【映画評】カールじいさんの空飛ぶ家 [3D] (2009)
愛する妻に先立たれたカールじいさんが、風船で家ごと空に飛び出していく、ハートウォーミングな冒険活劇。
かなり前から話題になっていたし、ハズレなしのディズニー・ピクサーだしってことで、この冬一番の期待作と意気込んで観に行ったんだが、期待はずれどころじゃなくつまらなかった。そりゃもう、びっくりするぐらい。
期待しすぎたのかもしれないけれど、つい最近、世紀の大傑作『マイマイ新子と千年の魔法』(2009年、監督:片渕須直)を観たばかりってのもあるかもしれないけれど、それにしても、なぁ。
冒険好きの少年カール・フレドリクセン(声:ジェレミー・レアリー)は通りがかった空き家で、そこを秘密基地にしているやはり冒険好きのやんちゃ少女エリー(声:エリー・ドクター)と出逢う。
やがて時は経ち、カールとエリーは晴れて結婚。出会いの場であった“秘密基地”を新居とし、幸せな結婚生活を送るのだった。
さらに時は経ち、長年苦楽を共に過ごしたエリーは他界。家の周辺は次々と土地開発が進む中、ひとりぼっちとなった老人カール(声:エド・アズナー)は頑なに立ち退きを拒否していた。
だが、ひょんな事故からカールは強制的に老人ホームに移らなくてはならなくなってしまう。
いよいよ老人ホームの職員が迎えに来たその日、しかしカールは、思い出のいっぱい詰まったその家に無数の風船を付け、あろうことか家ごと空に旅立った。亡きエリーとの果たせなかった約束を叶えるために…。
日本語字幕の3D版で鑑賞。
以降、ネタバレはしていませんが、かなり辛辣な辛口トークが続きます。
この映画を愉しめた方、ディズニー・ピクサーLOVEな方は気分を害する恐れがありますので、続きは読まない方がよろしいかと思います。
ちなみに、他のレビューサイト、感想ブログで筆者ほど辛口に批評しているところは見かけませんでしたので、かなり特殊な感想だと思っていただいてけっこうです。
予告編で散々観た、風船で家ごと空に旅立つまでは良かったのよ。そこまでなら満点をあげていい。
特に、晴れの結婚式からエリーが他界してカールがひとりぼっちになるまでの思い出多き日々を、セリフなしで一気に見せた一連の心温まるシークエンスはお見事としか言いようがない。
なのに、その後の展開が…。
大空を舞台にしたおじいさんの冒険話かと思いきや、それがすぐに裏切られる。
あっという間に地上に降りて、荒野やジャングルに舞台が変わってしまい、思っていたのとだいぶ違う。
いや、いい意味で裏切られるんならそれもありなんだが、そこでのてんやわんやは平凡以下のB級冒険活劇って感じで。
デフォルメされたファミリー向け作品であれば、ある程度のご都合主義は大目に見るんだけど、それにしてもこの作品はそれがちょっと気になるほどに出来すぎ。
翻訳機でしゃべれる犬の登場とか、作り手は面白いつもりなんだろうけど、観ているこっちはちっとも楽しく感じられない。
しかもCGアニメによるその犬たちのビジュアルがやけにリアルで、デフォルメされた人間キャラと比べてバランスが悪く、間抜けで可愛いつもりの姿が、どっちかというと気持ち悪い。
挙げ句に悪玉のボスってのが登場して、なんだかその正体も夢がないというか、やることが生々しいというか。
その後の展開、はい、ここで感動してくださいとばかりに反撃に出るカールじいさん、最初に“それ”が映った時点で予想できた最後のオチにいたるまで、教科書通りの予定調和で意外性にも乏しい。
いやまあ、丁寧に作ってあるとは思うのよ。無難にまとめられているというか、批評家好みのそつのない良作っぽくはある。
そういう意味では、同乗する少年が東洋系らしき黄色人種であるとか、悪玉の正体、反撃のためにカールじいさんがとる行動とかが暗喩的で、裏テーマを探りたい、いわゆる映画ツウが喜びそうな作り。『グラン・トリノ』(2008年、監督:クリント・イーストウッド)とか好きなら合うかも。
個人的にはこういう子どもっぽいファミリー向けアニメで露骨にそんなことされても、って逆に憤ってしまうが。
そもそも致命的につまらないんだもの。がっかり。
あ、あと、たいして立体感もないんで割高な料金払って3D版観る必要ないです。
というか、年に数回しか映画館に足を運ばないような人なら、わざわざこの映画を選ぶ必要もないんじゃないかなぁって思う次第。
とまあ、こんな駄文を最後までお読みいただきありがとうございます。
決して悪意はないんですが、比率的には誉める方が多いにしても、中にはつまらなかったという意見も少なからずあると思ってたんですよ。
ところが、ここまで書いてから初めて他の批評・感想を読んで回ったら、おおむね好評。それどころか、おおかた賞賛されているみたいで、その絶賛ぶりにびっくりしたぐらいでして。
うーん、何が自分と合わなかったんだろう、謎だ。
作品データ - Film Data
- 【キャスト(声の出演)】エド・アズナー/ジョーダン・ナガイ/ボブ・ピーターソン/デルロイド・リンド/ジェローム・ランフト/ジョン・ラッツェンバーガー/エリー・ドクター/ジェレミー・レアリー/クリストファー・プラマー
- 【監督】ピート・ドクター
- 【共同監督】ボブ・ピーターソン
- 【プロデューサー】ジョナス・リヴェラ
- 【製作総指揮】ジョン・ラセター / アンドリュー・スタントン
- 【原案】ピート・ドクター/ボブ・ピーターソン/トム・マッカーシー
- 【脚本】ボブ・ピーターソン/ピート・ドクター
- 【音楽】マイケル・ジアッチーノ
- 【ストーリー・スーパーバイザー】ロニー・デル・カルメン
- 【編集】ケヴィン・ノルティング
- 【プロダクション・デザイナー】リッキー・ニエルヴァ
- 【スーパーバイジング・テクニカル・ディレクター】スティーヴ・メイ
- 【スーパーバイジング・アニメーター】スコット・クラーク
- 【キャラクター・スーパーバイザー】トーマス・ジョーダン
- 【配給】ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン
- 【原題】UP
- 【字幕翻訳】石田泰子
- 【日本公開】2009年
- 【製作年】2009年
- 【製作国】アメリカ
- 【上映時間】103分
- 【公式サイト】http://carl-gsan.jp/
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トラックバックを返すのが大変遅くなったこと、申し訳なく思います。
日々記事の更新をしているとどうしてもその手の作業が後回しになってしまって、、、面目ないです。
かみぃさんは本作に対してずいぶん厳しいレビューをされてますね。
でも、実はここだけの話、自分もかみぃさんと似たような感想だったりします。
ただ、自分の場合、「王様は裸だ!」という勇気がちょっとありませんでした。
かみぃさん推薦の『マイマイ新子と千年の魔法』はどうやら劇場では観損ねてしまったようです。
DVDになったら、新作のうちに見ようと思います。
これからも独自の視点で映画レビューを頑張ってください。
では失礼します。
投稿情報: せぷ | 2009年12 月14日 (月曜日) 00:43
◆せぷさん
コメントありがとう。
ぜんぜん遅くないですよ。僕なんて、へたすると一ヶ月くらいトラックバックを放置することもありますから(汗;
この映画はねぇ、ホント自分でも不思議に感じるくらい、まったく面白くなかった。
「アラも多いけど頑張ってるじゃん」って思えれば、相応に誉めもするんですけど、この映画に関してはどうしても肯定的になれなかったんです、残念ながら。
たまにこういう世間とはズレた感想になっちゃうこともあるんですが、映画の見方、感じ方は人それぞれだって信念があるんで、馬鹿正直に書いちゃってます。
これに懲りず、また遊びに来てください。
投稿情報: かみぃ@管理人 | 2009年12 月14日 (月曜日) 02:30