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2005年11 月12日 (土曜日)

【映画評】私の頭の中の消しゴム (2004)

若年性の痴呆症に侵され、すべてを忘れていく妻と、なんとか二人の愛を繋ぎとめようとする夫の顛末。

【満足度:★★☆】 (鑑賞日:2005/11/08)

 不倫相手に裏切られ、失意に沈むスジン(ソン・イェジン)は、コンビニに立ち寄った。しかし、動揺していたのか買ったはずのコーラを店に忘れてきてしまう。
 それに気づいた彼女は急いでコンビニに戻るが、そこで見覚えのあるコーラを手にした男・チョルス(チョン・ウソン)と出くわす。
 これこそが運命の出会いだったのだが、二人はまだそのことに気づいていない…。

 日本のテレビドラマ『Pure Soul~君が僕を忘れても~』(2001年、読売テレビ制作)を原作とする韓国映画。
 泣ける映画との評判に釣られて、泣く気満々で観たんだが、筆者的には今一歩でした。

 ストーリーは、若い二人が出会って恋に落ち、立場の差を乗り越えて結婚。幸せの絶頂を迎える前半と、スジンの若年性アルツハイマーが発覚し、悲劇のどん底に転落していく後半にはっきりと分かれる。

 前半の流れは目を見張るほどに流暢で、二人が幸せをつかんでいく様子は爽やかな音楽を聴いているかのように心地いい。難を言えば、あまりに軽やかに事が進みメリハリに欠くのだが、後半へとつながる伏線も用意周到に張り巡らせてあって、ここまでは上出来。
 そしていよいよ中盤の山場、スジンの難病が発覚し、物語は180度暗転していく。
 その後の顛末は実際にご覧になっていただきたいが、筆者としてはこの映画に乗れたのはここまで。

 一言で言えば、後半の話が思いのほか薄すぎる。泣けるほどの悲しみのピークは幸福の絶頂に病魔が発覚した時点で来てしまい、後は物語そのものが惰性でしか展開していかない。

 さらに言うと、スジンが難病に侵されて悲劇に向かうことは、タイトルを含めた前情報で観客にインプットされているのに、その割には前半が冗長すぎる時点で「思っていた映画」と違う気がした。観る前の印象としては、一種の「難病ものの映画」との認識でいたのに、この映画は明らかに「恋愛映画」で、病気は二人の仲を邪魔する“ひとつの仕掛け”でしかなかったからだ。

 そうとわかってしまえば、前半にも比重を割いて出会いから丁寧に描くのも合点がいくし、後半は愛するゆえの悲しみに重点を置いて、闘病らしい描写がほとんどないことも納得せざるを得ないのだろう。
 ただそうだとしても、後半に力を感じないのはいやおうなき実感で、難病という悲劇の上にまぶした愛の甘味料が効きすぎだろう。どんなに救いようのない状況下に置かれようとも一途に愛を繋ぎとめようとする美男美女の姿は悲劇どころか、どこか幸福的にすら見えてしまう。絶望的に見せかけても、これは夢見心地の甘い甘い恋愛映画なのだ。

 いや、泣けましたよ、ほどほどに。文字通りひとときの間、現実を忘れさせてくれた。
 ただ言えるのは、ここに描かれる悲劇はあまりにも甘美ゆえに、心の痛みすら忘れさせてしまったということ。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】チョン・ウソン/ソン・イェジン/ペク・チョンハク/イ・ソンジン/パク・サンギュ/キム・ヒリョン
  • 【監督/脚本】イ・ジョハン
  • 【製作】チャ・スンジェ
  • 【撮影】イ・ジュンギュ
  • 【音楽】キム・テウォン
  • 【編集】ハム・ソンウォン
  • 【原作】『Pure Soul~君が僕を忘れても~』読売テレビ
  • 【提供】ギャガ・コミュニケーションズ/ジェネオン エンタテイメント/読売テレビ/小学館/デジタルハリウッド・エンタテイメント/ぴあ
  • 【配給】ギャガ・コミュニケーションズ
  • 【字幕翻訳】根本理恵
  • 【日本公開】2005年
  • 【製作年】2004年
  • 【製作国】韓国
  • 【上映時間】117分

コメント (5)

TBありがとうございました。
確かに病気が発覚するまでが長いなぁとは思いました。
後半部分が薄いというのも分かるような気がしますが、ベタ好きな僕にはたまらない作品でした。
あれだけ、美男美女だと悲恋も甘美的に見えるのも無理はないかもしれないですねぇ…。

人生という川の流れに身をまかせながら、ゆらりゆらりと漂っているような感覚でした。
すべてが美しい二人の物語だからこそ、若年性痴呆症という激流に飲み込まれずに流れて行けるのでしょう。
それはとても心地よい流れでした。

トラックバックありがとうございました。
本文中のリンクにも重ねて御礼いたします。
また、必要ないのかもしれませんが、私からもトラックバックを送らせていただきました。

>anyさん
批評にも書きましたが、僕はちょっと思ってた映画の違ってたんでね。最初からこういう映画と思っていれば、王道を行くスタンダードな泣ける映画としてもうちょっとは評価を上げれたんですけど…。
でも、前半から中盤にかけては好きですよ。やっぱりベタですけど。
特にバッティングセンターでのシーンとかよかったです。

>tomoさん
コメント残していただき、ありがとうございます。
またお越しになってください。

私も想像していたより泣けませんでした。
流した涙もちょっと爽やかだったような…。
本当の闘病の苦労というものがあまり画面に出なかったからでしょうかね。
でもこれでもかこれでもかと見せられも辛すぎるし…(汗)

>chishiさん
こんばんは。
闘病の件も含めて、ちょっと二人の関係を理想的に描き過ぎてる感じがします。
それがいいってファンもいそうだけど、僕はちょっと苦難が伝わってこなくて、いまいち人間味が感じられなかったです。

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