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2004年12 月15日 (水曜日)

【映画評】天国の本屋~恋火 (2004)

天国と地上とを交錯して繰り広げられるラブファンタジー。

【満足度:★★★☆】

 リストラされたピアニストの健太(玉山鉄二)は、ヤケ酒を飲んでいた酒場でヤマキという男(原田芳雄)から“天国の本屋”のアルバイトにスカウトされ、生きながらにして天国に導かれる。健太はその天国で影のある女性・翔子(竹内結子)と知り合う。
 一方地上では、和菓子屋の娘・香夏子(竹内結子、二役)は、町に伝わる今は失われた“恋する花火”の伝説を聞き、ぜひこれを町の花火大会で復活させたいと躍起になるのだが…。

 予備知識もなく観たら、タイトルになっている“天国の本屋”が比喩ではなく、ホントに天国にある本屋だったんで驚いた。しかもその天国が、ファンタジーファンタジーした幻想的なものではなく、アロハシャツ姿のヤマキを筆頭に、ごく自然に“そこ”に存在する。
 ただ、この自然さが諸刃の剣となって観る者を選んでいるように思う。筆者はファンタジー好きなのでこの手の演出もすぐに馴染めたが、見方によってはすごく安っぽいファンタジー映画に成り下がっているように感じられて、人によっては馬鹿馬鹿しくも見えるだろう。
 しかしこれは受け手の好みの問題が大きい。映画として致命的なのはこれよりも脚本。

 この作品、シリーズ化されているベストセラー小説の二つのエピソードを一本の作品として映画化したんだそうだ。しかし、この二つのエピソードを一本にという脚本上の作業が明らかに煮詰め不足。『天国の本屋~恋火』という、どっちつかずな中途半端なタイトルがそうであるように、全編を通して消化不良がつきまとう。
 ただ惜しいのは、個々のエピソードは決して悪くなく、この小説を映画化したかったという製作者側の気持ちは理解できるし、翔子と香夏子をひとり二役で結びつけるアイデアも巧いと思う。
 あともう少し推敲の時間があればという脚本家の歯ぎしりが聞こえてきそうな今一歩感が、観ていても歯がゆい。

 実際この細かい構成上の問題を除けばかなりいいのだ。
 実力派篠原哲雄監督の演出は随所にその力量が発揮されており、美しい北海道の風景やピアノ組曲の音色と相まって、さわやかな感動で心揺さぶらされる。
 ひとり二役を演じ分けた竹内結子を始めとする俳優陣の芝居もいい。
 とくに長回しワンカットで撮られた、竹内結子演じる香夏子と香川照之演じる花火師の瀧本がののしり合うシーンは、画面の隅々まで緊張感がみなぎり、見ごたえ充分だった。

 そして特筆しておきたいのが、映画のラストカット。語らずして描く、行く末を暗示した素晴らしい終幕だと思う。その瞬間、心の中で「お見事!」と手を打った。
 全体的には不器用で、万人に薦められる傑作とは言い難いが、このラストの後味の良さにすべてを肯定したくなる、愛すべき佳作。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】竹内結子/玉山鉄二/香里奈/新井浩文/大倉孝二/斉藤陽一郎/斎藤歩/宮内達哉/長谷川加奈/貞広典子/中村淳一/久保海晴/重田恵里/猪俣ユキ/かとうかずこ/あがた森魚/根岸季衣/塩見三省/香川京子/鰐淵晴子/丸橋夏樹/福谷亮弥/水木薫/竹嶋康成/森下能幸/ロケット・マツ/川口義之/三上敏視/田口昌由/山岡一/佐々木美紅/吉田日出子/桜井センリ/香川照之/原田芳雄
  • 【監督】篠原哲雄
  • 【企画/プロデュース】宮島秀司
  • 【製作代表】迫本淳一/森隆一/亀井修/石川富康/細野義朗/早川洋
  • 【製作】久松猛朗
  • 【プロデューサー】榎望/遠谷信幸
  • 【原作】松久淳+田中渉『天国の本屋』『天国の本屋 恋火』
  • 【脚本】狗飼恭子/篠原哲雄
  • 【ラインプロデューサー】斉藤朋彦/岩田均
  • 【撮影】上野彰吾(J.S.C.)
  • 【美術】小澤秀高
  • 【照明】矢部一男
  • 【録音】岸田和美
  • 【編集】川瀬功
  • 【音響効果】帆苅幸雄
  • 【音楽プロデューサー】小野寺重之
  • 【配給】北川淳一
  • 【宣伝】大角正
  • 【宣伝プロデューサー】並木明子
  • 【ヴィジュアルエフェクト】泉谷修
  • 【スクリプター】西岡容子
  • 【装飾】山本信毅
  • 【演技事務】小林宏治
  • 【助監督】谷口正晃
  • 【製作担当】森太郎
  • 【プロデューサー補】野地千秋
  • 【音楽】松任谷正隆
  • 【主題歌】『永遠が見える日』 [作詞/作曲]松任谷由実 [編曲]松任谷正隆 [歌]松任谷由実(東芝EMI)
  • 【プロデューサー補】野地千秋
  • 【製作】松竹/電通/小学館/衛生劇場/S・D・P/テレビ朝日
  • 【配給】松竹
  • 【日本公開】2004年
  • 【製作年】2004年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】111分

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