【映画評】サマーウォーズ (2009)
ネットの仮想世界に端を発する世界の危機に信州の戦国武将の末裔一族が戦いを挑む、アニメ版『時をかける少女』の細田守監督最新作。
個人的にも溺愛する傑作青春アニメ『時をかける少女』(2006年)の細田守監督の最新作ということで期待していたんだが、これはちょっと…。
都内の高校に通う高校2年生の小磯健二(声:神木隆之介)は数学オリンピックの日本代表を惜しくも逃すほどの数学が得意な天才少年。
何の予定もない夏休み、健二は親友の佐久間敬(声:横川貴大)と共に、仮想世界OZ(オズ)の保守点検のアルバイトにいそしんでいた。
そんなある日、先輩・篠原夏希(声:桜庭ななみ)からアルバイトとして田舎のおばあちゃんの家での手伝いを頼まれる。
憧れの先輩の頼みに意気揚々とする健二は、夏希と共に彼女の故郷・長野県上田市へ。しかし夏希の満90歳になる曾祖母・陣内栄(声:富司純子)の誕生日会の手伝いと聞いていたそのアルバイトは、数日の間、集まってくる親戚たちの前で夏希の婚約者のフリをすることだった。
戸惑いつつも今さら引き返せない健二。その夜、健二の携帯電話に暗号のような謎のメールが。根っからの数学好きの健二は、その暗号を解いてみせる。
翌朝、テレビニュースでは仮想世界OZがハッキングされトラブルを起こしていることを伝えていた。その犯人として手配されている健二の写真と共に…。
作品の概要を知ったときからうっすらと懸念していた不安が的中してしまった。
出来が悪いのかと訊ねられたら「いや、素晴らしい」と答えるし、つまらないのかと訊ねられれば、「いや、面白い」と答えよう。そういう意味では満足度の高い快作に仕上がってる。
でも、好きかと訊ねられたら、「うーん、嫌いじゃないけど」という歯切れの悪い答え方しかできない。
本家の屋敷に大家族が一堂に会する様は田舎育ちの自分にも懐かしい風情だし、近未来を見越したネット上の仮想世界OZにも抵抗はない。
そういった世界観は素直に受け入れられるんだが、ご都合主義がつきまとう物語の組み立てに、どうも冷めてしまう。
映画の冒頭からして主人公も憧れる校内のヒロイン的存在の先輩からフィアンセ役を頼まれて田舎へ旅行という、男子の妄想全開のベタな話。
まあそれは物語の導入だから、それありきの映画と割り切るにしても、二人が訪れた先の親戚一族がねえ。
一族が力を合わせて世界の危機を救うというプロットから予想されたとおり、ドラマツルギー的に“必要とされる人材”を逆算して、親戚として配置される。
OZ内で腕をふるう格闘ゲームチャンピオンとか、スーパーコンピューターを用意できる電気屋さんとか、はては国防情報を盗み聞きできる自衛隊員までそこに配置されているわけで。
監督のやりたいことがわからないわけじゃない。
普段はバラバラの生活を送っている人々が、いざ一大事が起こったときにはそれを乗り越えるべく一致団結して、それぞれの得意分野で力を発揮する様を見せたかったんだろう。
そういうコミュニティの象徴としての“親族”ではあるが、この映画が血のつながりにこだわっているわけでないことは、クライマックスの展開ではっきり提示される。それは今、そしてこれからのネット社会でのコミュニティのあり方を示唆するものだ。
しかし、その提示のタイミングも少々遅すぎた。
追い詰められるまで引っ張ってから、一気に拡がる“つながり”の逆転劇によって感動を誘うという計算が裏目に出て、実質的にそこに至るまでの物語ではやけにこぢんまりした身内内の話に終始してしまった。
テーマとして“つながり”を見せたいなら、血縁というつながりはもっと早くに取っぱらうべきだったように思う。血縁にこだわらず、展開の中で、最初は見えなかった“つながり”へと拡げていくべきだった。
身内内で手に負えなくなったら、隣近所が助け合う地域コミュニティがあるじゃない。例えば電気屋さんなんてそこで初めて登場すればいいわけで。
おおらかな田舎を舞台にしながら、そういう“地縁”コミュニティを完全に無視していることにも違和感を感じた。
“つながり”とは言い換えれば世界の広がりだ。
しかしこの映画は親戚・家族という枠に囚われすぎて、ものすごく狭い世界しか描いていない。
作品から漂う閉塞感とご都合主義。
その行き着く先の映画のオチが、「まあ勝手にやってよ」なハッピーエンドになるのは当然の帰結だろう。
作品データ - Film Data
- 【キャスト(声の出演)】神木隆之介/桜庭ななみ/谷村美月/横川貴大/信澤三恵子/佐々木睦/小林隆/田中要次/谷川清美/中村橋弥/玉川紗己子/山像かおり/桐本琢也/板倉光隆/田村たがめ/金沢映子/高久ちぐさ/清水優/安達直人/仲里依紗/諸星すみれ/今井悠貴/太田力斗/皆川陽菜乃/斎藤歩/永井一郎/中村正/富司純子
- 【監督】細田守
- 【製作】堀越徹/丸太順悟/井上伸一郎/阿佐美弘恭/上木則安/西垣慎一郎/平井文宏
- 【企画】丸山正雄
- 【エグゼクティブプロデューサー】奥田誠治
- 【プロデューサー】高橋望/伊藤卓哉/渡邊隆史/齋藤優一郎
- 【原作】細田守/マッドハウス/日本テレビ放送網/角川書店
- 【脚本】奥寺佐渡子
- 【音楽】松本晃彦
- 【主題歌】「僕らの夏の夢」 [作詞/作曲/編曲/歌]山下達郎
- 【編集】西山茂
- 【撮影】増元由紀大
- 【録音】小原吉男
- 【音響効果】今野康之
- 【美術】武重洋二
- 【CGディレクター】堀部亮
- 【色彩設計】鎌田千賀子
- 【キャラクターデザイン】貞本義行
- 【OZキャラクターデザイン】岡崎能士/岡崎みな/浜田勝
- 【OZ美術デザイン】上條安里
- 【作画監督】青山浩行/藤しげる/濱田邦彦/尾崎和孝
- 【アクション作画監督】西田達三
- 【製作】「サマーウォーズ」製作委員会(日本テレビ放送網/マッドハウス/角川書店/D.N.ドリームパートナーズ/ワーナー・ブラザース映画/読売テレビ放送/バップ)
- 【アニメーション制作】マッドハウス
- 【配給】ワーナー・ブラザース映画
- 【日本公開】2009年
- 【製作年】2009年
- 【製作国】日本
- 【上映時間】114分
- 【公式サイト】http://s-wars.jp/
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こんにちは~♪
この映画はとても評判が良かったですし、時かけが大好きなので期待して観たのですが、、、イマイチのれずに所謂少数派な感想を持ちました~
かみぃさんもそうだったようですね(笑)
>親戚・家族という枠に囚われすぎて、ものすごく狭い世界しか描いていない。
作品から漂う閉塞感とご都合主義
そうなんですよね~私はOZの世界にも少々違和感を持ちましたが(汗)、乗り切れなかった原因はそれにあると思いますぅ~
面白かったんだけど、終わった時に「はい、はい、良かったですね~」的な気持ちしか湧いてきませんでした(汗)
投稿情報: 由香 | 2009年9 月26日 (土曜日) 10:49
>由香さん
コメントありがとう。
上手に盛り上げているという意味では満点あげてもいいくらいの出来なんだけど、ちょっと小さくまとまりすぎた気がしますね。
時かけの時は、そのこぢんまりさも効果的だったんですが。
投稿情報: かみぃ@管理人 | 2009年9 月28日 (月曜日) 23:26