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2008年3 月 4日 (火曜日)

【映画評】ガチ☆ボーイ (2007)

一晩寝ると昨日の記憶を失う青年のガチンコな生き様に涙するスポ魂青春映画の傑作。

【満足度:★★★★★】 (鑑賞日:2008/03/01)

 廃部の危機におかれた大学のプロレス研究会に入部した三年生の五十嵐良一(佐藤隆太)。
 先輩たちの教えをきっちりメモにとり、ことあるごとにポラロイドカメラで皆の写真を撮るまじめな青年だったが、実は彼、大学在学中に司法試験も合格するんではと噂されるほどの天才だった。
 そんな五十嵐にしては学生プロレスで重要な“段取り”をいつまでたっても覚えられなかったのだが、やがて“マリリン仮面”というリングネームを与えられ、ついにデビュー戦の日を迎える。が、先輩に負ける予定だったこの試合であろうことか勝ってしまう五十嵐。しかし観客には大ウケで、彼は人気レスラーの道を歩み始める。
 だが五十嵐にはもっと重大な秘密があった。彼は昨年自転車で事故に逢って以来、新しいことが覚えられない、一晩寝ると前日のことをすべて忘れる「高次脳機能障害」だったのだ…。

 ありがちであざとくもある設定。とりたてて意外性のない、結局何も解決しない結末。にもかかわらず心揺さぶられずにおれないクライマックスのガチンコ勝負。
 ありきたりな言い方だが、笑って泣ける痛快な青春映画だ。二時間という上映時間がこの手の作品にしてはちと長いかもと危惧したが、まったくの杞憂だった。
 前半でさりげなく張られた伏線ひとつひとつが見事に回収されていく後半は涙腺が決壊しっぱなしで、嗚咽しそうなほど泣けたのは何年ぶりか。

 五十嵐を演じた佐藤隆太の演技が素晴らしい。人生そのものが逆境という状況、毎日繰り返される絶望と不安、それでも決して笑顔を忘れない好青年・五十嵐を見事に演じきっている。体を張ったプロレスの試合もまったく違和感がなく、彼の真剣なまなざしが勢いに頼りかねないクライマックスに一抹の疑念も抱かせないリアリティを与えていて感動的。
 そして彼を囲う脇役の面々も、父親を演じた泉谷しげるを筆頭に曲者揃いの個性派たちなのに出しゃばりすぎず、それでいてきっちりとキャラの立った芝居で映画を盛り上げる。

 記憶に残らない毎日なんて生きてるとは言えないと嘆きながらも自分の生きる道を模索し、その生き様を観客に見せつける五十嵐の姿に、振り返れば記憶障害など持たない自分たちだって平凡で変わりばえのしない毎日を繰り返しているだけ、そこに自分の生き様はあるのかと自問自答させられる。ポラロイド写真に残る五十嵐の笑顔がまぶしい。
 プロレスなんてと斜に構えず、すべての人に観て欲しいスポ魂青春映画の大傑作。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】佐藤隆太/サエコ/向井理/仲里依紗/川岡大次郎/瀬川亮/西田征史/中谷竜/小椋毅/久保麻衣子/フジタ“Jr”ハヤト/宮川大輔/泉谷しげる
  • 【監督】小泉徳宏
  • 【製作】亀山千広/阿部秀司/島谷能成
  • 【企画】清水賢治
  • 【プロデューサー】織田雅彦/安藤親広/明石直弓
  • 【アソシエイトプロデューサー】稲葉直人/小出真佐樹
  • 【ラインプロデューサー】中林千賀子
  • 【原作】蓬莱竜太『五十嵐伝~五十嵐ハ燃エテイルカ~』
  • 【脚本】西田征史
  • 【音楽】佐藤直紀
  • 【撮影】葛西誉仁
  • 【照明】佐藤浩太
  • 【録音】渡辺真司
  • 【美術】五辻圭
  • 【装飾】龍田哲児
  • 【監督補】川村直紀
  • 【スクリプター】山縣有希子
  • 【編集】森下博昭
  • 【音響効果】大河原将
  • 【助監督】吉田和広
  • 【制作担当】濱﨑林太郎
  • 【劇中使用曲】『暴れだす』 [作詞/作曲]トータス松本 [演奏]ウルフルズ
  • 【主題歌】『ヒラヒラヒラク秘密ノ扉』 [作詞]高橋久美子 [作曲]橋本絵莉子 [演奏]チャットモンキー
  • 【製作】フジテレビジョン/ROBOT/東宝
  • 【制作プロダクション】ROBOT
  • 【配給】東宝
  • 【日本公開】2008年
  • 【製作年】2007年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】120分

コメント (4)

かなり盛り上がってますね、この映画。

>前半でさりげなく張られた伏線ひとつひとつが見事に回収されていく

何か単なるおバカ映画のくだらないギャグ(嫌いじゃないです)かと思いきや、そんな中にも病気のこと隠れたりしてるんですよね。

>父親を演じた泉谷しげるを筆頭に

病気によって変化する父親との関係はかなり「決壊」に拍車をかけますね。ガチンコ・プロレスで人気が出たことにより、記憶が残らない分やっている瞬間のみが、彼にとって生きている証のようになり、それが回りをも熱くさせてしまう。ウルフルズの挿入曲の入るタイミングも絶妙で、後は一気にラストまで釘付けでした。

>ジョルジュ・トーニオさん
コメントありがとう。
泉谷しげるということで、暴れ出しちゃうような父親かと思いきや、抑えた演技で息子との間に出来てしまった溝に悩んでいる感じが伝わってきて良かったです。
プロレスという題材ゆえに観る人が限られちゃうのがもったいない良作でした。

こちらにもカキコ♪

コメディテイストの作品かなと思いきや、良い裏切り感で感動しました。(^^

映画評参考になりました。

また覗きに来ますね♪

>ツッキーさん
コメントありがとう。
またいらしてくださいね。

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