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2005年6 月10日 (金曜日)

【映画評】ビートキッズ (2004)

高校生たちの、音楽を通してぶつかり合う友情、弾ける青春。

【満足度:★☆】 (鑑賞日:2005/06/04)

 両親(豊川悦司、余貴美子)とともに故郷・岸和田から大阪市内の高校に転校してきたエージ(森口貴人)は、岸和田だんじり祭りのリズムを口ずさむのが口癖。
 そんなエージはある日の登校途中、同級生の女子三人組、タカタカ(辰巳奈都子)、マコマコ(松田まどか)、リンリン(前中潤子)からブラスバンド部に入らないかと勧誘を受ける。部長のナナオ(相武紗季)がエージの才能を見初めているらしい。
 最初は相手にしていなかったエージだったが、やはり気になって、放課後の音楽室を訪れる。が、そこに居たのは…。

 前半はブラスバンド部でマーチング・コンテストを目指し、後半は四人組のバンド「ビートキッズ」が文化祭の演奏を成功させようと頑張る、実質二部構成の音楽青春映画。

 最初に断っておくと、筆者はこの映画の製作に関ってました。ゆえに評価も多少は甘くなってしまう。
 しかし、それでもこの作品は映画として失敗作と言わざるをえない。

 作品の骨格となるべき脚本からして、前半、後半が無残に分断されており、素人でも判るレベルで作品としての一貫性に欠く。
 映画の前半部分の原作『ビートキッズ』と、その後日談として発表された“別作品”『ビートキッズ2』とを一本の映画としようとした企画そのものにも無理がある。
 製作に関ったひとりとして、その辺の裏事情も伝え聞いてはいるが、観客側に立てばそんなことはどうでもよいこと。この原作を映画化したいという想いを優先して、この原作を“よい映画”にしようというところを妥協していたら身も蓋もない。映画が完成したことを喜ぶ前に、ものすごく基本的なところから失敗しているこの映画の不出来を直視したほうがいい。

 あと、作品の起伏をつけるために、原作にない“死”をもってくるのは、原作ファンに失礼だと思う。
 筆者は原作と映画化作品とは別物と考えているし、原作通りである必要もないと心得てはいるが、その死があまりに安易過ぎて、あとのフォローもまるでなく、大方の観客は、観終わったころにはそこに死があったことすら忘れているんじゃなかろうか。

 もう脚本に関しては、ちょっとでもそういったところに注目して映画を観ている人なら、いくらでもアラが見つけられるので、これ以上はいちいち指摘する気も起きない。
 ほとほと呆れ返る内容の映画なんだが、ただ、この映画を嫌いかといえば、意外とそうでもないのが、映画というやつの不思議なところだ。

 ひいき目でもヨイショでもなく、自分はこの映画をけっこう好きだと言えてしまう。作品そのものの魅力が乏しい反面、個々の俳優、女優たちは、意外なほど魅力的なのだ。
 こういう見え方をしてしまうと自分も歳をとったんだなあと思わざるをえないのだが、森口貴人を筆頭とした若者たちの、ほぼ学芸会レベルの下手な演技に、青春の輝きを垣間見てしまう自分がいる。

 クランクイン時の冒頭の踏み切りのシーンでは、台詞もほとんど棒読みだった森口貴人が、やがてはマジな表情を見せながらベテラン豊川悦司を殴ってみせる成長ぶりを、見守るような気持ちで観てしまう。

 実際にHUNGRY DAYSというバンドを組んでいる森口貴人と一道信義が、劇中バンド「ビートキッズ」の仲間割れで殴り合うシーン、芝居は下手で下手でお話しにならないのだが、こいつらホントのバンド仲間なんだと知ってるがゆえだろう、特別な思いで観てしまう。

 森口貴人と相武紗季とが抱き合って土手を転げ落ちるという、いかにも青春映画っぽいドキドキシーンがある。所詮演技なんだが、演技なんだけれども、だけどもかわいい女の子と抱き合って転げ落ちてるなんて、ホントにドキドキしてんだろうなって、こっちの心拍数も上がってしまうじゃないか。

 映画の中での時間経過でしかない、練習風景のモンタージュ。若い役者たちが笑い合ってる表情は、演技じゃない。たまたま俳優、女優をやってる若者たちの、この夏のひとコマの笑顔なんだ。ふと、自分がそんな歳だったころを思い出す。

 この映画は大半の人にとって、たぶんつまらないです。
 でも、出演している俳優、女優陣に、ファンだという人がいるなら観て損はない。みんな魅力的だから。
 ブラスバンドやロックバンドをやったことのある人、何かに夢中になったことのある人なら、きっとこの映画の中に自分を見つけることができるんじゃなかろうか。
 映画の内容はどうでもよくて、HUNGRY DAYSや相武紗季ちゃん目当てで観るというなら、それも大いにけっこう。これは青春映画なんだから、振り返ってそこにあなたの青春のひとコマがあるなんて、この映画にとってこれほどの至福はないと思うのです。

 あれこれ書きましたが、筆者は好きです。この映画からほとばしる青さが。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】森口貴人(HUNGRY DAYS)/相武紗季/一道信義(HUNGRY DAYS)/古河弘基(HUNGRY DAYS)/田中康平(HUNGRY DAYS)/辰巳奈都子/松田まどか/前中潤子/池田朱花/鶴田祐也/高木章/杉浦太陽(Ex.Bold)/杉浦太雄(Ex.Bold)/牛尾方臣/井上美琴/中村雅俊/渡辺いっけい/近藤等則/余貴美子/豊川悦司
  • 【企画/監督】塩屋俊
  • 【製作】宮島秀司/真田佳明/合志陽一郎/小池恒右/三浦生也/伊東龍平/竹中功/長戸拓
  • 【プロデューサー】岡田和則/園木美夜子/福島大輔/長井伸也/茂永友彦/垂石克哉/有吉猛/吉村誠/吉田晴彦
  • 【原作】風野潮「ビートキッズ」
  • 【脚本】原田眞人
  • 【撮影監督】阪本善尚(J.S.C)
  • 【照明】大久保武志
  • 【録音】岡崎敏夫
  • 【整音】林基継
  • 【音響効果】柴崎憲治
  • 【音楽】本田優一郎
  • 【音楽プロデューサー】亀田誠治/鶴田紀
  • 【美術】平田俊昭
  • 【編集】阿部亙英
  • 【スクリプター】川野恵美
  • 【助監督】中西健二
  • 【製作担当】上岡真
  • 【アシスタント・プロデューサー】甲斐路直
  • 【主題歌】「喜怒哀楽」HUNGRY DAYS [作詞/作曲]古河弘基 [編曲]HUNGRY DAYS
  • 【製作】BEAT KIDS パートナーズ(株式会社ウィル・ドゥ/松竹株式会社/東芝EMI株式会社/東芝エンタテイメント株式会社/オリコン株式会社/株式会社関西どっとコム/朝日放送株式会社/株式会社イエス・ビジョンズ/株式会社アクト・テクニカルサポート)
  • 【製作協力】ウィル・ドゥ
  • 【配給】松竹
  • 【日本公開】2005年
  • 【製作年】2004年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】115分

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コメント (2)

かみぃさん、お久しぶりです。「電車男」でTBさせていただいた岬千里です。
「ビートキッズ」の製作に関わっていたとのこと、読んでびっくりしました。
実はこの映画はずっと早くに観ていて、TBしようかどうしようか迷っていたのですが、
(何せ、映画の感想も書いてますが、諸事情により?プライベートな内容てんこ盛りになってますもので。)
でも今回、お友達の許可も得ましたので、思い切ってTBさせていただきます。
全く予備知識ナシに観て、こんな感想もありますよ、ということで。製作に関わった方へ励みになりますでしょうか?

>岬千里さん
こんばんは。
喜んでいただいたようで、関係者のひとりとしてはうれしい限りです。
批評では酷評っぽく書きましたけど、できの悪い子はなんとかで、ほんとに好きなんですよ、この映画。
映画を観るきっかけなんて、大概プライベートな理由ですし、感想も十人十色です。こちらの内容とか気にせず、遠慮せずにどんどんTBコメントしてやってください(^^)
これからもよろしくです。

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