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2008年7 月20日 (日曜日)

【映画評】崖の上のポニョ (2008)

人間になりたがった人魚と少年の物語。

【満足度:★★★★☆】 (鑑賞日:2008/07/19)

 ある日、海底に住む元人間の父親・フジモト(所ジョージ)の元を飛び出す金魚のような姿をした人魚・ブリュンヒルデ(奈良柚莉愛)。
 彼女はジャムの瓶に首を突っ込んで抜けなくなっていたところを5歳の少年・宗介(土井洋輝)に助けられ、彼に一目惚れ。
 宗介は魚の姿をした彼女をうちに連れ帰り、ポニョと名付け、母親のリサ(山口智子)に紹介する。
 やがてポニョは父親によって海へ連れ戻されるが、彼女は人間になることを強く願うようになっていた…。

 宮崎駿監督の四年ぶりの新作は和製人魚姫な童話。
 前作『ハウルの動く城』は抽象的過ぎていまいちだったけど、これは好きだわ。

 近年の他の宮崎駿監督作品同様、相変わらず抽象的だけど、話が解らないってほどじゃない。
 ポニョの舌っ足らずなしゃべり方はメイちゃんを彷彿とさせ、宗介くんの純真ながんばりは千尋を思い出させるその雰囲気は、宮崎アニメの中でも筆者が特に好きな二本、『となりのトトロ』と『千と千尋の神隠し』を足して二で割ったような感じだ。

 全編手描きのアニメーションにこだわったという画調がそうであるように、お話も子ども向けの絵本のようなシンプルなものだけれども、最後まで飽きさせないイマジネーションの自由さ、話の小ささとは裏腹なダイナミックな描写、確かな演出力は、さすが天才宮崎監督と唸らずにはおれない。

 宮崎駿監督の息子・吾朗監督が『ゲド戦記』の冒頭に入れたまるで意味のない父親殺しのシーンに対する父親からの返歌のような、父親の子離れ話という側面もあるのも可笑しい。
 人間になりたがるポニョに反対する父親・フジモトに、「あんたも元人間のくせに海の妖精に惚れて今があるんだろ」と突っ込みたくなる。

 『となりのトトロ』のようにとりたてて悪人が登場しない上に、やたらとものわかりの良すぎる大人たちといい、一歩間違うと陳腐な綺麗事でしかないお話なのに、その純真無垢な世界観に心洗われる

 前半でのフジモトの思わせぶりで謎めいた言動に翻弄されるが、そういうところは深読みするよりあくまで子ども目線で「お父さんはなんだかよくわからない仕事をやってる気むずかし屋」ぐらいに留めておいた方がよいだろう。

 フジモトがポニョのお母さん・グランマンマーレ(天海祐希)と同居していないのと対を成すように、宗介のお父さん・耕一(長嶋一茂)もずっと貨物船の上で、映画の中ではついぞ宗介たちと直接会うことがない。
 しかし、このふたつの夫婦の間には距離では測れない愛があり、宗介とポニョの間にも姿形に囚われない恋心がある。
 宗介の「(荒れた海に)女の子がいた!」との言葉に車を停めるリサの本来当たり前の行動に人間の良さを確認したり、クライマックスにおけるひねくれ者のトキおばあちゃん(吉行和子)の意外な姿に感動する。
 この一見摩訶不思議な物語は、宮崎駿流の何億年も前から続く母なる海によって育まれた純粋な愛の物語にほかならない。

 ナウシカやラピュタのようなアクション&ヒロイズムを求める向きには正直つまらないだろうが、すでにおじいちゃんと呼んで差し支えのない年齢の宮崎駿監督の到達点として、余裕すら感じられる秀作だ。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト(声の出演)】山口智子/長嶋一茂/天海祐希/所ジョージ/奈良柚莉愛/土井洋輝/柊瑠美/矢野顕子/吉行和子/奈良岡朋子
  • 【原作/脚本/監督】宮崎駿
  • 【プロデューサー】鈴木敏夫
  • 【制作】星野康二
  • 【音楽】久石譲
  • 【主題歌】「海のおかあさん」 [作詞]覚和歌/宮崎駿 [作曲/編曲]久石譲 [歌]林正子
  • 「崖の上のポニョ」 [作詞]近藤勝也 [補作詞]宮崎駿 [作曲/編曲]久石譲 [歌]藤岡藤巻と大橋のぞみ
  • 【作画監督】近藤勝也
  • 【美術監督】吉田昇
  • 【色彩設計】保田道世
  • 【映像演出】奥井敦
  • 【編集】瀬山武司
  • 【整音】井上秀司
  • 【音響効果】笠松広司
  • 【録音演出】木村絵理子
  • 【製作】「崖の上のポニョ」製作委員会(日本テレビ放送網/電通/博報堂DYメディアパートナーズ/ウォルト ディズニー スタジオ ホーム エンターテイメント/ディーライツ/東宝)
  • 【制作】スタジオジブリ
  • 【配給】東宝
  • 【日本公開】2008年
  • 【製作年】2008年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】101分

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コメント (2)

トラコメどうもでした。
とてもジブリっぽい、ファンタジックでほのぼのとしたところが好感ポイントでしたね。

>ひらりんさん
コメントありがとう。
賛否両論あるようですが、僕は結構好きです、これ。

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