところはそんな具体化された解釈は器でしかなく、この映画を浮き立たせているのは、そのイマジネーション化にほかならない。それはさしずめこの作品の中で映し出されるプールが魅力的なのはその器ととしての外形ではなく、そこに満たされた水のきらめきにほかならないように。
 それはまた人生にもあてはまる。目に見える行いではなく、そこに満たされた(ときには淫らな)イマジネーションが人を輝かさせるのだ。

 奔放なジュリーを演じたサニエの脱ぎっぷりのよさもさることながら、サラを演じたランプリングのいぶし銀の演技が目に焼きつく。
 ストーリー的には結末でひっくり返されるが、結末へ向けての彼女の変貌ぶりがこの作品のテーマそのものなのだから、彼女あっての本作。

 すごくいい感じで観れたんだが、惜しむらくはやっぱりこの作品は女性のための映画。突飛な結末や象徴的なストーリーについては自分なりの解釈を見つけられるが、男である筆者にはこの映画のテーマを本当に理解することの方が難しいと思う。
 そのもどかしさが思いのほか大きかったのは、きっと女性映画としての完成度が高いゆえなのだろう。

 あ、冒頭に挙げた、オチが同じ“ある映画”って知りたいですか?
 ヒントは、数年前の公開当時、斬新な映像で話題になったハリウッド大作。『マトリックス』じゃないぞ。911以降の今ではかなりきわどい問題作となってしまったな。
 ネタバレになってもよければその作品の批評文もどうぞ。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】シャーロット・ランプリング/リュディヴィーヌ・サニエ/チャールズ・ダンス/マルク・ファヨール/ジャン=マリー・ラムール/ミレイユ・モセ
  • 【監督】フランソワ・オゾン
  • 【製作】オリヴィエ・デルボス/マルク・ミソニエ
  • 【脚本】フランソワ・オゾン/エマニュエル・ベルンエイム
  • 【撮影】ヨリック・ルソー
  • 【音響】ルシアン・バリバー
  • 【美術】ウォウター・ズーン
  • 【編集】モニカ・コールマン
  • 【衣装】パスカリーヌ・シャヴァンウ
  • 【メイク】ジル・ロビラード
  • 【ヘア】ミリアム・ロジャー
  • 【音楽】フィリップ・ロンビ
  • 【提供】ギャガ・コミュニケーションズ×テレビ東京
  • 【配給】ギャガ・コミュニケーションズ/Gシネマグループ
  • 【宣伝】ギャガGシネマ海×アニープラネット
  • 【後援】フランス大使館文化部/ユニフランス東京
  • 【協力】アーティストフィルム
  • 【原題】Swimming Pool
  • 【字幕翻訳】松岡葉子
  • 【日本公開】2004年
  • 【製作年】2003年
  • 【製作国】フランス
  • 【上映時間】102分

作品データ - Film Data

コメント (6)

こんにちは。
スイミングのDVDが出ましたね。自分もこの映画の謎にかなりやられてしまった口なので、興味深く解釈を拝見しましたw。

またBlog覗かせていただきます。
TBさせて頂きました、またヨロシクお願いします。

>linさん
 かなり大風呂敷を広げた解釈で恥ずかしいんですが(苦笑)、この『スイミング・プール』は、ハリウッド大作などでは味わえない、なんとも言えない魅力を持った映画でしたよね。
 これからもよろしくお願いします。

女性のための映画、女性映画としての完成度が高い、という批評がよかったです。

オゾンは、本当に女性を美しく描いていますね。

TBさせていただきました。よろしく。

>姫さん
コメントありがとうございます。

この映画には、謎を秘めたお姉様を遠目に見るようなドキドキ感がありました。
興味はあるんだけど近寄り難い、そんな感じ。
言い換えると、自分より精神年齢が高い映画ですかね。
まだまだ修行が足りないようです(笑)。

TB、コメントありがとうございました。
かみぃさんの鋭く大胆な解釈じっくり
読ませていただきました。
中絶は殺人のところにどきっとしました。
過去のサラは奔放だったのでしょうか?
女性のための映画というのは同感です。
同性だからこそ痛い部分もすごくよく
見えて勉強になったり、反省したり・・・。

>ユカリーヌさん
正直言って男の自分には「表面的にしか解釈できないなぁ」っていう歯がゆさのある映画なんですが、あまりに抽象的な映画だからこそ、思い切って大胆に切ってみました(笑)
解らないなりに自己解釈で楽しんでいい映画かとも思いましたしね。

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