【映画評】ビッグ・フィッシュ (2003)
ほらふきお父さんと彼に相容れない息子の最期の交流を描いた心温まるファンタジー映画。
“現代のおとぎ話”なんて使い古された表現をあえて使いたくなるファンタジー映画の傑作。
『バットマン』シリーズや『スリーピー・ホロウ』など、どちらかというと暗いファンタジー映画のイメージが強いティム・バートン監督の新境地。
ジャーナリストのウィル・ブルーム(ビリー・クラダップ)の父親・エドワード(アルバート・フィニー)は、地元では有名な話し上手な大ほらふき。子供のころならまだしも、いくつになってもほら話を聞かされるウィルはそんな父をいつしか嫌うようになっていた。
豪快な人生を歩んできたエドワードも今は病床の身。そこでの会話も何度も聞かされたほら話ばかり。そんなエドワードが最期のときを迎えようとしていた…。
ファンタジー映画といっても、映画の形態としてはリアルな親子の交流ドラマなんで、魔法や化け物が出てくるファンタジー映画は嫌いという向きにもお薦めできる。『ハリー・ポッター』シリーズような、純然たるファンタジーワールドを描いたファンタジー映画とは違う、大人のための大人のおとぎ話だ。
ではどんなところがファンタジーなのかというと、エドワードの語る回想シーンが劇中劇のような入れ子の構成になっており、この“ほら話”が文字通り絵に描いたようなファンタジー映画の様相を見せているだけなのだ。
着地点はリアルワールドながら、リアルと抽象とを非常に巧みな構成で語ってみせている、これぞファンタジー映画。
まず、エドワードの語る、若き日の彼(ユアン・マクレガー)と未来の奥さん(ジェシカ・ラング)となるサンドラ(アリソン・ローマン)のなれそめが感動的なラブストーリーとなっており、これだけでも心ときめく素晴らしいファンタジー映画なのだが、この作品はこれにとどまらず、父と子の心の交流を描いて涙々の大団円を迎える。
ほら話として描かれる回想シーンと違って、リアルシーンのエドワードとウィルの関係はかなり重苦しい。
もちろんこの手の作品の常で、最後には予想通り互いの理解によって心を交わすのだが、この描き方が予想を越えて素晴らしい。ほら話とリアルとが合流してすべてが氷解する、おとぎ話誕生の瞬間を見たような気がする素晴らしいクライマックスだ。
さらにこの作品では、筆者が作り手側の人間だからか、ほらふきお父さんの姿がティム・バートン監督自身にダブって見えてくる。
監督の半生を描いているとかではない。ファンタジー映画というフィクションを描く者としての苦悩と主張が垣間見える気がするのだ。
そう思って観ると、この作品は監督の「これからもファンタジー映画を創っていくよ」という宣言にも見えてくる。
こんな作品に逢えるから、映画って素晴らしい。そう思える心に残る大きな魚。ぜひ御覧あれ。
作品データ - Film Data
- 【キャスト】ユアン・マクレガー/アルバート・フィニー/ビリー・クラダップ/ジェシカ・ラング/ヘレナ・ボナム=カーター/スティーブ・ブシュミ/ダニー・デビート/アリソン・ローマン/ロバート・ギローム/マリオン・コティヤール/マシュー・マグローリー/エイダ・タイ/アーリーン・タイ
- 【監督】ティム・バートン
- 【脚色】ジョン・オーガスト
- 【原作】ダニエル・ウォレス
- 【製作】リチャード・D・ザナック/ブルース・コーエン&ダン・ジンクス
- 【製作総指揮】アーン・L・シュミット
- 【撮影監督】フィリップ・ルースA.F.C./A.S.C.
- 【美術監督】デニス・ガスナー
- 【編集】クリス・リーベンソンA.C.E.
- 【衣装デザイナー】コーリン・アトウッド
- 【音楽】ダニー・エルフマン
- 【提供】コロンビア映画
- 【配給】ソニー・ピクチャーズ エンタテイメント映画
- 【原題】BIG FISH
- 【字幕翻訳】戸田奈津子
- 【日本公開】2004年
- 【製作年】2003年
- 【製作国】アメリカ
- 【上映時間】125分
- 【公式サイト】http://www.big-fish.jp/
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