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2009年6 月13日 (土曜日)

【映画評】スター・トレック (2009)

大人気宇宙SF『スター・トレック』が、『M:i:III』のJ.J.ブエイブラムス監督によって再始動。

【満足度:★★★★☆】 (鑑賞日:2009/06/03)

 もうね、アバンタイトルの冒頭のエピソードからまるでクライマックスのような凄まじい迫力と心揺さぶられるエモーショナルな展開で、すでに観客の心をわしづかみ。
 J.J.エイブラムスが監督した『M:i:III』(2006年)はいまひとつな印象で、彼が製作を担当した『クローバーフィールド/HAKAISHA』(2008年、マット・リーヴス監督)にいたってはまるで受け付けなかった自分だが、これは気に入った。

 西暦2233年、惑星連邦船USSケルヴィンは、突如現れた巨大宇宙船から攻撃を受ける。
 敵船のネロ船長(エリック・バナ)に殺された船長から船長代理に任命されていたジョージ・カーク(クリス・ヘンズワース)は、絶望的な戦いの中、ひとり艦に残り、乗組員たちをシャトルで脱出させる。
 混乱の中、脱出に成功したジョージの妻が彼の息子を出産。その子こそが、将来USSエンタープライズ号の船長となるジェームズ・タイベリアス・カークだった。
 二人の安全を見届けたジョージは敵船に決死の特攻を試み、宇宙のもくずと消えたのだった…。

 自分はトレッキーと呼ばれるような『スター・トレック』シリーズの熱心なファンというわけではない。
 元祖テレビシリーズ、日本放映時タイトル『宇宙大作戦』(略称TOS)は微かに幼少期に観ていた記憶が残っているが、それよりも自分にとって『スター・トレック』といえば、テレビで観た劇場版第一弾の映画『スタートレック』(1979年、ロバート・ワイズ監督)。
 その映画版『スタートレック』にしても正直なところすでに内容は忘れてしまっているのだが、ストーリーとかより、宇宙の果てから地球にやって来た“ヴィジャー”と名乗る謎の存在(の正体)が当時理系少年だった自分には強烈なインパクトだったのよ。
 やはり同時期にテレビ放映で観た元祖『スター・ウォーズ』(いわゆるエピソード4)には文字通りの宇宙の戦争ものという平凡な感想しか持てなかったのだが、『スタートレック』=“ヴィジャー”には理系心をくすぐるSFロマンを感じて、自分にとっては『2001年宇宙の旅』(1968年、スタンリー・キューブリック監督)と並ぶ、宇宙SFの指標となっている。

 前置きが長くなったが、そんなわけでけっこう楽しみにしていた本作。監督が自分はまったく面白いと思わなかった『クローバーフィールド/HAKAISHA』に深く関わっていたJ.J.という点だけが不安材料だった。
 が、そんな心配はしょっぱなからまったくの杞憂に終わり、お見事というしかない素晴らしい出来。

 冒頭のエピソードから無駄がない。
 本編の主人公であるジェームズ・タイベリアス・カーク(クリス・パイン)の誕生を描きながら、同時に父である“伝説の船長”誕生のエピソードにもなっている。
 さらに、このときの事件自体が今作の中で重要な意味を持っている、と、シナリオ構成上、これ以上ない巧みな導入部。

 また、この映画が最近流行りのビギンズものと見せかけて、実は旧シリーズからの正統な続編で、且つ、旧シリーズをリセットして世界観を再構築するとは、なかなかうまいこと考えたもんだ。(観てないと意味がわかんないだろうが、観れば納得する)

 『スター・トレック』シリーズはこれだから世界中から愛されるんだろうと思わせる魅力的な人物造形が、これまたすこぶる心地いい。
 本作は新生カークと新生スポックの友情物語と見られがちだが、少なくない登場人物のキャラの立った群像劇としても群を抜いていいんだ。

 古くからのファンのファン心理をくすぐるエピソードを織り交ぜながら、それが新しい観客への登場人物紹介として機能していて、ユーモアの効いたセリフの応酬にもニンマリさせられる。
 「キャプテン」の呼び間違いや、「ノーコメント」とか、本筋とは関係ないセリフなのに、よく思いつくなと。

 初代USSエンタープライズ号船長クリストファー・パイク(ブルース・グリーンウッド)が将来を決めかねていた青年ジェームズに入隊を勧めたときの、「キミの父が船長だった時間はたった12分。でも800人の命を救った。キミを含めて。」とのセリフにはマジしびれた。だから“伝説の船長”なんだ。

 SF的にはタイムパラドックスの扱いに緩さを感じはしたけれど、まあ、転送装置で瞬間移動したり、ビーム銃がピュンピュン飛び交うような空想科学娯楽映画で、目くじらを立てるほうが野暮ってもんで、楽しんだもの勝ちと思います。

 なにはともあれ伝統的スペースオペラが復活するのは嬉しい限り。
 今回は若い世代への橋渡し自己紹介としての色合いが濃かったけど、次回作では『スター・トレック』本来の魅力である、“未知なる宇宙”を満喫させてくれる続編を期待したい。

 ところで、気分を高揚させるBGMの合間に流れる、巨大敵船の登場BGMやその船体のきしむ効果音が、大怪獣ゴジラの登場BGMや咆哮に酷似しているのは、やっぱり『クローバーフィールド/HAKAISHA』を作ったJ.J.の意図したところなんだろうか。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】クリス・パイン/ザッカリー・クイント/レナード・ニモイ/エリック・バナ/ブルース・グリーーンウッド/カール・アーバン/ゾーイ・サルダナ/サイモン・ペッグ/ジョン・チョウ/アントン・イェルチン/ベン・クロス/ウィノナ・ライダー
  • 【監督】J.J.エイブラムス
  • 【脚本】ロベルト・オーチー/アレックス・カーツマン
  • 【原作】ジーン・ロッデンベリー
  • 【製作】J.J.エイブラムス/デイモン・リンデロフ
  • 【製作総指揮】ブライアン・バーク/ジェフリー・チャーノフ/ロベルト・オーチー/アレックス・カーツマン
  • 【撮影】ダン・ミンデル,ASC
  • 【プロダクション・デザイナー】スコット・チャンブリス
  • 【編集】マリアン・ブランドン,A.C.E./メアリー・ジョー・マーキー,A.C.E.
  • 【衣装】マイケル・カプラン
  • 【音楽】マイケル・ジアッキノ
  • 【提供】パラマウント ピクチャーズ/スパイグラス・エンターテインメント
  • 【製作】バッド・ロボット
  • 【配給】パラマウント ピクチャーズ ジャパン
  • 【原題】Star Trek
  • 【字幕翻訳】松崎広幸
  • 【日本公開】2009年
  • 【製作年】2009年
  • 【製作国】アメリカ
  • 【上映時間】126分

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