【映画評】ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない (2009)
ブラック会社に就職してしまった元ニート青年の奮闘記。
匿名掲示板2ちゃんねるに端を発した“お仕事”コメディ。
監督は多くの映画賞をかっさらった『キサラギ』(2007年)の佐藤祐市。
サラリーマンやOLが行き交う有楽町の真ん中、スーツ姿の大和田真男(小池徹平)がアスファルトに倒れ込む。うつろな目で「もう、限界だ」とつぶやく彼は、“ブラック会社”と呼ばれる過酷な職場で働く元ニートのプログラマー、通称「マ男」。
満身創痍で帰宅し、パソコン上に匿名掲示板「Bちゃんねる」を開いたマ男は、新しいスレッドを立てた。そのスレタイは「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」…。
“2ちゃんねる”に立ったスレッドが原作ということくらいしか予備知識もないまま、それほど期待せずに観たんだが、これがなかなか侮れない“アタリ”だった。
シーンの大部分はオフィス内だし、登場人物も最小限。そのキャスティングにしても比較的地味で、いわゆる低予算なお気楽コメディ映画だとは思うんだけど、作りはけっこう真面目。
時間経過を示す、ありがちなオフィス街の夕方の実景に、超望遠で撮影した、ばかでっかい夕陽を持ってくるなど、きっちり絵づくりしてるなぁと感心させられる。
なによりマ男の背景を丁寧に描いた脚本に手抜かりがないことに好感が持てる。
笑いを誘いながらも社会や人生の一面を切り取っていく手際の良さ。
硬派な社会派映画ではないし、リアリティという意味ではマンガっぽい内容だとは思うが、デフォルメされた憎めない曲者上司たちの振る舞いの中にも、どこか「あるある」とニンマリさせられる。
コメディ主体の前半から一転、マ男がいよいよ限界に追い詰められて放つ感情の爆発も、奇をてらわない王道。
こういう映画なら当然こういう落としどころだよね、と安心して観ていられる大詰めの感動的な展開も、意外性は乏しいものの、ちょうどいいあんばいの湯加減で心地いい。
単調な会社内のセット撮影の連続になりがちな内容を、CGをふんだんに使った妄想シーンを挟み込んだり、開放感のある屋上に場面を移したり、と、絵変わりさせる工夫も手慣れたもの。
陰で会社を支える、切れ者の藤田さん(田辺誠一)のミステリアスな存在感が牽引役となり、観客の興味を最後まで飽きさせないのも巧いと思った。
ただ、2ちゃんねるを模した匿名掲示板「Bちゃんねる」は必要なかったなぁ。
一世を風靡した『電車男』(2005年、村上正典監督)と違って、“名無しさん”たちはまったく登場しないし、物語の展開にもまったく影響を与えていなかったもの。
また筆者にとっては総じて好印象の映画だったんだけど、笑いのネタ的に、ツボにはまる客層がかなり限定されちゃう気がしないでもない。
随所にちりばめられたファースト・ガンダムから引用されたセリフや三国志ネタもそうだが、「死亡フラグ」を実写化(!)なんて、どれだけの人が理解できたのだろうかと心配しちゃったわ。
そういう意味では人に薦めるには気兼ねしてしまうが、小気味いい笑いの中に、働くことの意味をあらためて考えさせられる、良質の“拾いモノ”映画でした。
作品データ - Film Data
- 【キャスト】小池徹平/マイコ/池田鉄洋/田中圭/中村靖日/千葉雅子/朝加真由美/須賀貴匡/窪園純一/鳥木元博/浜近高徳/しのへけい子/品川祐/瑠川あつこ/片岡明日香/金井淳郎/Bコース/瀧口友里奈/植松孝行/伊原侑蔵/重久元太郎/東加奈子/李愉未/宮下修司/庄司智春(特別出演)/北見敏之/森本レオ/田辺誠一
- 【監督】佐藤祐市
- 【エグゼクティブプロデューサー】豊島雅郎
- 【プロデューサー】井手陽子 / 稲田秀樹
- 【原作】黒井勇人「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」
- 【脚本】いずみ吉紘
- 【音楽】菅野祐悟
- 【ラインプロデューサー】武石宏登
- 【技術プロデューサー】佐々木宣明
- 【撮影】川村明弘
- 【美術】太田喜久男
- 【映像】高梨剣
- 【照明】阿部慶治
- 【録音】金杉貴史
- 【装飾】櫻井啓介
- 【編集】田口拓也(J.S.E)
- 【スクリプター】水口裕子
- 【サウンドデザイン】藤村義孝
- 【助監督】本間利幸
- 【制作担当】持田一政
- 【主題歌】「ストロベリー」TOKYO MOOD PUNKS [作詞]Elvis Woodstock [作曲]Elvis Woodstock [編曲]TOKYO MOOD PUNKS
- 【製作】ブラック会社限界対策委員会(アスミック・エース エンタテインメント/パルコ/アミューズソフトエンタテインメント/関西テレビ放送/共同テレビジョン/Yahoo! JAPAN)
- 【プロダクション】共同テレビジョン/アスミック・エース エンタテインメント
- 【企画/配給】アスミック・エース エンタテインメント
- 【日本公開】2009年
- 【製作年】2009年
- 【製作国】日本
- 【上映時間】104分
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