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2008年11 月 9日 (日曜日)

【映画評】レッドクリフ Part I (2008)

巨匠ジョン・ウー監督が三国志の世界をオールスターキャストで映画化した歴史アクション大作。

【満足度:★☆】 (鑑賞日:2008/11/03)

 西暦208年、中国大陸を支配せんとする魏の国の曹操(チャン・フォンイー)は若き皇帝・献帝(ワン・ニン)をも手中に収め、近隣の敵対勢力を80万の兵を擁する武力で制圧していった。
 曹操軍に急襲された蜀の国の君主・劉備(ユウ・ヨン)は多くの犠牲を払いながらも慕ってくれる民とともに夏口に逃げ延びる。
 追い詰められた蜀の国を救うため、軍師・諸葛亮孔明(金城武)は、やはり曹操に対抗していた呉の国と同盟を結んで共闘すべく、呉の国の君主・孫権(チャン・チェン)の説得に向かう。また、呉にはもうひとり口説かねばならぬ男がいた。孫権軍の司令官・周瑜(トニー・レオン)だ…。

 『男たちの挽歌』シリーズや『ミッション・インポッシブル2』で知られる世界の巨匠ジョン・ウー監督が、説明するまでもない中国の歴史小説『三国志演義』をもとに世紀の戦い「赤壁の戦い」を描いた超大作の前編。
 なお、肝心の「赤壁の戦い」は後編にお預け。この前編はそこに至るまでのお話。

 筆者は理系少年だったので歴史にほとんど興味がなく、三国志についても孔明や劉備の名前は知ってるってぐらいの知識しかない。
 当然のように「赤壁の戦い」と言われてもピンとこなくて、あらすじを見てはじめて「ああ、昔テレビで観たアニメの『三国志』にそんなエピソードがあったっけ」というありさま。
 そんなわけで、三国志に思い入れもこだわりもないんだけれど、それにしてもこの映画は、なげーよ!
 こんな薄味長尺で、さらに2部構成って、製作費の無駄遣いだろ。

 序盤の、孔明が呉の国へ交渉に出向くあたりまでは、戦闘アクションものとしてまあまあ楽しめてたんだけど、周瑜が登場したあたりからどんどん話が散漫になって、天才軍師・孔明の“キレ”はほとんど伝わってこないし、アクションも単調で飽きてきた。

 Part1でのクライマックス、“九官八卦の陣”の戦いも、生死を分ける戦闘というより、華麗な演舞を観させられるってだけの見え透いた段取り芝居。
 このクライマックスの頃になると、八割方埋まっていた客席のあちこちで“飽きてますオーラ”が発せられているのが感じ取れたほど。ひとつ離れた席にいた女性はとうとうこのクライマックスのさなかで出て行ったし。
 こんな無闇に疲れる劇場体験、久しぶりだわ。

 金がかかってるのは充分に伝わってくる超大作だが、いいかげん「CGすごいでしょ」演出はやめようよ。
 2000隻の曹操軍の船団も、『トロイ』(2004年 ウォルフガング・ペーターゼン監督)からなんら進歩してない。
 『トロイ』当時ですら、あり得ない超俯瞰でのあからさまなコピペCGに失笑してたのに、まだ同じ轍を踏んでる。

 半年後に後編が待ちかまえているから結論を急ぐ必要もないが、少なくともこの前編は話のネタにしかならない愚作
 昔三国志にはまって一家言あるおじさんが、飲み屋のねーちゃん相手に「かなーり、映画用にアレンジしちゃってるよね。獅童がやってた甘興ってのは甘寧って武将をモデルにした架空の役なんだな、うん。あとこれ大事なことだけどさ(キリッ)、金城なんとか君がやってた諸葛亮が孔明ってなってたけど、“孔明”は字(あざな)で、彼を孔明って呼ぶんなら、劉備は玄徳って言わなきゃおかしいんだよぉ(ハート)」てな感じで知識自慢をしてる姿が目に浮かぶ。

 唯一褒めてあげたいのは、オープニングに日本版オリジナルの三国志解説を入れたり、何度も同じ登場人物に人名テロップを出してたこと。
 わかってる人にとってはくどかったかもしれないけど、ミーハーなオールスターキャスト映画でしかない本作で、筋金入りの三国志ファンより三国志初心者に気遣ったのは、関係者がこの作品の立ち位置をよく理解している証。
 Part2では女性キャストが活躍するみたいだし、実はこの映画、男っぽい内容だけど、かなり女性向けじゃないかと思う次第。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】トニー・レオン/金城武/チャン・フォンイー/チャン・チェン/ヴィッキー・チャオ/フー・ジュン/中村獅童/リン・チーリン/ユウ・ヨン/ホウ・ヨン/トン・ダーウェイ/ソン・ジア/バーサンジャブ/ザン・ジンシェン/チャン・サン
  • 【監督】ジョン・ウー
  • 【製作】テレンス・チャン/ジョン・ウー
  • 【脚本】ジョン・ウー/カン・チャン/コー・ジェン/シン・ハーユ
  • 【アクション監督】コリー・ユン
  • 【水上戦場面監督】パトリック・レオン
  • 【第二班監督】チャン・ジンチョン
  • 【製作総指揮】ハン・サンピン/松浦勝人/ウー・ケボ/千葉龍平/チン・ウェン・ハン/キム・ウデク/ユ・ジョンフン/ジョン・ウー
  • 【美術・衣裳デザイン】ティム・イップ
  • 【撮影監督】リュイ・ユエ/チャン・リー
  • 【編集】アンジー・ラム/ヤン・ホンユー/ロバート・A・フェレェッティ
  • 【音楽】岩代太郎
  • 【VFX監督】クレイグ・ヘイズ
  • 【VFX】オーファネージ
  • 【主題歌】alan「RED CLIFF~心・戦~」 [サウンドプロデュース]菊池一仁 [作詞]松井五郎 [作曲]岩代太郎 [編曲]中野雄太
  • 【提供】エイベックス・エンタテインメント/東宝東和/テレビ朝日/Yahoo! Japan/朝日放送/メ~テレ/北海道テレビ/九州朝日放送/新潟テレビ21
  • 【配給】東宝東和/エイベックス・エンタテインメント
  • 【宣伝】KICCORIT/P2
  • 【原題】赤壁
  • 【翻訳】鈴木真理子
  • 【字幕】戸田奈津子
  • 【監修】渡邉義浩(大東文化大学)
  • 【日本公開】2008年
  • 【製作年】2008年
  • 【製作国】アメリカ/中国/日本/台湾/韓国
  • 【上映時間】145分

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コメント (2)

TBありがとうございました。
厳しい見方をするとそうでしょうねー。
私は面白かったけれど、もうちょっと削って二部作を一本にまとめることはできたんじゃないかと思いました。あんまりなところで終わっちゃいますからねー。でも金城孔明、三国志ファンに意外と好評みたいですよ。

>ぴむさん
もうちょっと世間の評判も悪いだろうと思っていたのに、意外と好評で驚いたんです。
キャストのファンもいれば、三国志上のキャラのファンもいるという、ある意味ですごく気を使う題材だと思うけど、世間の評判を見る限り、その辺にはうまく期待に応えられてたようですね。
コメントありがとうございました。

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