« 【映画評】バベル | メイン | 【映画評】女の子ものがたり »

2009年9 月 3日 (木曜日)

【映画評】20世紀少年〈最終章〉ぼくらの旗 (2009)

人気コミック『20世紀少年』の大ヒット実写映画化シリーズ、“ともだち”の正体が明かされる待望の最終章。

【満足度:★★】 (鑑賞日:2009/09/02)

 説明するまでもない浦沢直樹原作の人気コミック『20世紀少年』、『21世紀少年』の実写映画化三部作の完結編。
 いよいよ最後ということでクライマックスの盛り上がりはあるものの、全体的に「まとめ」ムード。

 “奇跡の復活”を果たした“ともだち”が、世界大統領として君臨している“ともだち歴3年”(西暦2017年)。ばらまかれた殺人ウイルスによって人口が激減した世界。
 ともだちは人々に「8月20日正午、人類は宇宙人に滅ぼされる。私を信じる者だけが救われる」と予言していた…。

 CGによって描かれる未来世界の映像は前二作『20世紀少年』『20世紀少年-第2章-最後の希望』以上に派手さを増しているが、物語としては、鍵を握る登場人物たちが「あれ(旧作でのできごと)は、実はこういう真相だったんだよ」と一人語りしているばかりで、長い映画の割にあんまり展開らしい展開を感じられない。

 完結編ということで、“ともだち”の正体、すなわち「“ともだち”は誰なのか」という最大の謎はもちろん解決するし、どうして彼がこんなことをしたのかという心理的要因、「“ともだち”とは何なのか」という意味においての「“ともだち”の正体」にまで踏み込んでいたのは評価する。
 ただ、三作通して、どうして“ともだち”がここまでのことを成し遂げられたのかという過程がスカスカで、どうしても説得力に欠いてしまうのは相変わらず。
 この“過程軽視”は“ともだち”のみならず、他の登場人物たちにも共通していて、例えば「ワクチンを開発できました」(現在完了形)ってだけのために登場し、そのままフェードアウトするキリコ(黒木瞳)の扱いを見ても、同様の消化不良を感じずにいられない。カンナ(平愛梨)の実母なのに、なんで全員集合のクライマックスにいないのさ。
 ほかにも、カンナが抵抗軍のリーダーになっていたり、“ともだち”側だった人たちが勝手に改心していて反旗を翻していたり、と、ことごとく結果だけが提示されるご都合主義の羅列で、映画というものに期待するドラマチックさからはほど遠い。

 覆面レスラーのごとく素顔をさらさない“ともだち”や巨大ロボットといった破天荒な設定・素材は、エンターテイメント作品としては「これもアリ」と許容するんだけど、壮大な世界観を提示するだけで手一杯で、その調理に失敗したとしか言いようがない。

 ただ今作での白眉は、神木隆之介クン。
 ネタバレになるので詳しくは書かないが、たったあれだけの出演時間で、その役柄のみならず、このグダグダな作品に一定の説得力をもたらした彼の表情で訴えかける演技は賞賛に値する。

 最後に、エンドロール後にもまだ10分近くエピソードが続くので、決して途中で席を立たないように。
 これを観ないとこの三部作は完結しない。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】唐沢寿明/豊川悦司/常盤貴子/香川照之/平愛梨/藤木直人/石塚英彦/宮迫博之/佐々木蔵之介/山寺宏一/古田新太/高橋幸宏/佐野史郎/森山未來/小池栄子/木南晴夏/ARATA/六平直政/福田麻由子/竹内都子/竹中直人/石橋保/光石研/片瀬那奈/津田寛治/手塚とおる/田鍋謙一郎/陳昭榮/Samat Sangsangium/田中健/高嶋政伸/田村淳(ロンドンブーツ1号2号)/神木隆之介/遠藤賢司/研ナオコ/北村総一朗/石橋蓮司/中村嘉葎雄/黒木瞳
  • 【監督】堤幸彦
  • 【原作】浦沢直樹「20世紀少年」「21世紀少年」
  • 【企画】長崎尚志(スタジオピー)
  • 【製作指揮】宮崎洋
  • 【製作】堀越徹/亀井修/島谷能成/平井文宏/西垣慎一郎/島本雄二/大橋善光/和田倉和利/長坂信人/板橋徹
  • 【エグゼクティブプロデューサー】奥田誠治
  • 【脚本】長崎尚志/浦沢直樹
  • 【脚本協力】渡辺雄介
  • 【プロデューサー】飯沼伸之/甘木モリオ/市山竜次
  • 【Coプロデューサー】大村信
  • 【音楽監督】白井良明
  • 【音楽】白井良明/長谷部徹/AudioHighs/浦沢直樹
  • 【セカンドユニット監督】木村ひさし
  • 【撮影】唐沢悟
  • 【美術】相馬直樹
  • 【照明】木村明生
  • 【録音】鴇田満男
  • 【編集】伊藤伸行
  • 【スクリプター】吉田久美子/奥平綾子
  • 【VFXスーパーバイザー】野崎宏二
  • 【音響効果】北田雅也
  • 【現場編集】似内千晶
  • 【Bカメ】山田洋和
  • 【VE】吉岡辰沖
  • 【装飾】茂木豊
  • 【キャスティング】オガワシンジ
  • 【助監督】白石達也
  • 【制作担当】吉崎秀一/松村龍一
  • 【ラインプロデューサー】鶴賀谷公彦
  • 【制作プロダクション】株式会社シネバザール/株式会社オフィスクレッシェンド
  • 【配給】東宝
  • 【日本公開】2009年
  • 【製作年】2009年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】155分

他のブログの批評・感想・レビュー - Reactions

コメント (8)

はじめまして。

ブログ村でTBしている時にお見かけしましたので、寄らせていただきました。

こちらのブログにも、今TBさせていただきました。

ワタシもたしかに原作とは違う設定とか展開が多かったと思いました。
時間のこともあり、また映画しか知らない人用に「わかりやすく」したんでしょうネ。
カンナに関しては第二章から設定が違うし、今回いちばんびっくりしたのはヨシツネ。。。!

訴えたいテーマは、映画の方がもしかしたら伝わりやすかったかもしれませんが、コミックのファンの人間にはちょっと、物足りない部分が多かったかも知れませんネ。

>マナサビイさん
コメントありがとう。
自分は原作を読んでいないので、原作との比較はできないんですが、映画としての落としどころは悪くなかったように思います。
ただ、いろんなキャラクターを登場させようとして、ひとりひとりのキャラクターに対する掘り下げがあまりにも足りなかった。
時間的に限られてしまう映画用には、もっともっと脚本段階での整理が必要だったんじゃないでしょうか。

こんにちは^^

私は原作未読なのですが、スラスラと謎解きが
進んだおかげもあって三部作の中では一番
良かった最終章でした。
確かに、登場人物の真理など脳内補填しないと
満足出来ない部分は多い作品だったかも。

>「ワクチンを開発できました」(現在完了形)ってだけのために登場し、そのままフェードアウトするキリコ

ははは。。。私もそれ思いましたわ~!
あれだけの出番?
最後には絶対に母子の対面があると思ってたのに^^;

同じく神木くんの透明感のある存在感には
何だか癒されてしまいましたわ。
ステキな役者さんに成長されていますね。

>くうさん
自分も原作未読なんですけど、「わかりやすさ」という意味ではこれだけ壮大な話をよくまとめてましたよね。
第二章が迷走って感じだったんでどうなることかと心配してたんですが、ちゃんと“完結”してくれました。
神木くんには、してやられたなぁ。彼の名演で作品に対する印象がかなり好転しました。

共感できますね~。
ほんと見てる人を馬鹿にしているというか・・・
都合よく脇役登場させて脚色するだけなら素人でもストーリーできるんじゃないかって思いました。
ほんと、最後の10分ありきですよね。
一章の後にくっつけて完結してもらいたかった・・・

>akatukiさん
第一章はまだ良かったんですけどねぇ…。
このスケールの話を一本にしたらますますわけわかんない映画になりそう(笑)

こんばんは。
昨日、観てきました。長いわりにはちょっと物足りない映画でした。
原作と友達の正体が違います。ということは、カンナの父親が違う
ってことなんですね~。観ていた時は地味な変更だと思ったけど
よくよく考えると大胆な変更でした。
それにウイルスの潜伏期間は12時間と言っていたわりには、
ウイルスに感染したら者の数秒で死んでましたよね。

>よしなさん
ちょっと長かったですねぇ。
ウイルスの件は僕も思いました。
ああいうところで、しょせんマンガかと思ってしまいます。

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック (15)

この記事のトラックバックURL: ※承認制
http://www.typepad.com/services/trackback/6a0128762d7a9d970c0128762d89bc970c

この記事へのトラックバック一覧: 【映画評】20世紀少年〈最終章〉ぼくらの旗:

» 20世紀少年 最終章 ぼくらの旗 (青いblog)
あらすじ 世界大統領」となった“ともだち”が、世界を支配する“ともだち歴3年”(西暦2017年)。殺人ウイルスが蔓延した東京はそ... [続きを読む]

» 20世紀少年 最終章 ぼくらの旗 (映画、言いたい放題!)
原作漫画は未見です。 でもこの映画のシリーズは全部観ました。 “ともだち歴3年”の2019年、 世界大統領として世界は“ともだち”に支配されていた。 殺人ウイルスがまん延する東京は壁で分断され、 都民の行動は完全に制限されていた。 そんな中、ヨシツネ率いる反政府... [続きを読む]

» ぼくらの旗(136作目)&クイーン2&不毛地帯 (別館ヒガシ日記)
20世紀少年 最終章 ぼくらの旗は劇場で鑑賞したけど 結論は三部作の完結でED後が少し長いけど満足したよ [続きを読む]

» 映画:20世紀少年<最終章>ぼくらの旗 (よしなしごと)
 3部作もいよいよ佳境。遅くなっちゃいましたが20世紀少年<最終章>ぼくらの旗を観てきました。 [続きを読む]

» 『20世紀少年 最終章 -ぼくらの旗-』@吉祥寺東宝 (映画な日々。読書な日々。)
“ともだち歴3年”の2019年、世界は世界大統領として君臨する“ともだち”に支配され、殺人ウイルスがまん延する東京は壁で分断。都民の行動は完全に制限されていた。そんな中、カンナは反政府組織として武装蜂起する一方、“血の大みそか”以降、行方がわからなくなっていた... [続きを読む]

» 20世紀少年lt;最終章gt;ぼくらの旗 (yanajunのイラスト・まんが道)
『20世紀少年lt;最終章gt;ぼくらの旗』は、浦沢直樹さんの長編漫画「20世紀少年」と完結編である「21世紀少年」の2作を、邦画史上初の3部作で実写映画化したうちの最終章です。 先日、劇場に観に行きました。 ●導入部のあらすじと感想 ... [続きを読む]

» 【映画】20世紀少年 最終章 (新!やさぐれ日記)
▼動機 ラストが見たいだけ。 ▼感想 まさか、こんなサイテーな改変をするとは・・・ ▼満足度 ★☆☆☆☆☆☆ ひどすぎ ▼あらすじ “ともだち歴3年”の2019年、世界は世界大統領として君臨する“ともだち”に支配され、殺人ウイルスがまん延する東京は壁で分断。都民の行動は完全に制限されていた。そんな中、カンナ(平愛梨)は反政府組織として武装蜂起する一方、“血の大みそか”以降、行方がわからなくなっていたケンヂ(唐沢寿明)が突然現われる。 ※2017年だと思うんだがYahoo映画が20... [続きを読む]

» 20世紀少年 ぼくらの旗 (to Heart)
もうひとつの 結末。 もうひとりの ともだち。 製作年度 2009年 上映時間 155分 原作 浦沢直樹 脚本 長崎尚志 浦沢直樹 監督 堤幸彦 主題歌 T・レックス 『20th Century Boy』 出演 唐沢寿明/豊川悦司/常盤貴子/香川照之/平愛梨/藤木直人/佐々木蔵之介/佐野史郎/森山未來/木南晴夏/六平直政/中村嘉葎雄/黒木瞳 浦沢直樹によるベストセラーコミックを、邦画史上初の3部作で実写映画化した最終章。 {/book_mov/}“ともだち歴3年”の2017年、世界は... [続きを読む]

» ■20世紀少年最終章-僕らの旗- 〜続き物映画の限界 (AKATUKI DESIGN)
TVで話題の20世紀少年最終章-僕らの旗-を見てきました。 第一章では太鼓判を押した私。 確かに第一章は楽しかったんですけど、二章・三章と引っ張りすぎです! 原作を読んでいない私は純粋に一つの映画として楽しみにしていたかったんですけど・・・ ”ともだち”がいったい誰なのか?というたった一つの謎解きに永遠8時間ぐらい掛けて(期間に関しては1年)繰り広げられる展開に少しうんざり・・・ ファンの方には申し訳ないですが、そんなに熱い目で見に行っているわけじゃないし、限られた上演時間の中でいろいろ感動や... [続きを読む]

» 20世紀少年ぼくらの旗 (C note)
ともだち最終章。 <あらすじ> 西暦2017年にあたる<ともだち暦3年>。神とな [続きを読む]

» ★「20世紀少年<最終章> ぼくらの旗」 (★☆ひらりん的映画ブログ☆★)
今週の平日休みの2本目。 いよいよ最終章のシリーズ。 原作とは別のラストシーンを用意してるらしいが・・・ 原作未読のひらりんとしては、どうでもいいけど、 一応「ウィキペディア」で「ともだち」の正体は知っちゃってるので、 それがホントかどうかが楽しみ。。。 ... [続きを読む]

» 20世紀少年<最終章> ぼくらの旗 (だらだら無気力ブログ)
浦沢直樹のベストセラーコミック「20世紀少年」を映画化した3部作の 最終章。世界大統領として君臨するquot;ともだちquot;の独裁に対し、反政府組織を 立ち上げたカンナと秘密基地のメンバーたちが、立ち向かう様を描く。 quot;ともだちquot;の正体と..... [続きを読む]

» 20世紀少年<最終章>ぼくらの旗見てきた【ネタバレあり】 (西麻布でランチとか東京散歩とか。)
有楽町のTOHOシネマズ日劇で20世紀少年<最終章>ぼくらの旗を見てきました。 ネタバレありの感想をレビューします。 [続きを読む]

» 【20世紀少年〈最終章〉ぼくらの旗】僕が20世紀少年なんだよ (映画@見取り八段)
20世紀少年〈最終章〉ぼくらの旗 監督:  堤幸彦 出演: 唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子、香川照之、平愛梨       公開: 2009年8月... [続きを読む]

» 20世紀少年<最終章>ぼくらの旗 (勝手に映画評)
『20世紀少年』の最終第三部。ともだちが誰か?と言う謎が解き明かされます。また、ケンジの生死も明らかになります。 ここまでの2作と違い、これまでの謎の解き明かし、ここから先起こる事の説明、逆に説明の無い状況変化と結末に持っていく気満々のストーリーです。結末を描かなくてはならないのである程度仕方ないのかもしれませんが、ちょっと退屈なストーリーに感じます。もう少し盛り上がりがあっても良かったかも。時間も155分と少し長いしね。また、突っ込みどころは満載です。でも、それには触れないことにしましょう。 ... [続きを読む]

このページについて - About This Page

  •  『未完の映画評』は、映像業界で働く現役現場製作スタッフかみぃによる個人的な映画サイトです。
     “自戒としての映画批評”と銘打ち、映画館まで足を運んで観た劇場公開最新作の批評・感想・レビューをメインに、リアルタイムに進行する製作日誌、映画にとどまらない業界全般にまつわる雑談・裏話なども掲載しています。
     詳しくはこのサイトについてをご覧ください。

最近のコメント - Comments

2012年度 満足度評価 - Rating 2012

  • 2011年12月11日(日)~ 公開作品
  • ★★★★★ ≒ 溺愛
  • ★★★★☆ ≒ 秀逸
    | 最強のふたり | おおかみこどもの雨と雪 | アーティスト |
  • ★★★★ ≒ 満悦
    | 崖っぷちの男 | 捜査官X |
  • ★★★☆ ≒ 良好
    | 映画 ひみつのアッコちゃん | HOME 愛しの座敷わらし | バトルシップ | ドラゴン・タトゥーの女 |
  • ★★★ ≒ なかなか
    | トータル・リコール | 幸せへのキセキ | テルマエ・ロマエ | ももへの手紙 |
  • ★★☆ ≒ まあまあ
    | アベンジャーズ | ダークナイト ライジング | BRAVE HEARTS 海猿 | 臨場 劇場版 | 外事警察~その男に騙されるな | ブライズメイズ~史上最悪のウェディングプラン | ライアーゲーム-再生- | はやぶさ 遙かなる帰還 |
  • ★★ ≒ いまいち
    | エイトレンジャー | Another アナザー | ヘルタースケルター | ダーク・シャドウ |
  • ★☆ ≒ つまらん
    | Black&White/ブラック&ホワイト |
  • ★ ≒ ダメダメ
    | プロメテウス | 幸せの教室 |
  • ☆ ≒ ふざけんな
    |

最近のつぶやき - Twitter