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2005年2 月12日 (土曜日)

【映画評】1リットルの涙 (2004)

脊髄小脳変性症という難病に襲われた少女の前向きな人生を綴った感動の実話。

【満足度:★★★★】 (鑑賞日:2005/02/11)

 中学生3年生の木藤亜也(大西麻恵)は通学途中にこけて顎にケガをした。
 それをきっかけに亜也に精密検査を受けさせる母・潮香(かとうかずこ)。
 主治医の山本医師(鳥居かほり)が潮香に告げた検査の結果は絶望的なものだった。
 亜也は「反射的に体のバランスをとり、素早いなめらかな運動に必要な小脳・脳幹・脊髄の神経細胞が変化、ついには消えてしまう」という脊髄小脳変性症。現在の医学ではその原因はわかっておらず、治療法も無い。
 そうして亜也の過酷な闘病生活は始まった。

 木藤亜也さん(故人)の闘病中の日記と、母・潮香さんの手記に基づいた実話の映画化。
 映画評と銘打っている以上、最初に述べておくが、劇映画としては低予算作品ゆえの不自由さが見て取れる上、父親や兄弟の存在感が中途半端で脚本・編集にも不満が残る。
 ほかにもいくつか目につくアラがあり、いわゆる“出来”としては及第点だろう。

 しかし、大西麻恵の好演に裏打ちされた木藤亜也という人間の生きざまを目の当たりにした事実が、すべてを帳消しにする。
 映画としては不格好かもしれないが、そんな次元を超越して涙なしでは観ることのできない感動作。

 この映画をジャンルで別けるなら“難病もの”に分類されるのだろうが、その悲劇性に泣けるだけではない。なにより体の自由が失われてもなお衰えない、亜也の人生への前向きな姿勢に心打たれるのだ。
 映画のキャッチコピーにもなっている、日記に綴られる「耐えておくれ、わたしの涙腺よ!」との願い。この時すでに筆者の涙腺は耐えようもなく決壊状態。

 亜也を演じた若干二十歳の新鋭・大西麻恵の圧倒的な熱演も特筆に値する。
 予想はしていた。そもそもこの映画を観ようと思ったのは、劇場ポスターにも使われている車に乗った彼女が涙をこらえて手を振る写真を目にしたからにほかならない。
 その表情だけで涙を誘う彼女の力演は、予想以上に素晴らしく、今は亡き亜也さんの輝くほどの人間的魅力を見事にスクリーン上に蘇らせた。

 亜也の生きることへのあくなき姿を真摯に映像化してみせたこの映画の終幕には、日記の最後の一ページをめくったような、何ともいえない余韻が残る。
 いくらでも劇的なクライマックスに盛り上げられるであろう永遠の別れで締め括られるその終幕は、意外なほどにあっけないのだが、それは亜也が一途に望んだ「人のために何かしたい」との望みを実現させた映画の幕切れとして正しい選択だったと思う。
 そう、この映画は、障害者・木藤亜也を材料にしたお涙頂載映画ではない。短い一生を懸命に生きた人間・木藤亜也から託されたメッセージそのものの映像化なのだから。

 それにしても、25歳と10ヶ月で幕を閉じた亜也さんの人生に比べ、平々凡々に生きている自分がいかに小さい人間かと思い知らされる。
 障害者だから人並みのことができないと嘆きながらも決して人生を諦めなかった彼女が残したものは限りなく大きい。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】大西麻恵/鳥居かほり/芦川よしみ/松金よね子/村川敦子/岩井喆聖/松本五月/作間唯/まやま純/斎藤里奈/稲本弥生/浜田麻希/浜田光夫/井上高志/山口粧太/加藤郁子/SUEKICHI/森下千里/桜井顕生/岡由希子/塩澤有希/冬音由可里/吉野誠/森田雄人/板倉臣郎/松井博子/森山周一郎/速水亮/かとうかずこ
  • 【監督】岡村力
  • 【原作】「1リットルの涙」木藤亜也/「いのちのハードル」木藤潮香
  • 【撮影】中村隆信
  • 【照明】保澤正二
  • 【録音】菊地進平
  • 【美術】竹内悦子
  • 【音楽プロデューサー】山西昭司
  • 【作曲】RIKU
  • 【主題歌】「空へ」 [作詞]沢ちひろ [作曲/編曲]RIKU [唄]加藤郁子
  • 【挿入歌】「グライダー」 [作詞/作曲]大森洋平 [編曲]中村太知 [唄]大森洋平
  • 【脚本】山本文太/田中貴大
  • 【助監督】山本伊知郎
  • 【制作担当】松浦和也
  • 【プロデューサー】後藤嘉之/山本文夫
  • 【制作】オールアウト/翔エンタープライズ
  • 【配給】1リットルの涙上映委員会
  • 【日本公開】2005年
  • 【製作年】2004年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】98分

コメント (10)

はじめまして。

《他のブログの批評・感想》に載せていただきましてありがとうございます。
TBでもコメントでもない、このような形、私は
初体験でして、ちょっと嬉しいです。

この映画、とてもよいですね。
既に多くの方がブログで語ってくれていますので
重複コメは避けますが、「生きる意味」と「感謝の気持ち」、これだけは、熱く染み入るテーマであったように感じます。

私はこの映画で、養護学校の寮母の鬼のような厳しい言葉に、愛を感じずにはいられませんでした。

廊下に倒れた亜也に、「自分で起きて歩きなさい」「涙は見せてはいけない」などという台詞。

また、亜也に対してではありませんが、文化祭の準備をしているハンディを負った生徒との間で交わされる『健常者VSハンディ者』の激しいやりとり。

全くもって厳しい寮母さんですが、生徒が気づき、成長することを信じているがゆえの、正面から放てる言葉だと知れば、寮母さんの愛もまた深い。

しかし、この映画で、ハンディを負った方への見方は、大きく変わりました。

また、公衆電話の人を拒否する冷たさ。
日本の中は、ハンディを負った人たちに優しく
できていないことが、あちこちにあることも
痛感させられました。

>みおりさん
僕も、この映画でハンディを負った方への見方が変わりましたね。
「体が不自由だけど、心は普通の人といっしょ」ということが初めて実感を持って感じられました。
もっともっと多くの人に観て欲しいです。

素敵なコメントどうもありがとうございました。

なかのです。こんにちは。

TBならびにコメントありがとうございます(御礼が遅くなり申し訳ありません)。

この2月に入り、やっと関東地区でも上映されるようになってたいへん嬉しく思っております。

短い一生を懸命に生きた人間・木藤亜也から託された
メッセージそのものの映像化なのだから。

そうなんです。もちろんこの映画ではその全てを映像化したものではありません。
しかし、亜也さんが書いた日記を書籍化した原作『1リットルの涙』。母親の潮香さんは、亜也さんの日記にたいして一切加筆をしていないそうです。

なのでこの亜也さんのメッセージ、もっともっと多くの方に観ていただきたいと思っていますので、順次全国各地で上映されることを希望しています。

>中埜さん
コメントありがとうございます。

映画の作り手側の一人として、映画的に出しゃばらずに、“亜也さんの『1リットルの涙』”をそのまま映像化しようとしたその姿勢にものすごく共感できたんです。
映画のクライマックスで亜也がお母さんに日記を託したその気持ちを、映画の中では描かれませんが、お母さんは映画の製作スタッフに同じように託したんだろうなって想像できたんですよね。

亜也さんをもっと多くの人に知ってもらいたい。
もっと多くの人にこの『1リットルの涙』を観て欲しいと願うばかりです。

どうもMARです。
コメントありがとございました。

人間の強さを改めて知る作品でした。簡単に命を捨てる人たちに見せてやりたい。

こういう映画は、なんとなく女の人が多そうですが男の人が多かったのに驚きました。余談です。

>Marさん
コメントありがとうございます。
昨今ブームの純愛系「泣ける映画」とは一味も二味も違う感動作でした。人の強さを思い知る映画です。

僕が観たときも結構男性の方がいらっしゃいましたよ。

あなたの、映画批評は、最高!
わたしも、この映画、感動した。
また、あなたの批評を読んで、余韻わいてきた。
ほんと、いい映画だった。ハウルの・・より
ぜんぜんよかった。

>あきさん
いい映画でしたよね。
実録映画の良さを再認識させられました。
もっともっと多くの人に観てもらえる機会が増えて欲しいです。

《他のブログの批評・感想》 に入れていただいてありがとうございます。アクセス元をたどってまいりました。3ヶ月前のブログですが、ここに書いていただいたおかげですね。
 この映画、おっしゃるように『劇場ポスターにも使われている車に乗った彼女が涙をこらえて手を振る写真』は印象的ですね。わたしも、あれでみにいくことに決めました。

>もっきぃさん
あの大西麻恵さんの涙目の写真、いいですよね。
っていうか、すごいって思いました。
あの写真だけでも彼女の熱演が滲み出てますよ。

コメントありがとうございました。
これからもよろしく。

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