【映画評】スパイ・バウンド (2004)
闇の世界で暗躍するスパイをリアルに描いたフランスのサスペンス映画。
渋い、渋過ぎる。作品全体を包むドライな感覚がたまらない。
映画はフランスの情報機関DGSE(対外治安総局)に従事するスパイの男・ユージェヌ(シャルル・ベルリング)が複数の男たちに追われる尾行劇から始まる。
冒頭からかなりの時間セリフがない。観客もスクリーンをよく見ていないと不意に彼の姿を見失う。
こういった静かに進行する駆け引き、やりとりがこの映画の醍醐味。
いわゆるスパイ映画。しかし現実離れした秘密メカや超人的なアクションは登場しない。
前半は国家の情報機関としてのスパイたちの暗躍ぶりが、後半はその闇の世界から抜け出そうとする女スパイのリザ(モニカ・ベルッチ)と彼女を助けようとする同僚のジョルジュ(ヴァンサン・カッセル)の試練や葛藤がコントラストの効いた映像で淡々と描かれる。
常に周囲を気にし、会話のほとんどがコソコソ話のスパイたち。“職業としてのスパイ”があくまでストイックに描かれるのだ。
そんな調子で退屈かというと決してそんなことはなく、終始スリリングな時間を満喫できた。
とりわけ中盤でのジョルジュの即席の変装にシビれた。こんな簡単な方法でいともあっさりって感じで、スパイとしての面目躍如。
内に秘めた思いを抱えながらも目立たぬように任務を遂行するモニカ・ベルッチやヴァンサン・カッセルの抑えた演技もいい。
転機となる空港でのリザがジョルジュに送る不安げな視線が印象的。
総じてこの作品の持つ息を呑むような緊張感は好きなのだが、惜しむらくは、肝となるべき「この仕事から足を洗うことにした」リザの決意の動機付けが希薄なこと。セリフでは唐突に説明されるが、きっかけが描かれていないので今ひとつ伝わってこない。
また欲を言えば、この映画ではリアルな“スパイの活躍”、“スパイを辞めるための試練”を観せてはくれるが、“スパイになったいきさつ”も観たかった。
地味な作品で食い足りなさもありはするが、骨太なスパイ映画として記憶に残るだろう。
作品データ - Film Data
- 【キャスト】ヴァンサン・カッセル/モニカ・ベルッチ/アンドレ・デュソリエ/シャルル・ベルリング/ブリュノ・トデスキーニ/セルジオ・ペリス=メンチェッタ/リュドヴィック・シェンデルフェール/エリック・サヴァン/セルジュ・アヴェディキアン/ガブリエル・ラジュール/ナイワ・ニムリ/シモン・アンドルー/ロザンナ・ウォールズ/ジェイ・ベネディクト/モード・ビュケ/ベアトリス・ケスレール/ロベルト・モロ/フランソワ・ベルコヴィッチ/シャドラク・マランカ/マリナ・モンカド/ジョー・プレスティア/ポール・シェンデルフェール/ルイ・シェンデルフェール
- 【監督】フレデリック・シェンデルフェール
- 【脚本】フレデリック・シェンデルフェール/オリヴィエ・ドゥイエール
- 【脚色/台詞】フレデリック・シェンデルフェール/ヤン・ブリオン/オリヴィエ・ドゥイエール/リュドヴィック・シェンデルフェール/ジャン・コスモ
- 【撮影監督】ジャン=ピエール・ソヴェール
- 【美術】ジャン=バティスト・ポワロ
- 【衣装】ヴィルジニー・モンテル
- 【編集】イレーヌ・ブルキュア
- 【録音】ジャン・グディエ/フレデリック・アタル
- 【ミキシング】ジェラール・ランプ
- 【特殊効果】マック・ガフ・リーニュ
- 【音楽】ブリュノ・クレ
- 【エンディング曲】IAM
- 【助監督】ジェローム・ダシエ
- 【製作指揮】カトリーヌ・ラプジャド
- 【製作担当】アンリ・ル・テュルク
- 【記録】オリヴィア・ブリュイノーグ
- 【スチール】エリック・カロ/ロランス・トレモレ
- 【ポストプロダクション・チーフ】アントワーヌ・ラバト
- 【共同プロデューサー】フランシスコ・ラモス
- 【プロデューサー】エリック・ネヴェ
- 【提供】コムストック/ポニーキャニオン/レントラックジャパン
- 【配給/宣伝】コムストック
- 【原題】AGENTS SECRETS
- 【字幕翻訳】松浦美奈
- 【日本公開】2005年
- 【製作年】2004年
- 【製作国】フランス
- 【上映時間】110分
- 【公式サイト】http://www.spybound.jp/
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私もこの作品は渋くて、ムードがとても好きだったのですけど、なかなか同じような意見の方が見つからなくて・・・。
思わず勝手に喜んでしまいました。
投稿情報: chishi | 2005年2 月 4日 (金曜日) 22:01
僕はかなり好きな映画ですよ。
あちこちの感想で、的外れな期待をしておいて酷評されているのは、正直意外でした。
宣伝とか見てたら、明らかに『007』シリーズ、『M:I2』や『ボーン・スプレマシー』を期待するような映画じゃないってわかると思うんだけど、なぜにそれらと比較してダメ出しするかなぁ(>_<)
ハリウッド的じゃないところにこの映画の魅力があるのにね。
投稿情報: かみぃ | 2005年2 月 5日 (土曜日) 07:55
コメント&TB返しありがとうございました。
「骨太なスパイ映画」というのは同感です。
全体の雰囲気は、ハリウッド映画とは違って堅実で地に足のついた感じでよかったと思います♪
私もわからないまま終わるのは悔しいです(笑)もう1回みようかな~、上映終了にならないうちに。
投稿情報: tora-mie | 2005年2 月 5日 (土曜日) 08:33
そうそう!そうなんです。
あのCMからだって、絶対違うムードの作品ってわかると思うのです!
あの「私、仕事(スパイ)辞めます」っていうコピーはちょっと・・・なのですが(汗)
投稿情報: chishi | 2005年2 月 5日 (土曜日) 22:03
>tora-mieさん
こういう地味な映画でハズレを引くと結構重症となるので博打になってしまいがちですが、ハリウッド大作ばかりじゃね。こういう映画も捨てがたい存在です。
あと、この映画は登場人物が皆コソコソ行動してるせいで、2回観ても新たな発見があったりして楽しめましたよ(^^)
>chishiさん
あのキャッチコピーじゃ誤解されちゃう(苦笑)
主役はヴァンサン・カッセルといったほうがいいし、辞めることが話の中心になるのは中盤以降…。
もうちょっと考えて欲しいですよね。
投稿情報: かみぃ | 2005年2 月 6日 (日曜日) 03:58
ハリウッド的じゃないというよりは、昔(70〜80年代)のハリウッド風なんだと思います。
思い付くままにスパイ・バウンド観ながら連想した映画
「ターゲット」(アーサー・ペン監督、ジーン・ハックマン)
「ザ・パッケージ 暴かれた陰謀」(アンドリュー・デイビス監督 ジーン・ハックマン)
「ジャッカルの日」(フレッド・ジネマン監督 エドワード・フォックス)
「寒い国から帰ったスパイ」
「ロシアン・ルーレット」(ジーン・ハックマン)
「第4の核」(マイケル・ケイン)
「二重スパイ」(ハン・ソッキュ)これは一昨年の韓国映画だけど
ジーン・ハックマンってスパイ役多いなあ
そんな大人のスパイ映画として、昨今のゲームセンター・ムービー(嫌いじゃないけど)とは一線を画す大好きな映画です。
ご指摘のようにシナリオの練り込み不足は感じますが、スパイ映画ファンにはたまりません。
変装シーン良かったですね。
「ジャッカル」のブルース・ウィリスとか「セイント」のヴァル・キルマーみたく変装してるのに「顔かわってないじゃん!!」と違って、「似てるけど別の顔」にちゃんとなってました。
投稿情報: しん | 2005年2 月12日 (土曜日) 20:27
>しんさん
コメントありがとうございます。
挙げてくださった作品、ほとんど観てないですぅ(汗;
特別スパイ映画好きというわけではありませんが、この『スパイ・バウンド』は、「こういうスパイ映画が観たかったんだ!」って思えた、好きな作品です。
こういう映画だったら、日本でも作れそうな気がするんですが、それは無理なのかな。
投稿情報: かみぃ | 2005年2 月13日 (日曜日) 05:35
TBコメントありがとう!!
遅くなってごめんなさい。
僕もこの作品地味ですけど、好きです。
派手な愛国心もののスパイより絶対こっちのほうがいいですよ。
あのじっくり描いていくのがいいですね。
宣伝に無理があったみたいですね。
投稿情報: るーぷ | 2005年3 月 2日 (水曜日) 07:34
>るーぷさん
コメントありがとうございます。
宣伝は、まあ、この映画を真っ正直に説明してても大ヒットは難しいだろうとは予想できちゃいますからね。
通好みの映画ってぐらいがこの映画にとっても幸せな評価だと思います(笑)
投稿情報: かみぃ | 2005年3 月 3日 (木曜日) 23:11
こちらこそ、よろしくお願いいたします♪
フランス映画なんだから、最初っから007みたいなのを期待していくのが間違ってんのかもしれないですね(^^;
投稿情報: hary | 2005年4 月25日 (月曜日) 10:36
>haryさん
よろしくです。
この映画、見てのとおり僕自身を含め、うちにコメント残してくださった方々には評判いいんですよ(^^)
投稿情報: かみぃ | 2005年4 月26日 (火曜日) 05:02