【映画評】ハリー・ポッターと謎のプリンス (2009)
ヴォルデモート卿の過去が暴かれる、人気のファンタジー大作「ハリー・ポッター」シリーズ第6弾。
運命を背負わされた魔法使いの少年ハリー・ポッターの成長を描く大ヒットシリーズも、いよいよクライマックスへ向けて動き出す。
監督は前作『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』(2007年)に引き続いてのデイビッド・イェーツ。
着々と悪の勢力を伸ばす“名前を言ってはいけないあの人”ことヴォルデモート卿に対抗すべく、ダンブルドア校長(マイケル・ガンボン)は旧友スラグホーン(ジム・ブロードベント)を教壇に復帰させる。スラグホーンはヴォルデモート攻略の鍵となる、ある情報を握っているのだ。
ダンブルドアはハリー・ポッター(ダニエル・ラドクリフ)に、彼に近づいてその秘密をつかむよう指示。
でも、そんなことととは関係なく、年頃のホグワーツの生徒たちはそれぞれ意中の人に向けて恋の火花を散らしている。
またその一方で、ハリーのライバル、ドラコ(トム・フェルトン)がなにやら怪しい行動を繰り返しているのだった…。
正直なところこのシリーズは、毎回なんとなく惰性で観ているだけだったりする。
このシリーズの持つ、友情と恋を巡るゆるい青春学園ドラマと、打倒ヴォルデモートという生死を賭けたサスペンス要素の振り幅が極端すぎて、毎度毎度まとまりが悪いと感じているので。
今回もやっぱりその傾向は変わらずだったが、今作は両者のバランスがかなりマシだったんじゃないか。
おそらくは原作が完結し、クライマックスへ向けての道筋が明確になったお陰で、ストーリー展開上の枝葉を絞り込めたのが功を奏した。
エピソードを詰め込んでいる割には駆け足感を感じなかったのもその表れだと思う。
また、6作目ともなると、ホグワーツ魔法魔術学校の装飾品などのおもしろギミック紹介も控えめで、ハリーを中心としたドラマに注力していたのもよかった。
原作は未読だが、これでもかなり刈り込んだんだろうという想像はつく。
それがもっとも顕著に表れているのが「謎のプリンス」=“半純血のプリンス(THE HALF-BLOOD PRINCE)”の扱いだ。
それはもう、びっくりするぐらいあっさりした描き方。“半純血のプリンス”の正体に驚くより、「タイトルにもなっているのに、これだけかい!」って驚きの方が大きかったわ。
そんな思わせぶりなタイトルとは裏腹に、物語的にはロン・ウィズリー(ルパート・グリント)を巡る恋愛模様の方が印象に残る。
その部分を学園ドラマとして観る分には、面白く愉しめたんだけど、その分、もう一人の“選ばれし者”ドラコの描き方は不足気味。
映画全体を包むダークな雰囲気を考えると、そういった謎に比重を置いた方が映画として引き締まったように思うんだけど、きっとシリーズ通してのハリポタファンはそれを望まないんだろうなあ。
ただ、原作が完結したことによるもう一つの好循環として、6作目にしてやっと、続きが気になる終わり方をしてくれたことは評価したい。
これまでは毎回毎回、その場で足踏みをするような終わり方で、続きものとしては煮え切らない印象がぬぐえなかったのだが、今作のエンディングは、8年も掛けた長い長い前フリがやっと終わって、クライマックスへ向けての大きな流れを感じることができたもの。
いよいよ物語も大詰め。次回作へ向けて期待が大いに膨らむ。
ただ最後に、ひとつ気になったのは、“原作を読破された方”の、この映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』の感想に、(この映画のネタバレは隠しているようなところでも、)最終章『ハリー・ポッターと死の秘宝』前後編での展開を連想させるネタバレ気味のコメントがやけに目につくこと。
その展開は劇作法的に想像の範疇ではあるんだけれど、映画だけで楽しんでいる者としては、なんだかなぁ。
原作未読で映画を楽しもうという方は、そこは注意されたし。
シリーズ作品 - Series
- ハリー・ポッターと謎のプリンス (2009)
- ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団 (2007)
- ハリー・ポッターと炎のゴブレット (2005)
- ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 (2004)
- ハリー・ポッターと秘密の部屋 (2002)
- ハリー・ポッターと賢者の石 (2001)
作品データ - Film Data
- 【キャスト】ダニエル・ラドクリフ/ルパート・グリント/エマ・ワトソン/ジム・ブロードベント/ヘレナ・ボナム=カーター/ロビー・コルトレーン/マイケル・ガンボン/アラン・リックマン/マギー・スミス/トム・フェルトン/イバンナ・リンチ/ボニー・ライト/ジェシー・ケイブ/ヒーロー・ファインズ・ティフィン/フランク・ディレイン/ウォーウィック・デイビス/ティモシー・スポール/デイビッド・シューリス/ジュリー・ウォルターズ/デイビッド・ブラッドリー/マーク・ウィリアムズ/ジェイムズ・フェルプス/オリバー・フェルプス/ナタリア・テナ/ジョージーナ・レオニダス/ヘレン・マクローリー/デイブ・レジェノ
- 【監督】デイビッド・イェーツ
- 【製作】デイビッド・ヘイマン/デイビッド・バロン
- 【脚本】スティーブ・クローブス
- 【原作】J.K.ローリング
- 【製作総指揮】ライオネル・ウィグラム
- 【共同製作】ジョン・トレイ
- 【撮影】ブリュノ・デルボネル,A.F.C.,A.S.C.
- 【美術】スチュアート・クレイグ
- 【編集】マーク・デイ
- 【音楽】ニコラス・フーパー
- 【衣装】ジェニー・ティマイム
- 【視覚効果監修】ティム・バーク
- 【特殊メイク/クリーチャー・デザイン】ニック・ダドマン
- 【配給】ワーナー・ブラザース映画
- 【原題】HARRY POTTER AND THE HALF-BLOOD PRINCE
- 【字幕翻訳】岸田恵子
- 【翻訳監修】松岡佑子
- 【日本公開】2009年
- 【製作年】2009年
- 【製作国】アメリカ
- 【上映時間】154分
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