« 【製作日誌】映画K:旧友との再会 | メイン | 【映画評】レッドクリフ Part I »

2008年11 月 2日 (日曜日)

【映画評】ICHI (2008)

綾瀬はるかが女座頭市を演じるチャンバラ時代劇。

【満足度:★★★★】 (鑑賞日:2008/11/01)

 鑑賞前は「愛が見えたら、きっと泣く」とのキャッチ・コピーにヌルい恋愛映画になってたらやだなぁと危惧していたんだが、なかなかどうして色恋成分は最小限に抑えられた至極まっとうなチャンバラ娯楽時代劇として楽しめた。

 自分には関わり合いのないことで盗賊たちにからまれた盲目の三味線弾きである瞽女(ごぜ)の市(綾瀬はるか)。そこにたまたま居合わせた旅侍の藤平十馬(大沢たかお)が彼女を助けようと割って入るが、襲ってくる盗賊たちになぜか刀を抜けない十馬は逆に窮地に陥る。と、杖に仕込まれた刀で瞬く間に盗賊たちを斬り倒す市。彼女は逆手居合い斬りの達人だったのだ。
 こうして出会った二人は、宿場町・美藤宿にたどり着く。そこは万鬼(中村獅童)率いる荒くれ者たちにおびえ、かつての賑わいを失いつつある町だった…。

 『ピンポン』(2002年)やオールCG映画『ベクシル-2077 日本鎖国-』(2007年)で知られる曽利文彦監督が初めて挑んだ時代劇。

 最初に断っておくと、2003年の北野武版『座頭市』は観てますけど、世代的に間に合っていない勝新太郎の元祖座頭市シリーズはまったく観たことがありませんので、勝新版との比較はできません。
 そんなわけで“座頭市”にはそれほど思い入れはないんだが、“女剣士もの”は結構好きなジャンルで、そういう意味で期待に応えてくれたのがまずはともあれ嬉しい。綾瀬はるか演じる女座頭市がなかなかかっこいいのだ。

 近年の女剣士といえば上戸彩の『あずみ』シリーズ(1:2003年 北村龍平監督、2:2005年 金子修介監督)が有名だろうが、これまで自分の中ではその上戸彩のあずみを含め、『さくや 妖怪伝』(2000年 原口智生監督)で安藤希が演じた咲夜、『修羅雪姫』(2001年 佐藤信介監督)で釈由美子が演じた雪の三人を“平成三大女剣士”と呼んでいたんだけど、この綾瀬はるかの市が上戸あずみに取って代わったな。あずみは金子監督の2の印象が悪すぎた。

 北野武版『座頭市』は北野監督らしいバイオレンス風味をまぶしつつもいたって正攻法な娯楽チャンバラに徹していた印象だったけれども、本作も女座頭市という新機軸こそあれど、王道をゆく娯楽チャンバラである点は踏みはずしていなくてすこぶる好印象。いつの時代にも通じる座頭市の魅力、強いてはチャンバラ時代劇の魅力がここでも健在ということか。

 綾瀬はるかといえば『僕の彼女はサイボーグ』(2008年 クァク・ジェヨン監督)でのとぼけた可愛らしさが記憶に新しいのだが、本作ではそれとはまた違う可憐な力強さで魅了してくれる。
 正直この二作を観るまではとりたてて興味の湧かない女優さんだったんだけど、今年のこの二本で見方が変わった。ファンには今さらかと言われそうだが、いい味持ってるわ。
 ただ、殺陣シーンはそこそこ様になっているんだが、三味線の演奏は練習が足りないらしく、ほとんど顔のアップでごまかしているのが気になった。そういうシーンでもきっちり魅せてこそ殺陣シーンが際だつってものだから、手抜かり無くやって欲しい。

 一方、二枚目を演じることの多い大沢たかおの茶目っ気は楽しいし、歌舞伎役者でもある中村獅童の悪役ぶりもまさに貫禄の芝居。大沢たかおの刀を抜けない芝居や中村獅童演じる万鬼の高笑いなど、いい意味でデフォルメされた芝居臭さがここでは心地いい。
 万鬼の魔の手から宿場町を守ろうとするヤクザの息子・虎次を演じた窪塚洋介も、ヘタウマなのか計算された芝居なのかわからない魅力があって可笑しい。前半はひ弱なダメ息子っぽさが強調されるんだけど、クライマックスでは妙に頼もしい兄貴っぷりに惚れ惚れとする。
 そう、これはリアリティより芝居小屋で観る演劇のような見せ物に徹したエンターテイメント映画なんだ。

 説明的な市の独白やチャンバラシーンで多用されたスローモーション、市が十馬を想うシーンでのわかりやすいフラッシュバックなどに演出過剰を感じることもありはしたが、最初に危惧した「愛が見えたら、きっと泣く」そのままのクライマックスに嫌味は感じられず、素直に感動させてもらった。
 綾瀬はるかの演じる市の今後の活躍も見たいと思わせるに充分な快作。ぜひ続編を作って欲しい。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】綾瀬はるか/大沢たかお/中村獅童/窪塚洋介/柄本明/竹内力/利重剛/佐田真由美/山下徹大/斎藤歩/手塚とおる/土屋久美子/並樹史朗/杉本哲太/横山めぐみ/渡辺えり
  • 【監督】曽利文彦
  • 【製作】映画「ICHI」製作委員会(TBS/ジェネオン エンタテインメント/セディックインターナショナル/ワーナー・ブラザース映画/電通/ローソンチケット/講談社/MBS/ホリプロ/朝日新聞社/OXYBOT)
  • 【配給】ワーナー・ブラザース映画
  • 【日本公開】2008年
  • 【製作年】2008年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】120分

コメント (0)

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック (10)

この記事のトラックバックURL: ※承認制
http://www.typepad.com/services/trackback/6a0128762d7a9d970c0120a72a57ab970b

この記事へのトラックバック一覧: 【映画評】ICHI:

» ICHI(テレビ録画) (単館系)
ICHI 2012年01月02日01時45分00秒TBS新春シネマシアター「ICHI」 正月にやっていた綾瀬はるかさん版座頭市を鑑賞。 一応楽しめた。 市がサブキャラに見えるんですが。 藤平十馬演じる大沢たかお...... [続きを読む]

» ICHI(51点)評価:○ (映画批評OX)
総論:もう少し脚本を練っていれば、大傑作になっていたハズ。勝新太郎や、北野たけしが演じてきた「座頭市」を、大胆にも女性という設定に変えてリメイクした意欲作。監督は「ピンポ...... [続きを読む]

» ICHI(143作目) (別館ヒガシ日記)
ICHIはWOWOWで鑑賞し結論は悪くなく満足は出来た 内容は盲目の芸者である市が十馬と出会う [続きを読む]

» 「ICHI」鑑賞 (エモーショナル★ライフ)
綾瀬はるかさん主演「ICHI」を見てきました。 女性版座頭市と言える作品です。 盲目の女性でありながら剣の腕が立つ市(いち)。 三味線を弾きながら孤独に旅をしている。 そんな彼女が剣を抜けない侍、藤平十馬と出会う。 予告編やポスターのイメージが非常に格好良くて ..... [続きを読む]

» 『ICHI』 (CHAOS(カオス))
いーねぇ、綾瀬はるか。 凛々しいねぇ。綺麗だねぇ。 振り返った時の表情とかグッくる。 勝新太郎とか北野武の座頭市に比べると殺陣とか迫力に欠ける部分はあるものの、女座頭市という斬新さはいいね。 【あらすじ】 盲目の旅芸人、瞽女の市。彼女は人と深く関わることを避けて生きている。 市は男たちとのいざこざをきっかけに一人の侍と出会う。 侍の名は藤平十馬。彼は刀を抜くことができない。 悲しい過去を背負った二人はやがて惹かれあう・・ ※映画の詳細はこちら ※オフィ... [続きを読む]

» 「ICHI」鑑賞 (エモーショナル★ライフ)
綾瀬はるかさん主演「ICHI」を見てきました。 女性版座頭市と言える作品です。 盲目の女性でありながら剣の腕が立つ市(いち)。 三味線を弾きながら孤独に旅をしている。 そんな彼女が剣を抜けない侍、藤平十馬と出会う。 予告編やポスターのイメージが非常に格好良くて ..... [続きを読む]

» 瞽 〜「ICHI/市」〜 (サナダ虫 〜解体中〜)
曽利文彦監督作品、綾瀬はるか主演の、 映画 「ICHI/市」を観た。 その女、座頭市。 感想。 ?市、意外に強くない。(ガーン!) ?真剣を使えないのなら、木刀や木の枝で戦うだけでも、十分な戦力になるだろ。 ?い、いつの間にバンキから仕込み杖を奪ったのか?! 見所。 ?殺陣。 ?サイコロ。 ?鈴。 女版・座頭市、というアイデアには、それなりにそそられたけど、イマイチ。 時代劇ってあまり観ないけど、コレはアイドル映画っぽくもみえる。 つーか、窪塚洋介を久し振りに観た気... [続きを読む]

» ICHI (映画君の毎日)
あらすじ//三味線を背負い、人とかかわることを避けながら、一人で旅を続ける目の不自由な“離れ瞽女”の市(綾瀬はるか)。とある宿場町に流れ着いた彼女は、一風変わった浪人・藤平十馬(大沢たかお)と出会う。やがて二人は、若き2代目・虎次(窪塚洋介)率いる白河組と、万... [続きを読む]

» ICHI (いい加減社長の日記)
【gooブログの方へ】 アメブロからのTBが送信されないようですので、この記事にTBをつける場合は、 http://blog.goo.ne.jp/terry0317/e/2b5529c3afc93d1b7702294c5f68fe2c の方につけてい... [続きを読む]

» ICHI  (ケントのたそがれ劇場)
★★★★  とにかく綾瀬はるかちゃんが可愛いね。前作の『僕の彼女はサイボーグ』で彼女を観て以来、その魅力にメロメロになってしまったが、今度は時代劇である。それも女座頭市。「なに斬るかわかんないよ、見えないんだからさ」バシャッ!というセリフがなかなか決まって... [続きを読む]

このページについて - About This Page

  •  『未完の映画評』は、映像業界で働く現役現場製作スタッフかみぃによる個人的な映画サイトです。
     “自戒としての映画批評”と銘打ち、映画館まで足を運んで観た劇場公開最新作の批評・感想・レビューをメインに、リアルタイムに進行する製作日誌、映画にとどまらない業界全般にまつわる雑談・裏話なども掲載しています。
     詳しくはこのサイトについてをご覧ください。

最近のコメント - Comments

2012年度 満足度評価 - Rating 2012

  • 2011年12月11日(日)~ 公開作品
  • ★★★★★ ≒ 溺愛
  • ★★★★☆ ≒ 秀逸
    | 最強のふたり | おおかみこどもの雨と雪 | アーティスト |
  • ★★★★ ≒ 満悦
    | 崖っぷちの男 | 捜査官X |
  • ★★★☆ ≒ 良好
    | 映画 ひみつのアッコちゃん | HOME 愛しの座敷わらし | バトルシップ | ドラゴン・タトゥーの女 |
  • ★★★ ≒ なかなか
    | トータル・リコール | 幸せへのキセキ | テルマエ・ロマエ | ももへの手紙 |
  • ★★☆ ≒ まあまあ
    | アベンジャーズ | ダークナイト ライジング | BRAVE HEARTS 海猿 | 臨場 劇場版 | 外事警察~その男に騙されるな | ブライズメイズ~史上最悪のウェディングプラン | ライアーゲーム-再生- | はやぶさ 遙かなる帰還 |
  • ★★ ≒ いまいち
    | エイトレンジャー | Another アナザー | ヘルタースケルター | ダーク・シャドウ |
  • ★☆ ≒ つまらん
    | Black&White/ブラック&ホワイト |
  • ★ ≒ ダメダメ
    | プロメテウス | 幸せの教室 |
  • ☆ ≒ ふざけんな
    |

最近のつぶやき - Twitter