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2009年9 月 6日 (日曜日)

【映画評】女の子ものがたり (2009)

スランプ中の女流漫画家が、かけがえのない友だちとの思い出によって再生していく、ほろ苦い青春グラフィティ。

【満足度:★★★★★】 (鑑賞日:2009/09/04)

 女の子映画にめっぽう弱い筆者としては密かに期待していた本作。見事に期待に応えてくれました。
 つい先頃『いけちゃんとぼく』も公開されたばかりの人気漫画家・西原理恵子の自叙伝的漫画の映画化。
 『問題のない私たち』(2004年)、『子猫の涙』(2008年)などを手掛けた実力派・森岡利行監督のもと、女の子版『スタンド・バイ・ミー』(1986年、ロブ・ライナー監督)を目指したというこの映画は、タイトルに偽りなしのまさに『女の子ものがたり』。

 スランプに陥って自暴自棄ぎみの漫画家・高原菜都美(深津絵里)、36歳、独身。
 出版社から新たな担当者として派遣された新人編集者・財前静生(福士誠治)も、まるで漫画を描こうとしない菜都美にお手上げ状態。
 マイペースな菜都美に振り回されっぱなしの財前は、思わずキツイ一言を投げかける。「先生、友だちいないでしょう?」と…。

 仕事にも人生にも行き詰まった感アリアリの女性が子供の頃を回顧。少女時代の成長物語の末に現在の自分も自信を取り戻すという、プロット的にはありがちな再生ストーリーと言っていい。
 始まったあたりは、ちょい滑り気味のゆるい笑いにどうなることかとヒヤヒヤさせられもしたが、現在、小学生時代、高校生時代、それぞれの年代を演じるキャスト陣が皆芸達者な演技派の上、演出的にもしっかりと表情を見せる腰の据わった正攻法で、いつしかどっぷりと作品世界に引き込まれていた。

 作品とは直接関係ないが、菜都美の自宅兼仕事場となっている日本家屋がよく知っているハウススタジオだった上に、担当の美術さんもよく存じ上げている方だったので、「あの家の間取りをこんな風に変えるのかぁ」と感心してみたり、以前仕事をしたことのある森迫永依ちゃんの成長ぶりにも、「大人びてきたなぁ」と感慨しきりの導入部。

 まず驚かされたのは、ポスターや宣伝スチールのポップな色彩からは想像つかない、意外なほどヘビーな内容。
 過去の主人公たち女の子三人組は外見こそ可愛らしいのに、それぞれの家庭はろくにお風呂に入れないほど貧乏だったり、すぐに親からぶたれたり、父親が出て行ったり、と、なにやら問題もいっぱい。それでも、というか、そんな境遇だからこそ、ほったらかしの少女たちは自由奔放に野山や海岸を駆け回り、大人の世界に憧れ、いつか手にするであろうシアワセを夢見る。
 その瑞々しいいじらしさと美しい四国の自然に郷愁を感じながら、深津絵里演じる現在の菜都美同様、己の幼少期に思いをはせる自分がいる。

 また、いい歳をした自分としては、現在の菜都美にも共感せずにおれない。
 幼い頃に思い描いた未来より現実の社会はずっと厳しくて、自分で選んだ道のはずなのに、ちょっと先すら見えなくなって立ち往生してしまう。
 そんな菜都美にも自分を重ね合わせ、己のことのように身につまされる。

 回想シーンでは男の子顔負けのやんちゃな女の子たちの日常的なエピソードが紡がれていく。
 彩度の高いパステルカラーな色調で統一されたこの映画から受ける見た目の印象は、実にファンタスティックなものだ。
 が、それは少女たちの物語を寓話的に描くというより、苦々しい境遇をはねのける少女らの明るい心象風景として映った。
 自分は男だが、自分なりの懐かしい光景を思い浮かべ、彼女たちのわんぱくぶりを子供時代のリアルな描写として受け止めながら、と同時に、あの頃は子供なりの“明るい未来”を想像していたよなぁ、と、そんなノスタルジーな気分に浸った。

 女の子三人組の衣装や、自転車、カバンなどの小道具のイメージカラーが時代をまたいでもそれぞれの個性として統一されていて、さらにそれは三者三様に延びる人生の“道”を暗示する。
 小学生時代、自らの強い意志できみこ(三吉彩花)、みさ(佐藤初)を友だちに選んだなつみ(森迫永依)。
 やがて、自分よりも早く大人になっていくきみこ(波瑠)、みさ(高山侑子)の生き方に憤りを覚えるなつみ(大後寿々花)。
 いつも一緒に歩んできたはずの三人の“道”が、ついにそれぞれの方向に向かい始める“泥まみれの決別の時”。
 「ここじゃないどこか」へと続く道を選べずにいたなつみの背中を押す、優しさに満ちた“友だち”の強い言葉に落涙。

 そのクライマックス以降、映画は矢継ぎ早の涙腺攻撃を仕掛ける。
 深津絵里の演じる現在パートは原作にない映画版オリジナルらしいが、それゆえにより映画的な終幕へ向け、用意周到に仕組まれた伏線が次々と回収されていく。
 こと、「なっちゃん」にはしてやられた。これはずるいとまで思った。
 バラバラの道に進んだ友だちから届いた溢れんばかりの想いが、再び菜都美を後押しする。

 菜都美の静かな決意で映画は幕を閉じるが、そこはゴールではない。
 ウサギ追いし“シアワセの道”は、今もどんどん延びてるんだから。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】深津絵里/大後寿々花/福士誠治/波瑠/高山侑子/森迫永依/三吉彩花/佐藤初/大東俊介/佐野和真/賀来賢人/落合恭子/黒沢あすか/上島竜兵/西原理恵子/江野沢愛美/馬場有加/森岡里世/原翔太郎/菊池力斗/伊藤龍弥/夛留見啓助/加藤優磨/安間里恵/山口小夜/長谷川芳明/奈良吉輝/梅原梨江/酒井健太郎/柴田明良/森田亜紀/佐藤仁/田口功輝/浜谷康幸/重松隆志/中原和宏/古和咲紀/宮武美桜/宮武祭/網谷えみこ/網谷さとこ/板尾創路/奥貫薫/風吹ジュン
  • 【監督/脚本】森岡利行
  • 【企画】樫野孝人/千葉龍平
  • 【製作】堀健一郎/松橋真三/尾越浩文/川﨑代治/常田輝雄/喜多埜裕明/永井秀之
  • 【原作】西原理恵子「女の子ものがたり」
  • 【プロデューサー】西口典子/菅野和佳奈
  • 【ラインプロデューサー】平体雄二
  • 【撮影】清久素延
  • 【照明】横道将昭
  • 【録音】矢野正人
  • 【美術】山下修侍
  • 【衣裳】安野ともこ
  • 【ヘアメイク】mi-co
  • 【監督補】松永洋一
  • 【制作担当】宮田幸太郎
  • 【スクリプター】中西桃子
  • 【編集】菊井貴繁
  • 【音楽プロデューサー】御園雅也
  • 【音楽】おおはた雄一
  • 【主題歌】「タオ」持田香織と原田郁子とおおはた雄一
  • 【製作】「女の子ものがたり」製作委員会(エイベックス・エンタテインメント/STUDIO SWAN(IMJ-E)/ポニーキャニオン/メモリーテック/毎日新聞社/Yahoo!JAPAN/NAS)
  • 【制作プロダクション】STUDIO SWAN(IMJ-E)
  • 【プロダクション協力】スタジオブルー
  • 【配給】IMJエンタテインメント/エイベックス・エンタテインメント
  • 【日本公開】2009年
  • 【製作年】2009年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】110分

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