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2008年8 月26日 (火曜日)

【映画評】ダークナイト (2008)

最強の敵にして絶対悪のジョーカーに翻弄されるバットマンの苦悩を描いた、『バットマン ビギンズ』に続くバットマン新シリーズ第二弾。

【満足度:★★★★☆】 (鑑賞日:2008/08/16)

 犯罪渦巻く都市ゴッサム・シティーに、街を牛耳るマフィアどもをも手玉に取る極悪非道の犯罪者ジョーカー(ヒース・レジャー)が現れる。
 一方、街の自警市民バットマン(クリスチャン・ベール)とジム・ゴードン警部補(ゲイリー・オールドマン)は、正義感溢れる新任の地方検事ハービー・デント(アーロン・エッカート)とともに犯罪者たちを追うが…。

 もともと『バットマン』シリーズは観てなくて、シリーズ前作の『バットマン ビギンズ』も未見のため、本作も観賞予定から外れていたんだけど、あまりに世間の評判がいいので急遽観賞。
 が、期待が大きすぎたか、「確かによくできてるけど、そんなに騒ぐほど?」ってのが初見の感想だった。

 とりあえず評判のジョーカー役、ヒース・レジャーの鬼気迫る演技は絶賛も頷ける素晴らしいものだけど、他の主要キャラが霞んでしまっているのは演出的な片手落ちだろう。
 表裏一体であるバットマン対ジョーカーという構図は過剰なほどに描かれるのに、映画の展開的にキモとなるデントの変貌はさらりと流しすぎで、明らかに手薄な演出。
 良くいえば息つく暇もないアップテンポな展開は流暢だが、あまりの展開の早さから総じてメリハリに欠いており、注目すべき点が散漫になってしまっていないか。

 そんな釈然としない印象の初見で、どうしても腑に落ちない点もあったために再度観賞した。

 さすがに二回目ともなると、よくわかっていなかった部分も合点がいくようになり、全体像をより把握できて作品に対する心象もある程度挽回した。
 しかしそれは、やはり早すぎる展開が物語をわかりにくくしてしまっていることの証明でもあろう。
 もちろん、わかりづらかったのは筆者が前作を観ていないからという理由もあろうが、タイトルからあえて「バットマン」の文字を抜いた以上、続編としてだけでなく、単独の映画として観ても観賞に堪えうる内容にすべきだと考えるし、実際、今作の内容は前作を知らなくても観られるようにはなっているのだが。

 また、これだけ早い展開をさせながら2時間半超えという長尺も気になる。平たくいえば詰め込みすぎ。
 決して無駄なシーンがダラダラ続くというたちの悪いものではないが、あれもこれもと詰め込むだけじゃなく、もっとそぎ落として物語に緩急つけるべきじゃないか。
 展開が早すぎるのも、その辺を整理仕切れなくて必要以上にテンポを上げることでなんとか尺の帳尻を合わせたというふうにすら思えてくる。

 そういう作品としてのマイナス面はあるのだが、やはりすでに故人となってしまったヒース・レジャーの怪演だけは絶賛せざるをえない。
 彼の演じるジョーカーを見ていると、人はここまで極悪非道になれるものなのかという恐怖を感じると同時に、役者はここまで役になりきれるものなのかという驚きが湧き起こる。

 最後に付け加えると、劇中には時折911事件を彷彿とさせるシーンも垣間見られ、歴史あるヒーロー・コミックを原作としながら、現代を色濃く反映させた考えさせられる骨太な作品へ昇華させた監督の手腕は高く評価できる。
 二度の観賞で世間の評価が高いのも頷けた。

 もしや、自分がこの映画の展開の早さについていけないのは歳のせいかも。と、ふと考えてしまった。
 いやはやなんとも怖い映画である。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】クリスチャン・ベール/マイケル・ケイン/ヒース・レジャー/ゲイリー・オールドマン/アーロン・エッカート/マギー・ギレンホール/モーガン・フリーマン
  • 【監督】クリストファー・ノーラン
  • 【製作】チャールズ・ローブン/エマ・トーマス/クリストファー・ノーラン
  • 【脚本】ジョナサン・ノーラン/クリストファー・ノーラン
  • 【原案】デイビッド・S・ゴイヤー/クリストファー・ノーラン
  • 【製作総指揮】ベンジャミン・メルニカー/マイケル・E・ウスラン/ケビン・デ・ラ・ノイ/トーマス・タル
  • 【撮影】ウォーリー・フィスター,A.S.C.
  • 【美術】ネイサン・クローリー
  • 【編集】リー・スミス,A.C.E.
  • 【衣装】リンディー・ヘミング
  • 【音楽】ハンス・ジマー/ジェイムズ・ニュートン・ハワード
  • 【配給】ワーナー・ブラザース映画
  • 【原題】THE DARK KNIGHT
  • 【字幕翻訳】石田泰子
  • 【日本公開】2008年
  • 【製作年】2008年
  • 【製作国】アメリカ
  • 【上映時間】152分

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