【映画評】日本沈没 (2006)
日本列島が刻々と海中に沈んでいく悲劇を描いた大ヒットスペクタクル巨編のリメイク。
前作が大ヒットした当時は物心つく前なので知らない。けど、小松左京大先生の原作にははまった口。そんな自分から一言「ふざけんな(怒)」。
世間の評判が芳しくないことは知っていた。クライマックスが天地がひっくり返るほどの改悪されていることも前情報で知っていた。しかしこれほどひどいとは。
タイトル前、東海地震での主人公二人の出会いで始まるまではまだ許せた。だが、タイトル後、いきなりアメリカの学者が日本沈没を予期しているなんて、原作との違いどうこう以前に、この監督&脚本家はまるでSFがわかってない。
取って付けた感ありありの主人公の恋愛物語もあまりに幼稚で呆れかえる。柴咲コウなんてこの脚本に合わせた役作りなのか、まるで幼児のような舌足らずなしゃべり方だし。
目の前で起こっていることをいちいち字幕で説明するのが説明過剰でうっとうしい。映画なんだから文字で説明すんなよと思う。
一方で悲壮感を煽るために、ことあるごとに子供の姿を絡めるのが安易で白々しい。特撮の派手さとは裏腹に演出的にはすべてが幼稚なのよ。
日本の国宝を国外に持ち出す首相代行を悪役としか描いていないところも、この監督&脚本家は原作の心をまるで汲み取っていないんだと怒り心頭。
この原作は、日本沈没という絶対的に回避不可能な絶望の淵で日本人はどういう行動をとるかを紡いだ、SFの器を借りたシミュレーション群像物語だったはずなのに、派手な特撮で飾り立てたハリウッド産のパニック映画の安っぽいパクリ映画でしかない。こんな内容だったら最初からこの傑作SF小説を原作としないでいい。
石坂浩二演じる首相は「貴方には心がある」と言ったが、この映画には微塵も心がない。
作品データ - Film Data
- 【キャスト】草なぎ剛/柴咲コウ/豊川悦司/大地真央/石坂浩二/及川光博
- 【監督】樋口真嗣
- 【原作】小松左京『日本沈没』
- 【脚本】加藤正人
- 【日本公開】2006年
- 【製作年】2006年
- 【製作国】日本
- 【上映時間】135分
- 【公式サイト】http://www.nc06.jp/
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