【映画評】ブラインドネス (2008)
「白の闇」と称される突然失明する謎の伝染病によって人々が極限状態に追い込まれるパニック・サスペンス。
ある都市の交差点、車で信号待ちをしていた男(伊勢谷友介)は突然視界が真っ白になり、目が見えなくなる。
原因不明のこの奇病は伝染病であったらしく、彼に関わった人間も次々と失明してしまう。
異常事態を察知した政府は患者らを隔離施設に閉じこめることにする。
最初の患者を診察した医者(マーク・ラファロ)も視力を失い、施設に強制収容されることに。彼を心配する妻(ジュリアン・ムーア)は、感染していないにもかかわらず、自分も見えなくなったと嘘をついて夫に同行。隔離施設へ入所するが…。
『シティ・オブ・ゴッド』(2002年)や『ナイロビの蜂』(2005年)で知られるフェルナンド・メイレレス監督がノーベル文学賞受賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説『白の闇』を国際色豊かなキャストで映画化。
冒頭から謎の病気が伝染していく様がえも言われぬ緊張感を伴いながらテンポ良く描かれ、病気の原因や医者の妻にはなぜ病気が伝染しないのかなどは謎のまま、状況だけがどんどん悪化していく。
原因不明の奇病によって世界が崩壊に向かう黙示録的内容は傑作『トゥモロー・ワールド』(2006年 アルフォンソ・キュアロン監督)や今年公開された『ハプニング』(2008年 M・ナイト・シャマラン監督)を思い起こさせるが、極限状態で人間の本性が暴かれていくというプロットはスティーヴン・キング原作の日本では今年公開された『ミスト』(2007年 フランク・ダラボン監督)が近いように思う。
国や都市名はおろか登場人物の名前も排するほどの抽象化は普遍化を伴い、現実の世界情勢を連想させる。それは単純な善悪では割り切れない社会のありようを表す。
配役も一見「この人は善玉、こいつは悪玉」という布陣になっているが、善玉が常に正しい振る舞いを押し通せるわけじゃない。
時に欲望に陥落し、時に理性を超えた行為で我が身を守るしかない。そんな「生きるためにはしかたない」という正当化は悪玉にだって当てはまるのだ。
そんな本作の極限状況たるや目を背けたくなるありさま(PG-12指定)なのだが、本能的な人間の醜さと同時に人間の持つ優しさを忘れないバランス感覚が素晴らしい。
これは究極的な絶望を描ききってしまった『ミスト』からは感じられなかった作り手側の良心だ。
正直、人間の本性が露わになっていく過程は『ミスト』の方が巧みだった印象で、この『ブラインドネス』は少々類型的な気がしないでもない。
ただ前者は、作り手側の一人である筆者には「ここまで観客を絶望に陥れることは商業映画として必要なのか?」という疑問を感じてしまい、素直に評価する気になれなかった。
その点本作はおぞましいまでの絶望には変わりないのだが、支え合う人々に希望を見いだせる落としどころ、映画として救いのある意外なほど爽やかな感動で締めくくられ、鑑賞後感は比較にならないほど良かった。
何も見えなくなった絶望の中で見えてくるものは、やはり希望でなくちゃと思うのだ。
作品データ - Film Data
- 【キャスト】ジュリアン・ムーア/マーク・ラファロ/アリス・ブラガ/伊勢谷友介/木村佳乃/ドン・マッケラー/モーリー・チェイキン/ミッチェル・ナイ/ダニー・グローヴァー/ガエル・ガルシア・ベルナル
- 【監督】フェルナンド・メイレレス
- 【原作】ジョゼ・サラマーゴ「白の闇」
- 【脚本】ドン・マッケラー
- 【製作】ニヴ・フィッチマン/アンドレア・パラタ・リベイロ/酒井園子
- 【共同製作】ベル・バーリング/サリ・フリードランド
- 【製作総指揮】ゲイル・イーガン/サイモン・チャニング・ウィリアムズ/依田巽/石井晃/ビクター・ローワイ
- 【撮影】セザール・シャローン,ABC
- 【美術】ツレ・ペアケ
- 【衣装】ルネ・エイプリル
- 【編集】ダニエル・レゼンデ
- 【音楽】マルコ・アントニオ・ギマランイス/ウアクチ
- 【配役】スージー・フィギス/ディアドラ・ポーウェン
- 【提供】IFF/CINV/ティー ワイ リミテッド/ギャガ・コミュニケーションズ/アスミック・エース エンタテインメント
- 【配給】ギャガ・コミュニケーションズ
- 【原題】BLINDNESS
- 【字幕翻訳】太田直子
- 【日本公開】2008年
- 【製作年】2008年
- 【製作国】カナダ/ブラジル/日本
- 【上映時間】121分
- 【公式サイト】http://blindness.gyao.jp/
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こんにちは~♪^^
コメント、どうもありがとうございましたm(__)m
そうですね~、ミストに似てるところもありましたし、ちょっとハプニングにも似てて・・
ミストよりはちょっと見劣りしましたが、ハプニングよりは良かったかなと(^^ゞ
いったんこの世の中を全員見えなくして、様々なことをわからせて
そういう人たちにこれから地球を再生してもらいたい・・と神(??)が
お思いになったのかしら??なんてチラッと思ったり。
見えるってことは素晴らしい事でもあり、人間の本質を見えなくしてる基でもあったりするのかな~・・と感じたりもしました。
投稿情報: メル | 2009年4 月23日 (木曜日) 10:49
>メルさん
コメントありがとう。
自分は後味の良さで『ブラインドネス』の方が好きですが、『ミスト』も凄い映画でしたよね。
どちらも怯えから狂気への変貌が生々しすぎて、観ているのはつらいですが、いろいろ考えさせられます。
投稿情報: かみぃ@管理人 | 2009年4 月24日 (金曜日) 22:32