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2009年10 月 8日 (木曜日)

【映画評】のんちゃんのり弁 (2009)

ダメな亭主に三下り半を突きつけ、弁当屋さん開業で自立しようとするシングルマザーの奮闘記。

【満足度:★★★】 (鑑賞日:2009/10/04)

 31歳、子持ちの女性がうだつの上がらない夫を捨てて、経済的にも独立すべく弁当屋を開業しようと奮闘する下町人情ドラマ。
 良質の海苔が敷き詰められた、これぞのり弁。でも、おかずは?

 永井小巻(小西真奈美)は、口ばっかりでいつもうちでゴロゴロしている自称小説家のダメ亭主・範朋(岡田義徳)を捨て、一人娘の“のんちゃん”こと、乃里子(佐々木りお)を連れて家を飛び出す。
 京島にある母・フミヨ(倍賞美津子)の住む実家に出戻った小巻は、幼なじみの玉川麗華(山口紗弥加)の務める幼稚園にのんちゃんを入園させると、生活費を稼いで自立するべく、いろんな会社の採用面接に挑むが、世間知らずでキャリアも資格もない小巻を雇ってくれるところなどありはしなかった。
 今も地元に住む未だ独身の同級生の写真屋・川口建夫(村上淳)とも再会し、麗華と一緒に昔話に花を咲かせる小巻だったが、その内心、仕事が見つからず、範朋にもしつこくつきまとわれて、途方に暮れていた。
 そんな折、のんちゃんの通う幼稚園で、小巻の作ったのり弁が評判となり、なにも取り柄がないと思われた小巻に一筋の光明が差すのだが…。

 どこで勘違いしたのか、実際に観るまで、出戻りの小巻が新規開業した弁当屋さんで七転八倒する話かと思いきや、弁当屋さんを開業するまでの奮闘記でした。

 映画としては劇中の小巻が当初の予想通りに社会の壁にぶち当たりながらも頑張るわけですが、まずはそれを演じる小西真奈美がなかなかどうして、予想を上回るかなりのはっちゃけぶりで少々驚いた。
 そういや、小西真奈美のこれまでの演技って印象無いなぁって考えてみたら、そりゃ当然、彼女の出演作、まったく観たことがなかった(汗;
 もちろん彼女のことはだいぶ前から知っていましたけど、なるほど、こんなまともな演技ができるんだ。実は個人的に、観るたびにヒヤヒヤさせられる長谷川京子嬢とイメージがダブっていたのは内緒。このお二人、歳も同い年なのよね。

 閑話休題。
 お話はといいますと、下町人情ドラマとして期待通りの王道で、脇を固める芸達者な役者さんたちの適材適所な好演もあって、安心して観ていられる。
 料理モノの側面もあるけれど、序盤こそ、のり弁のレシピが解説されはするが、そっち方面には深追いしてない。基本的には下町の人情喜劇を愉しむ映画でしょう。

 ただ演出的には平凡な印象で、良く言えば地に足の着いたブレのないまっすぐな演出だが、飛び抜けて感情が揺さぶられるようなこともなかったのが少々もの足りない。
 わかりやすい伏線から最後はそう来るだろうと予想のついていた、いよいよお弁当屋さん開業という初日のお弁当作りで、小巻の見せたある感情も、いまひとつ説得力に欠いた。
 こちらが好意的にいろいろ想像すれば、彼女の心境を推し量れなくもないんだけど、流れ的に唐突な印象がぬぐえなかったの。

 思い立ったら誰も止められない、猪突猛進な小巻の奮闘ぶりは、はたから見てるぶんには女性の自立物語として気持ちいいもんではあるけれど、巻き込まれた周りはたいへん。
 幸い周りの大人たちは、小巻に厳しいことを言いながらも、結局は彼女を理解し、力になってくれる。
 しかし、そんな大人な対応を期待できようはずがない犠牲者もいる。最愛の娘、のんちゃんだ。
 おそらく小巻は、そんなのんちゃんを憂い、あるいは、のんちゃんを通して、自分のわがままは周りの犠牲の上に成り立っていることに思い至ったのだろう。

 そんな風に想像はできるけれど、実際どうなんだろう。
 ここにまできて観る側に疑念が残るようじゃ、感傷的な見せ場も演出家の狙いほどには入り込めないよ。

 付け加えると、建夫くんとの決着も、煙に巻かれた感じで腑に落ちなかった。
 ドラマツルギー的には、こちらを立てればあちらが立たずって作品のテーマに則った落としどころなんだろうけれど、小巻、はたまた建夫くんの選択だったのか、いずれにせよ、そこでの心情的な裏付けはまったく描かれていない気がするんですが。

 前述の通り、緒方監督の目指している方向性にブレはないから、「なにがやりたいんだ」という滅裂なことにはなっていない。そういう意味では、わかりやすい映画なんだけど、どうも監督の頭の中で作品世界ができあがりすぎて、それをうまく伝える配慮に欠けているような印象を受けた。
 言うなれば、おかずの詰まった断面を見せないで、表面の海苔しか見せてもらえないのり弁のような、そんな感じでした。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】小西真奈美/岡田義徳/村上淳/佐々木りお/山口紗弥加/斉藤暁/絵沢萠子/北見敏之/松尾諭/上田耕一/花原照子/堀部圭亮/鈴木卓爾/田中要次/徳井優/諏訪太朗/岸部一徳/倍賞美津子
  • 【監督】緒方明
  • 【製作総指揮】木下直哉
  • 【製作代表】小柳直人/小池武久/林尚樹
  • 【企画/プロデュース】小出健/齊藤英子
  • 【プロデューサー】武部由実子
  • 【原作】入江喜和『のんちゃんのり弁』
  • 【脚本】鈴木卓爾/緒方明
  • 【音楽】coba
  • 【ラインプロデューサー】岩谷浩
  • 【撮影】笠松則通(JSC)
  • 【照明】石田健司
  • 【録音】横溝正俊
  • 【美術】金勝浩一
  • 【装飾】松田光畝
  • 【編集】矢船陽介
  • 【VFXスーパーバイザー】尾上克郎
  • 【タイトルデザイン】赤松陽構造
  • 【整音】越智美香
  • 【音響効果】齋藤昌利
  • 【スクリプター】杉本友美
  • 【フードスタイリスト】飯島奈美
  • 【スタイリスト】西ゆり子
  • 【ヘアメイク】本田真理子
  • 【助監督】浅利宏
  • 【制作担当】花山康大
  • 【主題歌】『ロデオ』スネオヘアー [作詞/作曲]渡辺健二 [編曲]スネオヘアー
  • 【製作】「のんちゃんのり弁」製作委員会(木下工務店/キングレコード/中部日本放送)
  • 【配給】キノ・フィルムズ
  • 【日本公開】2009年
  • 【製作年】2009年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】107分

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