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2009年10 月27日 (火曜日)

【映画評】携帯彼氏 (2009)

恋愛シミュレーション・ゲームのアバター“携帯彼氏”が女の子たちを死に至らしめる、川島海荷主演のラブ・サスペンス。

【満足度:★★★☆】 (鑑賞日:2009/10/25)

 観た理由、川島海荷が可愛かった。
 観た感想、川島海荷が可愛かった。

 サスペンス・ホラーを題材とした異色のケータイ小説として人気の原作を、劇場長編初監督の船曳真珠が映画化。
 注目の新人女優・川島海荷の映画初主演作。

 それは三学期最後の日。高校二年生の上野里美(川島海荷)と小野寺由香(朝倉あき)は携帯電話の恋愛シミュレーションゲーム「携帯彼氏」に夢中で終業式に来なかった親友・長内真由美(中川美樹)の住むマンションを訪れるが、なんと二人の目の前で真由美が投身自殺してしまう。
 里美は知らなかったが、「携帯彼氏」は携帯電話の中に自分好みの彼氏のアバター(キャラクター)を作り、メールやチャットでコミュニケーションをとりながら疑似恋愛を楽しむ、女の子の間で流行っている携帯アプリだ。
 「携帯彼氏に殺される」そう言い残して死んだ真由美の死に疑念を感じた里美と由香は、携帯彼氏とのメールにヒントが残されているはずと睨み、真由美の遺品の携帯電話から真由美の携帯彼氏“リク”(植原卓也)を里美の携帯電話に転送するのだが…。

 歯に衣着せずに言わせてもらえば、これまでアタリのないケータイ小説が原作の映画というだけで期待度大幅ダウン。さらによりにもよって腹立たしいほどにくだらなかった『リアル鬼ごっこ』(2007年)の柴田一成監督(脚本も担当)が本作の脚本を担当(後で知ったがプロデューサーも兼任)している点をよかれと思ってアピールしている宣伝を汲めば華麗にスルーするはずの映画。
 しかし予告編で見た川島海荷嬢のハムスター系小動物みたいなかわいらしい表情に引きつけられて、気がつくと劇場に足が向かっていた。

 結論から先に言うと、意外なほど面白かったんだな、これが。
 まだまだ演技のつたないティーンアイドルが主演で、監督も劇場デビュー作であることを考えればなかなかの健闘。

 まずは美少女アイドル映画としての一番の見所、初々しい女の子たちは、センスのいいファッションも相まって、その一生懸命な熱演ぶりを眺めているだけでもけっこう楽しかったりする。

 カルピスウォーターのCMでも魅力を遺憾なく発揮している川島海荷のかわいらしさは言うに及ばず、彼女以上に身体を張って映画を盛り上げた朝倉あきの奮闘も目を惹く。
 ドラマ的においしいところは主役である川島海荷に持っていかれるが、サスペンス映画としての真の功労者は彼女と言っても過言でない。

 付け加えると、端役ながらその役回り以上の存在感でこの映画を支えたのが女刑事・浅沼美紀役の星野真里。
 この映画の感想を述べるにおいてほとんど取り上げられることはないであろうこの役を、ひょうひょうと演じた彼女の果たした功績は大きい。
 いまひとつ牽引力に欠いた序盤、この映画の醸すただならぬ空気感が、彼女の登場によって決定づけられたと思う。
 キャストとしては二人しか登場しない刑事さんの二番手、つまり文字通り脇役の刑事さんなのだが、なんの裏もないこの女刑事、たたずまいがなんか変なのだ。

 そんなわけで一応ホラー映画的な宣伝がなされている本作だが、目に見える形での残酷描写はほとんど皆無で、記憶が確かなら流血が映ったのも1カットのみ。狙っている客層を考えれば、映倫の年齢制限が付くのはなんとしても避けなければいけなかったのだろう。
 そんな映画だから同じく携帯電話が題材になっていた『着信アリ』(2004年、監督:三池崇史)などと比べるまでもなく、恐怖映画と呼ぶにしては、まったくと言っていいほど怖くない。
 ただこれは、筆者がほどほどホラー慣れしているせいなのか、劇中の女子高生らと同世代と思わしき観客の女の子たちは、上映終了後、「怖かった~。ケータイ開けないよぉ」などと言いながらキャッキャ騒いでいたので、若い観客にはそれなりに怖い映画になっていたらしい。

 自分にとってこの映画の魅力は、いわゆるホラー映画としてより、次々と予期せぬピンチが訪れる追い込まれサスペンスにあった。
 その鍵を握っているのが、ゲームの「携帯彼氏」を巡る様々なルール。
 プレーヤーとアバターとの相性を数値化した“ラブゲージ”が0か100%になると死ぬという基本ルールに加え、アバターを赤外線通信で他の携帯に転送すればラブゲージがいったんリセットされ危機を回避できるというルール、それを利用した人間同士の駆け引きがスリリングであったり、ラブゲージが0になっても死亡フラグが立たない場合があることが途中で判明するなど、脚本上の物語を転がす工夫が最後まで飽きさせない。

 その一方、不気味さを出すことに成功している妙に落ち着かない演出が狙いなのか、下手な演出がカメラマンの手腕のお陰でたまたまいい味を出しているだけなのかわからないところがあって、監督としての力量の判断は次回作に持ち越しといったところ。

 例えばオープニングの里美と由香の歩きながらの会話シーンからしてちょっと普通じゃない。
 最初これは、セリフの滑舌が悪いせいの違和感なのかと思っていたのだが、後でパンフレットを読むと、撮影現場での芝居のテンポを優先してオールアフレコで撮影したんだそうな。
 なるほどセリフの不自然さはそれで合点がいった。後日のアフレコで撮影現場での口調にきっちり合わせろなんて、ただでさえ未熟な若手女優たちには、そりゃハードルが高すぎる。
 でもそういった微妙な違和感が結果的に作品全体の不気味さにつながっている気がしないでもない。そこまで計算してそういう演出手段を選んだのなら大したものだ。

 まあ、実際のところは「芝居のテンポを優先して」なんていうのはたいてい現場サイドの詭弁で、単に撮影現場に録音部さんを呼べない予算的な台所事情があったんだと思うけれどね。
 里美は意味もなく母子家庭な上、由香の両親もずっと旅行中で留守だったり、事件を追う刑事さんも二人だけだったりと、この映画が超低予算なのは、ギリギリまで削ったキャスティングにも現れているし。

 低予算ゆえCGも最小限しか使えない悪条件の中、主人公らを襲う姿なき“携帯彼氏”を鏡やガラスに映して存在をわからせる演出には手に汗握るものがあった。
 実体のない存在を鏡に映すという手法自体はよくあるものだが、この映画で唸らされたのは、それをCGに頼らずアナログな方法で撮影している点だ。
 よく見ると解るのだが、カメラ位置と役者の立ち位置を工夫して、あたかもそこにいないはずの姿が鏡に映っているかのように見せ、さらに編集の巧さも加わって臨場感を上げている。
 言うは簡単なことだが、その実、現場的には相当な苦労と緊張感があったはず。チラッとでも男優の実体がフレームに入ってしまったらNGなのだから。
 その緊張感がちゃんと芝居の緊迫感に昇華されている点も評価していいだろう。

 ところで、露骨ないやらしさこそ上手にオブラートに包んでいるが、携帯彼氏との会話にエッチネタが盛り込んであるとか、事件の真相にレイプサークルが絡んでいるとか、そんなところに赤裸々さが売りとなるケータイ小説っぽさを感じる。
 スクリーンに映し出される少女らの姿に隠しきれないフェロモンが滲み出ているのも気のせいではなく、この題材に準じた確信があっての演出だろう。

 ちょいネタバレになるが、里美がレイプされかけるシーンがある。
 すぐに実は夢でしたというオチがつくのだが、映像的な緊張感を狙ったこのシーンも、夢で良かったと安堵する一方、よくよく考えれば、年頃の女の子のそんな夢って、性に対する淫らな妄想の裏返しじゃね?と思い至るのだ。
 それと気付くと、目覚めた里美のとまどいの表情も意味深なものになる。演じる川島海荷がそこまで考えた芝居をしているとは思わないが、監督の仕組んだ巧妙な裏設定という気がしないでもない。

 深読みというか、ひねくれた見方をすれば、この映画自体が疑似恋愛ゲームをモチーフにした壮大な妄想恋愛映画の様相を成しており、観客の期待を裏切らない大団円は理想の恋愛像の終着点に他ならない。
 里美の回想として何度も挿入される、順調に愛を育む過程もまた美しい恋愛像の具現化であろう。
 ならば、それに対比して描かれる疑似恋愛の末に襲われる少女たちの悲劇もまた、ある種の妄想の具現化と言えまいか。
 思春期の少女たちの置かれた立場を現しているかのように、美しい恋愛は常に回想という形で描かれ、悲劇の方が現在のリアルとして描かれる点も興味深い。

 善良な恋愛青春映画としてのこの映画は、疑似恋愛から卒業し、本当の恋愛をしようよ、とのメッセージを唱えて締められる。
 表面上は正論以外の何ものでもないこのメッセージも、妄想からの解放を願う同世代の少女たちには、より深い共感を呼ぶのではなかろうか。

 まあ、こういう視点もまた妄想でしかないんだけれどね。

携帯彼氏
(C) 2009「携帯彼氏」フィルム・パートナーズ

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】川島海荷/朝倉あき/石黒英雄/落合扶樹/桑江咲菜/前田希美/植原卓也/橋本淳/白神美央/岡田光/安井レイ/久松郁実/篠原愛実/中川美樹/相沢まき/渡辺大輔/大西結花/星野真里/小木茂光
  • 【監督】船曳真珠
  • 【原作】kagen
  • 【脚本】柴田一成
  • 【製作】原田健/谷井玲/内田康史/川村英己/荻野善之/藪考樹
  • 【企画】近藤良英
  • 【プロデューサー】川端基夫/柴田一成/柳原祥広
  • 【共同プロデューサー】草野亜紀夫
  • 【音楽】長蔦寛幸
  • 【撮影】橋本彩子
  • 【照明】山本浩資
  • 【美術】三ツ松けい子
  • 【VFXディレクター】佐々木一樹
  • 【編集】正木良典
  • 【助監督】芦塚慎太郎
  • 【キャスティング】松本拓也
  • 【ラインプロデューサー】泉知良
  • 【主題歌】「LφST[ロスト]-「携帯彼氏」movie version-」弓木英梨乃
  • 【VFXプロダクション】GONZO/シネグリーオ
  • 【衣装監修】Hana*chu→
  • 【特別協力】魔法の図書館/サイバークローン
  • 【制作プロダクション】GONZO
  • 【製作】「携帯彼氏」フィルム・パートナーズ(ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント/魔法のiらんど/GONZO/アークエンタテインメント/主婦の友社/EMIミュージック・ジャパン/モブキャスト)
  • 【共同配給】GONZO/シナジー
  • 【日本公開】2009年
  • 【製作年】2009年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】102分

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