【映画評】ハプニング (2008)
“何か”が襲い来る、M・ナイト・シャマラン監督のSFパニック・サスペンス映画。
のどかなある日、ニューヨークのセントラルパークで人々がなんの前触れもなく自殺しはじめる。
テロかもしれないとの噂は瞬く間に広がり、授業中だった高校でも生徒を全員帰宅させることに。
科学教師エリオット(マーク・ウォールバーグ)は同僚教師のジュリアン(ジョン・レグイザモ)と共に家族を引き連れ安全な場所へ逃げることにしたが…。
前作『レディ・イン・ザ・ウォーター』(2006年)に続いてまたしてもM・ナイト・シャマラン監督の独りよがりなトンデモ世界観な怪作。
シャマラン監督作品で言うなら“オチのない『サイン』(2002年)”。他の監督作品でなら“話の広がらない『回路』(2001年、黒沢清監督)”といった感じ。
別の見方で例えるなら、よくある殺し合いゾンビものを自殺に置き換えただけ。
作品全体を包むシャマラン監督らしい異様な雰囲気は嫌いじゃないけれど、こういう投げやりな世界観は一歩間違うと映画的になんでもアリになっちゃうんだよ。
事件の原因は一応ほのめかしているけど、結局「なんで自殺?」という最大の疑問には答えられていない。それなのに見終わっての印象は「ただただ自殺のいろんなバリエーションを見せつけられた」だもの。
早い段階で「これはもう、風呂敷を広げるだけ広げて、たたまずに終わっちゃうな」って察しがついちゃった。
原因を明確にしないのがいけないんじゃない。シャマラン監督を一躍有名にした『シックス・センス』並のドンデン返しを期待したわけでもない。映画的に“自殺でなければならなかった”といえる必然性がまるで無いってことに疑問を感じるの。
映画を観た人ならわかると思うけど、ただ単にぶっ倒れて意識不明のまま死んでしまったって作品的にはなんら不足無い。
そこをあえて、“自ら死を選ぶ”にした理由付けは、劇中での推測でも触れられていないし、映画のテーマに結びつけて考えても理解不能。
思うに結局、見た目のインパクトを狙っただけなんでしょ。
仮にこれが「人間がじっくり二時間かけて液状化する」ゲテモノ映画でも、「人々が手当たり次第にセックスする」ポルノ映画でもよかった。「思いついた中で一番悪趣味なのを選んでみました」ってノリなんだろう。
そしてその理由付けは、「世界にはわからないことだってあるんだ」との開き直りで逃げちゃってる。
映画たるもの映像的なインパクトも必要ですよ。それは一理あるけれど、多種多様な自殺のバリエーションにどんな新発見やカタルシスがあるっていうのさ。監督自身が自分の毒に酔っちゃってるだけじゃないの?
シャマラン監督にはね、とりあえずこの手の特殊な世界観を封印してもらって、単純明快なホラー映画を撮っていただきたい。その方が監督の持ち味を活かせるような気がしてならない。
作品データ - Film Data
- 【キャスト】マーク・ウォールバーグ/ズーイー・デシャネル/ジョン・レグイザモ/アシュリン・サンチェス/ベティ・バックリー
- 【監督/脚本/製作】M・ナイト・シャマラン
- 【製作】サム・マーサー/バリー・メンデル
- 【製作総指揮】ロジャー・バーンバウム/ゲイリーバーバー
- 【製作総指揮】ロニー・スクリューワーラー/ザリーナ・スクリューワーラー
- 【撮影】タク・フジモト
- 【プロダクション・デザイナー】ジェニーン・オッペウォール
- 【編集】コンラッド・バフ
- 【共同製作】ホセ・L・ロドリゲス/デヴェン・コーテ
- 【音楽】ジェームズ・ニュートン・ハワード
- 【衣裳デザイン】ベッツィ・ハイマン
- 【配給】20世紀フォックス映画
- 【原題】THE HAPPENING
- 【字幕翻訳】松浦美奈
- 【日本公開】2008年
- 【製作年】2008年
- 【製作国】アメリカ
- 【上映時間】91分
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人が多いと自殺を始めるってことで、おそらくレミングあたりをイメージしたのではないかな、と推測します。
人口増加→集団自殺。そう考えるとわからんでもないです。
投稿情報: P | 2008年7 月29日 (火曜日) 09:23
初めまして。TBありがとうございました。
確かに、自殺のバリエーションを見せられた映画でしたね(笑)
けど、僕の場合、サスペンスの形を借りて、“環境保護”を訴えるメッセージ映画だと捉えました。
投稿情報: hids | 2008年7 月29日 (火曜日) 19:49
>Pさん
コメントありがとう。
すでに事実無根の都市伝説とされているレミングの習性を引き合いに出されると、話題性を狙ったそのヤラセ映像の方を今回の映画にだぶらせちゃいます。
>hidsさん
コメントありがとう。
SFとしてのツメが甘いんですが、テーマの描き方としては間違ってないとは思うんですよね。
ただ、最近のシャマラン監督作品ははったりが効き過ぎで収拾がつかなくなってる。だからテーマの方がオマケにしか見えない。
話を広げるだけじゃなくて、たたむことにももっと目配せができたら、いつかまた『シックス・センス』にも負けない傑作を作ってくれるんじゃないかと期待しているんですがね。
投稿情報: かみぃ@未完の映画評 | 2008年7 月30日 (水曜日) 06:06
書き込み及びトラックバック有難う御座いました。
恥ずかし乍ら、シャマラン監督の作品は今回が初めて。ですから他の作品との比較は出来ないのですが、個人的にはなかなかのめり込める作品でした。唯、仰る様に「何で自殺?」という点に明確な答えが提示されていない等、未消化な点も在りましたね。
今後とも何卒宜しく御願い致します。
投稿情報: giants-55 | 2008年8 月20日 (水曜日) 00:58
>giants-55さん
コメントありがとう。
ついつい苦言を呈してしまいますが、シャマラン監督作品の一連の映画が持っている独特な雰囲気は自分も好きで、監督の名で作品を観てしまう監督のひとりですね。
この作品を気に入ったなら他の作品もきっと気に入ると思いますよ。
投稿情報: かみぃ@未完の映画評 | 2008年8 月21日 (木曜日) 11:53
これ、そんなに浅い映画じゃないですよ。
論理とは、因果とは、それを成り立たせているこの世界とは一体何なんだ、
といったある意味宗教的な、ところを考えさせる作品。
単に映画を"観る"だけでなく、自分の頭の中と格闘するための思考の点火剤。
投稿情報: - | 2010年7 月 3日 (土曜日) 11:17
◆-さん
なかなか深いですね。
僕には何の点火剤にもなりませんでしたが。
投稿情報: かみぃ | 2010年7 月 3日 (土曜日) 15:33