【映画評】映画 レイトン教授と永遠の歌姫 THE ETERNAL DIVA (2009)
大人気の推理ゲーム「レイトン教授」シリーズを映画化した、“永遠の命”の謎を巡って繰り広げられる謎解き大冒険。
大ヒット謎解きゲーム「レイトン教授」シリーズ、初の映画化。
単独のアニメ映画としては辛口にならざるを得ないが、ゲームファンは納得の、親子連れの鑑賞にはもってこいの愉しい作品となっているんじゃなかろうか。
イギリスの考古学者・レイトン教授(声:大泉洋)は数多くの不可解な謎を解明してきたロンドン一の謎解き英国紳士。
レイトン教授宛ての手紙を整理していた自称“レイトン教授の一番弟子”ルーク(声:堀北真希)は、レイトン教授のかつての教え子、オペラ歌手のジェニス(声:水樹奈々)からの手紙を見つける。
一年前に病気で亡くなったはずのジェニスの親友・ミリーナ(声:折笠富美子)が、7歳の少女の姿となってジェニスの前に現れたというのだ。自分をミリーナだと言うその女の子(声:諸星すみれ)は、確かにジェニスとミリーナしか知らない秘密を知っている。驚くジェニスに少女ミリーナは言う、自分は“永遠の命”を手に入れたのだと。
レイトン教授の助手・レミ(声:相武紗季)の調べによって、今ロンドンではミリーナと同じような事象が頻発していることが判明する。そして“永遠の命”を巡って謎の組織が暗躍しているらしいことも。
レイトン教授とルークはこの謎を解明すべく、ジェニスがヒロイン役として出演するオペラ『永遠の王国』の行われるクラウン・ペトーネ劇場へ駆けつけた。伝説の不老不死の王国“アンブロシア”を題材としたそのオペラの作者オズロ・ウィスラー(声:家弓家正)こそが、ミリーナの父親なのだ。
かくして、オペラの終演後、突如舞台に現れた仮面の男(声:渡部篤郎)が“永遠の命”を賭けた謎解きゲームの開始を宣言するのだった…。
ゲーム「レイトン教授」シリーズはまったくやったことがなく、この映画もそのゲームの映画化ということしか知らなかった。
ただその予告編に懐かしい『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年、監督:宮崎駿)の雰囲気を感じて鑑賞。
冒頭の時計塔のシーンからもその期待はますます高まった。
厳しく観れば全体的にリアリティに欠くものの、ゲームの映画化としてはそれにふさわしい愉しめる内容と評価したい。
後半に登場するトンデモマシーンの数々も、まあきっとゲームファンなら想定の範囲内だろう。そこをあげつらってどうこう言うつもりはない。
強いて言えば、こういうことが許される世界観であることを序盤で提示してくれた方が一見さんに優しいと思う。
映画ファン的には、(ちょっとマイナーな作品かもだが)19世紀末のイギリスを舞台に2人のマジシャンの確執を描いた『プレステージ』(2006年、監督:クリストファー・ノーラン)で感じたトンデモ感を例に出せばご想像いただけるだろう。
そういう「ゲームの映画化」であることさえ肝に銘じてさえいれば、この世界観を巧くまとめた上出来の脚本だと思う。
劇中の謎解きゲームに出題されるクイズは小粒ながらなかなかひねりが利いていて楽しいし、クライマックスは感動的な展開で、うっかりすると泣かされますぞ。
このクイズ、昔流行った「頭の体操」みたいだと思っていたら、「ナゾ制作協力」として、「頭の体操」シリーズの著者・多湖輝氏がテロップされてた。なるほど納得だわ。
タイトルに“歌姫”とあるように音楽が事件の鍵を握る。
それゆえか劇中に流れる音楽にも気を遣われたようで、全編を包むBGMも作品の内容に合っていてよい感じ。
名のあるタレントを多く配した声優陣も、特段巧いとは思えないものの、雰囲気作りには予想以上に功を奏している。
中でもクールに立ち振る舞うレイトン教授を演じた大泉洋の抑揚の効いた演技はなかなか堂に入っていて、はまり役と言っていい。
おおかた悪くない出来と思う本作だが、野暮を承知で映画としての難点を指摘しておくと、ここでの謎解きゲームには多くの参加者がいるのだが、それぞれのキャラがあまり立っていなくて、あらすじで言及される程度の主要メンバー以外はまるで印象に残らない。
ミステリー作家やサッカー選手といった設定はまったく活かされず、謎解きにもほとんど関わらない傍観者と化して、まさに雑魚キャラ状態なのがもったいない。
また、レイトン教授とジェニスが海岸で交わす会話に謎解明のヒントがあるのに、そこでの演出も淡泊すぎて、伏線の張り方としては弱い。
ここでしっかり印象に残してくれたら、真相がわかったときのカタルシスはより大きいものとなっただろう。
一方で、少女ミリーナが捜査のために潜り込んでいたグロスキー警部(声:大塚芳忠)を海に突き落とすなど、ミスリードのつもりの演出が、よくよく考えるとキャラクター設定を破綻させていると思う。
世界観自体が子供だましと言ってしまっては身も蓋もないのだが、別行動をしていたレミが、レイトン教授らを追って“その島”に難なく来られたことになんの説明もなく、それこそ不可思議。
同じご都合主義でも、捜査過程で地図を手に入れたとかの描写があるだけで、だいぶ印象が違うと思うんだけれども。
好意的に考えれば、ミリーナの過去を調べればたどり着ける場所って気がしないでもないが、その程度でたどり着けるならその島の設定自体に無理がある。
まあ、こういったことは一見さんの粗探しでしかなく、ゲームファンや子どもたちにとっては些細なことのように思う。
クライマックスに次々と明かされる驚きの真相、胸躍るアクション、さらに涙を誘う感動的なエピソードと、この映画がターゲットとする本来の観客なら充分に満足させられるはず。
最後の“別れ”のシーンなんて、子ども向けなどと侮れない味わい深いもので、とくに“その瞬間”の大人な演出には正直驚かされた。ネタバレできないのが口惜しいが、さりげないながらもそんじょそこらの凡作とは一線を画した素晴らしい演出だ。
あ、そうそう、クライマックスもやっぱり「カリオストロの城」でしたな。
そんな点もパクリなどと目くじらを立てるより、オマージュとして好意的に捉えたい。
本格推理モノと言うには遠く及ばないし、探せば粗もいっぱいあるんだけれど、なんとなく気にならずに観られる、気づいても後味のよさに寛容になってしまう、そんな“上手に嘘をついた”愛すべきエンターテイメント映画だと思うのですよ、英国紳士としてはね。
作品データ - Film Data
- 【キャスト(声の出演)】大泉洋/掘北真希/水樹奈々/渡部篤郎/相武紗季/出川哲朗/LiLiCo/河北麻友子/鈴木サチ/河野真也/藤尾仁志/安東弘樹/田中みな実/山寺宏一/家弓家正/納谷六朗/飯塚昭三/大塚芳忠/中田譲治/井上喜久子/折笠富美子/豊口めぐみ/三宅健太/諸星すみれ/稲葉実/斎藤志郎/能登麻美子/杉野博臣/逢坂力/相馬幸人/伝坂勉/中西英樹/酒巻光宏/堂坂晃三/植竹香菜/寺谷美香/原島梢/堀口あすか
- 【監督】橋本昌和
- 【企画・プロデュース・ストーリー原案】日野晃博
- 【原作】レベルファイブ
- 【エグゼクティブプロデューサー】濱名一哉/久保雅一
- 【Co.エグゼクティブプロデューサー】阿部秀司/藤巻直哉
- 【プロデューサー】臼杵照裕/岡田有正/山内章弘/堀川憲司/奧野敏聡/木村信/高瀬一郎
- 【Co.プロデューサー】橋田寿宏/五郎丸弘二/菊池宣広/阿蘇博/細谷まどか
- 【デスク】高平香/須藤萌恵/間取美帆/荻田奈緒/近藤里奈
- 【脚本】松井亜弥
- 【絵コンテ】橋本昌和/増井壮一/西村純二/志村錠児/今石洋之
- 【演出】宮脇千鶴/山本秀世/本郷みつる/志村錠児/高橋ナオヒト/外山草/橋本昌和
- 【ナゾ制作協力】多湖輝
- 【キャラクターデザイン原案/エンディングイラスト】長野拓造
- 【世界観設定原案】鈴木純
- 【キャラクターデザイン】杉光登
- 【デザインワークス】鍋田香代子/前田輪太郎/堀内博之
- 【総作画監督】杉光登
- 【撮影監督】福士享
- 【編集】辺見俊夫
- 【音楽】西浦智仁
- 【音楽監修・編曲】住友紀人
- 【音楽プロデューサー】石田雅己/高樹貴司
- 【永遠の歌姫テーマ音楽】斉藤恒芳
- 【主題歌】「永遠の歌姫」 [歌]ジェニス・カトレーン(CV:水樹奈々) [作詞]日野晃博 [作曲/編曲]斉藤恒芳
- 【製作】Team Leyton(レベルファイブ/TBSテレビ/小学館/東宝/OLM/ジェイアール東日本企画/博報堂DYメディアパートナーズ/小学館集英社プロダクション/ポニーキャニオン/ディーライツ/ROBOT/アミューズソフトエンタテインメント/ピーエーワークス)
- 【制作】ピーエーワークス
- 【配給】東宝
- 【日本公開】2009年
- 【製作年】2009年
- 【製作国】日本
- 【上映時間】99分
- 【公式サイト】http://www.layton-movie.jp/
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突然で申しわけありません。
現在2009年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。
投票締切は1/14(木)まで。
ふるってご参加いただくようよろしくお願いいたします。
なお、twitterも開設しましたので、フォローいただければ最新情報等配信する予定です
http://twitter.com/movieawards_jp
投稿情報: 日本インターネット映画大賞 | 2009年12 月25日 (金曜日) 12:08