« 【映画評】トランスフォーマー/リベンジ | メイン | 【映画評】ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 »

2009年6 月26日 (金曜日)

【映画評】愛を読むひと (2008)

朗読を通じて愛を深める二人の、運命に翻弄された重厚なラブストーリー。

【満足度:★★】 (鑑賞日:2009/06/19)

 ベストセラー小説「朗読者」(ベルンハルト・シュリンク著)の映画化。
 忌まわしい過去を抱え、“ある秘密”を隠すハンナを好演したケイト・ウィンスレットが本作で第81回アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した。

 1958年、戦争の傷跡を残すドイツ。
 15歳のマイケル・バーグ(デヴィッド・クロス)は、学校からの帰宅途中、体調を崩したところを、路面電車の車掌ハンナ・シュミッツ(ケイト・ウィンスレット)に助けられた。
 3ヶ月の闘病の末、回復したマイケルはハンナのもとへお礼に訪れる。愛想がいいとは言えない21歳も年上のハンナに大人の女性の魅力を感じるマイケル。
 彼は引き寄せられるように翌日もまたハンナの部屋を訪ねた。素っ気ない態度で接するハンナ。しかし彼女は彼の恋心を見透かし、ついには体を重ねるのだった。
 それからというもの、来る日も来る日も激しく求めあう二人。
 ある日ハンナは、それの前に本を読んで欲しいとマイケルに頼む…。

 ほとんど予備知識を入れずに、甘いラブストーリーのつもりで観たら、思いのほか重い内容にとまどった。
 終戦間もないドイツが舞台ということで、多少はそういう要素もあるだろうことは予想していたが、ここまでアウシュビッツ強制収容所、ナチスの罪とユダヤ人といった戦争問題がメインテーマになっていたとは。
 そういうわけで、思っていた映画とかなり違っていて、いまひとつ乗れなかった。

 それ以前に、二人の人生を変えることになる執拗な逢い引きにあまり共感できなかったことが評価を厳しくさせた。
 思春期の青年が大人の女性に好意を抱くのはともかく、三十代半ばから見れば子供でしかない未成年に手を出す女なんて、禁断の愛などと言ったところで、とうてい受け入れがたくって。
 そんな危ういロマンスがあってこそ、中盤以降でさまざまな“秘密”が重くのしかかるという創作上の構成を理解できないわけじゃないが、前提が否定的に成らざるを得ないものだと、マイケルの、そしてそれを受けてのハンナの感動的な行動も冷めた目でしか観られなかった。

 マイナス要因はこれだけじゃない。
 序盤の官能的なシーンが映画の題材に引き替え少々くどいと感じたことや、ハンナが己の人生を賭けてまで隠しとおそうとする“秘密”がその序盤であっさり予想ついたこと。
 8年も経ってやっと彼女の隠すその“秘密”に気付いたマイケルの「彼女の気持ちを尊重したい」という考えも「なんだかなぁ。強い絆で結ばれた愛というより、彼女を助けることから逃げてるだけじゃないの?」っていう感想しか持てなかったし、裁判を傍聴した学生たちの討論シーンも取って付けたような印象で、いずれもテーマが響いてこない。

 ここまで酷評しておいてなんだけど、客観的にはいい映画だと思うんだ。
 評判のケイト・ウィンスレットを筆頭とした俳優陣の演技は皆、震えるほど素晴らしいし、郷愁を誘うBGMも耳に残る。
 いい意味でやりきれない重いテーマも時代を反映させた文芸作品として申し分ない考えさせられるもの。それでいてラストの締め方は、どこか希望の光を感じさせる余韻が残るのもいい。

 ただ、まだまだ精神年齢が坊やな自分には、正直なところ行間を読めませんでした。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】ケイト・ウィンスレット/レイフ・ファインズ/デヴィッド・クロス/レナ・オリン/ブルーノ・ガンツ/アレクサンドラ・マリア・ララ
  • 【監督】スティーヴン・ダルドリー
  • 【脚本】デヴィッド・ヘア
  • 【原作】ベルンハルト・シュリンク「朗読者」
  • 【製作】アンソニー・ミンゲラ/シドニー・ポラック
  • 【撮影】クリス・メンゲス/ロジャー・ディーキンス,A.S.C.,B.S.C.
  • 【美術】ブリジット・ブロシュ
  • 【編集】クレア・シンプソン
  • 【音楽】ニコ・ムーリー
  • 【衣装】アン・ロス
  • 【提供】ショウゲート/博報堂DYメディア パートナーズ
  • 【配給】ショウゲート
  • 【原題】THE READER
  • 【字幕翻訳】戸田奈津子
  • 【日本公開】2009年
  • 【製作年】2008年
  • 【製作国】アメリカ/ドイツ
  • 【上映時間】124分

コメント (6)

この映画は、発達障害であるど読字障害者の映画だと思いました。文盲と言われるのを極度に恐れる主人公が最後まで自らの障害を障害として認識できないことから悲劇がつづきます。
いまの世なら診断査定技術がすすんでおり、また克服手段もできてきており、こんな悲劇はふせげたかもしれません。

>inoさん
なるほど、そういう解釈もあるんですね。
コメントありがとうございました。

私はあなたのような感性のひとが好きです。
行も読めていないのに、行間を読んだつもりになっているおかしな人たちは笑いましょう。
この映画がよくわかりません。
裁判ではみんな冤罪だって知ってるのに、終盤では本を読んだ人は彼女が重ーい罪を犯したと思い込んでしまっている。
生き残った娘も、責任者の顔は覚えていなくて、本を読ませる変な人は覚えているのだから、その変な人が責任者でないことを知っているはずなのに・・・。
「彼女を許すようでお金は受け取れません」といいました。
そんなに怒りが強いのなら、なぜ裁判のときに他の被告人を許したのでしょう?
主人公も面会のときに「たっぷり反省したか?」というような意味の問いかけをしていますが、冤罪のひとには普通は「大変だったね、お疲れ様」ではないでしょうか?
なんだか変な物語です。

> 匿名さん
コメントありがとう。
この映画で取り上げられている戦争犯罪の問題の難しさは、劇中の裁判では責任者であったか否かで線引きをしていましたが、裁判の結果に関係なく当時のおこないが多くの人を死に至らしめた事実には違いはなく、そのぬぐうことのできない罪の意識が加害者・被害者双方の視点で描かれていたように思います。
ただ映画的には主人公たちの悲劇のロマンスに比重が偏ってしまい、肝心の所が曖昧になってしまったように感じました。
その曖昧なところを感じ取れれば行間を読み取れるのかもしれませんが、そもそもロマンスにも魅力を感じなかったので辛口にならざるを得ません。

流石埜魚水です、初めまして。突然のメールを失礼いたします…。
映画が好きで、ブログを始めました、是非とも一度私のブログを覗いて下さい。

ヒットラーとナチズムとユダヤ人虐殺を映画にした「アウシュヴィッツ」ものは数多くあります。例えば、「アンネの日記」(1959年)、監督の「シンドーラーのリスト」(1993年)、「ヒットラー最後の12日間」(2002年)、「ヒットラーの贋札」(2007年)、「ワルキューレ」(2008年)も印象に残ります。

さらに私には、ロバート・ゴードン・エドワーズ監督の「愛の嵐」(1973年)もまたその一本に入れておきたい作品です。再見したいのですが、ツタヤにはレンタル作品がありませんでした。

漸く「愛を読むひと」をアップロードしました。直接にナチズムとヒットラーを描いた映画ではありませんが、戦争と人間を描いた映画の一本としてあげなくてはならない作品ではないでしょうか…。

コメントいただいたならば、必ず返事を書きます。映画批評家を目指しています、宜しくお願いします。

> 流石埜魚水さん
コメントありがとう。
貴サイト、少しだけ拝見させていただきました。
すごい文章量で圧倒されました。
映画批評家を目指しておられるんですね。頑張ってください。

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック (14)

この記事のトラックバックURL: ※承認制
http://www.typepad.com/services/trackback/6a0128762d7a9d970c0120a72a535c970b

この記事へのトラックバック一覧: 【映画評】愛を読むひと:

» 愛を読むひと (映画、言いたい放題!)
ケイト・ウインスレットが嫌いです。(笑) だって、演技パターンみたいなのが決まっていて 何をやっても一色なんだもの。 しかしこの人、評価されてますよね。 アカデミー賞主演女優賞も取ったらしいし。 一応観ておきますか。 1958年のドイツ。 15歳のマイケルは21歳年上... [続きを読む]

» 愛を読むひと/The Reader(映画/DVD) (映画を感じて考える~大作、カルトムービー問わず映画批評)
[愛を読むひと] ブログ村キーワード愛を読むひと(原題:The Reader)キャッチコピー:愛は本に託された製作国:アメリカ、ドイツ製作年:2008年配給:ショウゲートジャンル:ドラマ/ラブ....... [続きを読む]

» 「愛を読むひと」(THE READER) (シネマ・ワンダーランド)
ケイト・ウインスレット主演の濃密なラブ・ロマンス風ヒューマン・ドラマ「愛を読むひと」(2008年、米・独、124分、MGM映画配給)。この映画はベルンハルト・シュリンクのベストセラー小説「朗読者」を「めぐりあう時間たち」などの作品で知られるスティーブン・ダルドリー監督が映画化。第二次世界大戦後のドイツを舞台に、脆弱(ぜいじゃく)な1人の青年と、21歳年上の謎めいた独身女性が繰り広げる恋愛関係と、やがて2人におとずれる悲壮な運命を描く。この作品で、K.ウインスレットは第81回オスカー主演女優...... [続きを読む]

» 「愛を読むひと」 (心の栄養♪映画と英語のジョーク)
ケイト・ウィンスレット天晴れ!素晴らしい女優魂を見せてもらいました [続きを読む]

» 『愛を読むひと』 試写会鑑賞 (映画な日々。読書な日々。)
1958年のドイツ、15歳のマイケルは21歳も年上のハンナと恋に落ち、やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになり、愛を深めていった。ある日、彼女は突然マイケルの前から姿を消し、数年後、法学専攻の大学生になったマイケルは、無期懲役の判決を受けるハンナと法... [続きを読む]

» 愛を読むひと ケイト・ウィンスレット (ネット社会、その光と影を追うー )
映画愛を読むひとは、ベルンハルト・シュリンクのベス [続きを読む]

» 愛を読むひと ただの「こいばな」ではなかったのか! (労組書記長社労士のブログ)
【 37 -8-】 特に見る気は無かったんだけど、なんとなく引っ掛かるものがあって、ちょうど時間が空いたのと上映時間のタイミングがあったから見てみた。  1958年のドイツ。15歳のマイケルは21歳年上のハンナとの初めての情事にのめり込む。ハンナの部屋に足繁く通い、請われるままに始めた本の朗読によって、2人の時間はいっそう濃密なものになるが、ある日、ハンナは忽然と姿を消す。1966年、大学で法律を学ぶマイケルは傍聴した法廷の被告席にハンナを見つける。裁判に通ううちに彼女が必死に隠し通してきた秘密に... [続きを読む]

» 愛を読むひと (映画君の毎日)
●ストーリー●1958年のドイツ、15歳のマイケルは21歳も年上のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と恋に落ち、やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになり、愛を深めていった。ある日、彼女は突然マイケルの前から姿を消し、数年後、法学専攻の大学生になったマイケル(... [続きを読む]

» 愛を読むひと (必見!ミスターシネマの最新映画ネタバレ・批評レビュー!)
[愛を読むひと] ブログ村キーワード ↓ワンクリックの応援お願いします↓ 評価:7.5/10点満点 2009年63本目(58作品)です。 1958年ドイツ。 猩紅熱で体調を崩していた15歳のマイケル(デヴィッド・クロス)は、自分を助けてくれた21歳年上のハンナ(ケイト・ウィン..... [続きを読む]

» 愛を読むひと (ダイターンクラッシュ!!)
6月23日(日) 19:35~ TOHOシネマズ スカラ座 料金:1250円(チケットフナキで前売りを購入) パンフレット:未確認 『愛を読むひと』公式サイト 例によってドイツ人がドイツで英語を話している。 アメリカとドイツの合作だそうだが、役者はアメリカ人。 「朗読者」という小説が原作で、これはドイツ人の手によるもの。 主人公はマイケルだが、ミハエルとは呼ばないようだ。 ミハエル・シューマッハーでなく、マイケル・シェンカーだな。(意味不明) 少年の恋の手解きをしてくれた中年おばさんが、ナチ... [続きを読む]

» スティーヴン・ダルドリー監督「愛を読むひと」(★★★) (詩はどこにあるか(谷内修三の読書日記))
監督 スティーヴン・ダルドリー 出演 ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クロス、レナ・オリン、ブルーノ・ガンツ  映画の、というかストーリーの重要なテーマは文字が読めないこと。文字が読めないという問題が重いために、他のテーマが見えにくくなる。文字が読めないだけではなく、他にも「できない」ことがある。「できない」ことが積み重なって、不幸が重くなるのだ。知る、知らない、できる、できないが重なり合って、不幸が重くなる。  女はが文字が読めない。そして、それを打ち明けることが「できな... [続きを読む]

» 愛を読むひと (★YUKAの気ままな有閑日記★)
第81回アカデミー賞で、ケイト・ウィンスレットが最優秀主演女優賞を獲得した作品。原作『朗読者』(ベルンハルト・シュリンク著)も先日読了し、映画を楽しみにしていました。 というのも、原作では今一つ内容を感じ切れず、、、「映像で観た方が心に迫るかもしれないなぁ〜」と思っていたからです―【story】1958年。大戦後のドイツ。15才のマイケル(デヴィッド・クロス)は、36才のハンナ(ケイト・ウィンスレット)と激しい恋に落ちる。ハンナはマイケルに本の朗読を頼み、いつしかそれが二人の愛の儀式となる。しかし突... [続きを読む]

» 愛を読むひと (Akira's VOICE)
受け継ぐ物語が未来を生み出す。   [続きを読む]

» 「愛を読むひと」(2008/米=ドイツ) (CINEMAの箱)
今年のアカデミー賞で見事この作品でケイト・ウインスレットが 主演女優賞を獲得した作品です。映画館に行ってきました♪ [emoji:338]作品情報[emoji:338] 監督…スティーブン・ダルドリー [続きを読む]

このページについて - About This Page

  •  『未完の映画評』は、映像業界で働く現役現場製作スタッフかみぃによる個人的な映画サイトです。
     “自戒としての映画批評”と銘打ち、映画館まで足を運んで観た劇場公開最新作の批評・感想・レビューをメインに、リアルタイムに進行する製作日誌、映画にとどまらない業界全般にまつわる雑談・裏話なども掲載しています。
     詳しくはこのサイトについてをご覧ください。

最近のコメント - Comments

2012年度 満足度評価 - Rating 2012

  • 2011年12月11日(日)~ 公開作品
  • ★★★★★ ≒ 溺愛
  • ★★★★☆ ≒ 秀逸
    | 最強のふたり | おおかみこどもの雨と雪 | アーティスト |
  • ★★★★ ≒ 満悦
    | 崖っぷちの男 | 捜査官X |
  • ★★★☆ ≒ 良好
    | 映画 ひみつのアッコちゃん | HOME 愛しの座敷わらし | バトルシップ | ドラゴン・タトゥーの女 |
  • ★★★ ≒ なかなか
    | トータル・リコール | 幸せへのキセキ | テルマエ・ロマエ | ももへの手紙 |
  • ★★☆ ≒ まあまあ
    | アベンジャーズ | ダークナイト ライジング | BRAVE HEARTS 海猿 | 臨場 劇場版 | 外事警察~その男に騙されるな | ブライズメイズ~史上最悪のウェディングプラン | ライアーゲーム-再生- | はやぶさ 遙かなる帰還 |
  • ★★ ≒ いまいち
    | エイトレンジャー | Another アナザー | ヘルタースケルター | ダーク・シャドウ |
  • ★☆ ≒ つまらん
    | Black&White/ブラック&ホワイト |
  • ★ ≒ ダメダメ
    | プロメテウス | 幸せの教室 |
  • ☆ ≒ ふざけんな
    |

最近のつぶやき - Twitter