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2009年9 月24日 (木曜日)

【映画評】おと・な・り (2009)

人生の分岐点にさしかかった30歳の男女が、壁一枚隔てた“おとなりさん”と、“音”を通じて心を通わすハートウォーミングなラブストーリー。

【満足度:★★★★】 (鑑賞日:2009/05/30)

 岡田准一&麻生久美子主演で30歳の夢と恋模様を描く、大人のファンタジーといった趣のラブストーリー。
 監督は『虹の女神 Rainbow Song』(2006年)の熊澤尚人。

 風景写真を撮りたいという思いを抱えるカメラマンの野島聡(岡田准一)は、モデル相手の仕事ばかりなことにプロとしての迷いを感じている30歳・独身・彼女無し。
 一方、彼の住む古アパートの隣人・登川七緒(麻生久美子)は、フラワーデザイナーになる夢を叶えるため、花屋でアルバイトをしながらフランス留学に備えたフランス語の勉強に余念がない30歳・独身・彼氏無し。
 お互いの部屋の物音が聞こえるくらい薄い壁を隔てて生活する二人は、漠然とした気まずさから互いに顔を合わせないようにしていた。
 そんなある日、聡の親友であり、聡がプロカメラマンとして認められるきっかけを作った人気モデル・シンゴ(池内博之)の恋人・上田茜(谷村美月)が聡の部屋に転がり込んできて…。

 恋愛ものとはいえ、30歳の男女を主人公に据えているにしては、ちょっと甘ったるい内容という気がしないでもない。

 七緒がコンビニのアルバイト店員・氷室肇(岡田義徳)から言い寄られてその気になるくだりにも、ちょっと現実味がないんじゃないか、と怪訝な気持ちで観ていた。
 内心、「このぐらいの歳になれば、もうちょっとシビアに男を見るんじゃないの?コンビニのアルバイトでいいのかね?」と。
 まあ、七緒自身、30歳にして夢追い人だから、そういう脇の甘さも相応なのか、などと考えていたら、案の定な展開に苦笑。

 甘さもこの映画の持ち味なんだと気持ちを切り替え観続けると、後半はさらに輪を掛けた大甘な展開に失笑。
 その巡り合わせに、この映画は少女マンガな世界観なんだと今さら気付かされた。

 正直なところ、人生の岐路に立つ大の大人が主人公の話なら、苦みを含んだもうちょっと現実味のある話の方が好み。
 なんだけど、最後の最後で見せた七緒の美しさに、なんとなく作品全体を包む過剰気味の甘さも許せてしまった。これはこれでいいじゃない、良くできた大人のファンタジーだなと。

 その七緒を演じた麻生久美子、聡役の岡田准一ともに、自然体の演技で、迷える30歳を好演。
 脇を固める俳優さんたちも、それぞれの役にはまったいいキャスティング。
 とりわけ、なにかと波風を起こす茜役の谷村美月が吹っ切れてて面白い。秒針の音に耳を傾けるようなゆったりと進むこの映画の中で、いいアクセントになった。

 夢の実現や運命の出会いを信じさせてくれる、心地いい佳作。
 ただ、エンドロール中の“セリフ”はいらなかったかなぁ。
 この作品の肝である“音”で幸福感を伝えようっていう狙いは汲むが、言葉がちょっと直接的すぎた。物音だけで察する方が、この映画にはふさわしいと思うんです。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】岡田准一/麻生久美子/谷村美月/岡田義徳/池内博之/市川実日子/郭智博/清水優/新谷真弓/辻萬長/とよた真帆/平田満/森本レオ
  • 【監督】熊澤尚人
  • 【エグゼクティブプロデューサー】藤島ジュリーK.
  • 【プロデューサー】原藤一輝/三木裕明
  • 【脚本】まなべゆきこ
  • 【原案】「A/PART」
  • 【共同プロデューサー】田口聖
  • 【撮影】藤井昌之
  • 【照明】舘野秀樹
  • 【美術】橋本優
  • 【録音】古谷正志
  • 【整音】田上祐二
  • 【音楽】安川午朗
  • 【スタイリスト】宮本まさ江
  • 【ヘアメイク】持丸あかね
  • 【装飾】平井浩一
  • 【キャスティング】田端利江
  • 【助監督】浅利宏
  • 【制作担当】齋藤玉恵
  • 【劇中写真撮影/監修/スチール】本多晃子
  • 【製作/配給】ジェイ・ストーム
  • 【制作プロダクション】三木アトリエ/ビッグエックス
  • 【制作協力】ジャニーズ事務所
  • 【日本公開】2009年
  • 【製作年】2009年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】119分

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