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2010年5 月30日 (日曜日)

【映画評】ゼブラーマン ゼブラシティの逆襲 (2010)

ゼブラクイーンこと仲里依紗の熱演が目を見張る、監督・三池崇史&脚本・宮藤官九郎&主演・哀川翔トリオによるマスクド・ヒーロー・コメディ『ゼブラーマン』、6年ぶりの続編。

【満足度:★★☆】 (鑑賞日:2010/05/09)

 けっこう好きだった『ゼブラーマン』(2003年、監督:三池崇史)の、まさかの続編ということで期待大だったんだが、二匹目のドジョウはいなかった。

 子どもの頃から憧れていたマイナーなテレビヒーロー“ゼブラーマン”となってエイリアンから地球を守った小学校教師・市川新市(哀川翔)。彼はこの一件で一夜にして世界中から注目の的。マスコミや野次馬からの好奇の目に晒されることとなり、私生活は崩壊。家族もバラバラになっていた。
 ある日、新市は見知らぬ街角の路上で目覚めた。と、その刹那、目の前に現れた警官隊の拳銃に撃たれて倒れる。
 重傷を負った彼を助けてくれた、市場純市(田中直樹)や看護師・浅野晋平(井上正大)の話によると、数年前に都知事になった相原公蔵(ガダルカナル・タカ)によって東京はゼブラシティと名を変え、犯罪防止の名目で、警官は朝夕5分間の“ゼブラタイム”に自由に人を殺していいという条例が制定されたとのこと。
 そう、新市はあれから15年間も眠っていたのだ。そして自分がゼブラーマンであったことも含め、すべての記憶を失っていた。
 ゼブラシティの広告塔でもある人気アーティスト・ゼブラクイーンこと、都知事の娘・ユイ(仲里依紗)がテレビで歌う姿を目にした新市は不快な胸騒ぎを覚えるのだが…。

 三池監督とクドカンがありきたりな続編を作るわけなかろうと予想した通り、実質的に世界観ははぼ一新して近未来SF的なディストピアが舞台。テイスト的にも前作以上にギャグに徹した脱力系コメディとなった。
 前作『ゼブラーマン』でもナンセンス・コメディな側面はあったが、マスクド・ヒーローをパロディ化しつつも、最後には本来のヒーローものに回帰したカタルシスで締められた。個人的には前作のそういうヒーローものに対するオマージュを忘れないところに惚れていたのよ。

 それだけに今回の、最後までしまりのない、パロディたるゼブラーマンのさらなるセルフ・パロディ化には少々がっかり。これでは劇中のセリフにある「残りカス」そのものではないか。
 基本的にはダークな世界観のエンターテイメント大作だからこそ、最後は前作同様爽快に終わらせて欲しかった。そんな期待を裏切ってみせるのが三池流と言えば“らしい”のだが、ここでの腰砕けな後味はマイナスにしかなっていない。

 ナンセンス・ギャグ路線が基調にあるから細かいことを言ってもしょうがない気もするが、白のゼブラーマンと黒のゼブラクイーンの対比、暴力をヨシとしない浅野と暴力には暴力で応戦しようとする市場の対立、新市ゼブラーマンをモデルとした新・テレビ版『ゼブラーマン』、ミュージックシーンを舞台に暗躍するゼブラクイーン、恐怖政治を遂行する都知事と彼以上の野望を企てる娘・ユイの確執、謎の少女にゼブラミニスカポリスなどなど、面白くしようとあれこれ要素を詰め込んではいる。が、どうも複雑にしすぎでパンク気味。
 思いつきを放り込んだだけの消化不良という印象で、ドラマ的な盛り上がりには欠くし、とりたてて笑いにも結びついていない。

 そんな中で唯一見所となるのは、『時をかける少女』(2010年、監督:谷口正晃)での無邪気な女子高生役が記憶に新しい仲里依紗の弾けっぷり。
 これまでの彼女のイメージを覆す悪女ぶりには、若いながらも女優としての器の大きさを感じずにおれない。その存在感は主役の哀川翔を食っていると言っていい。

 ただ、彼女の気概を認めるからこそあえて言わせてもらうと、キレた悪女役としてはまだまだ甘さが感じられる。
 セクシーなボンデージ風衣裳もあって、同じ三池監督作品『ヤッターマン』(2009年)でドロンジョを演じた深田恭子と比較されるようだけど、こちらのドロンジョは可愛らしさが必要な役で、敵役同士とはいえキャラクター的には真逆だ。
 ゼブラクイーンはその設定から考えても、ただひたすら「怖い」と感じさせるぐらい狂気のオーラを発していないと。そんな本気の狂気から発せられる間抜けな言動が笑いにもつながる役柄なのだから。
 仲自身がそのことを十分理解した上で演じていることは端々から感じられるんだけど、ゼブラクイーンの高笑いは、彼女が注目されるきっかけになった『時をかける少女』(2006年、監督:細田守)でも聞かれた奔放な少女のそれで、幼さが残る。そういう惜しい点が目に付くたびに、「可愛い顔した女の子なのに頑張ってるね」止まりと思ってしまう。
 今回のゼブラクイーン役が彼女のこれからの活躍の場を広げることになるのは間違いないだろうから、今後の成長に期待といったところ。

 そんなわけで、お話としては、三池流のふざけた笑いが合う人には面白い映画でしょうが、筆者的には今ひとつでした。
 むろん、仲里依紗ちゃんのファンなら見逃しちゃいけない怪作だけどね。彼女のPVとして観る分には文字通り、お腹いっぱい、仲いっぱいのてんこ盛り大作ですから。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】哀川翔/仲里依紗/阿部力/井上正大/永野芽郁/中野英雄/六平直政/木下ほうか/マメ山田/水樹奈々/浪岡一喜/レスリー・キー/前田健/スザンヌ/稲生美紀/大橋沙代子/清水ゆう子/生瀬勝久/田中直樹(ココリコ)/ガダルカナル・タカ
  • 【監督】三池崇史
  • 【企画プロデュース】平野隆
  • 【プロデューサー】岡田真/岡田有正/服部紹男
  • 【脚本】宮藤官九郎
  • 【アソシエイトプロデューサー】大原正人/石黒研三
  • 【撮影】田中一成(J.S.C)
  • 【美術】坂本朗
  • 【照明】佐藤浩太
  • 【録音】湯脇房男
  • 【編集】山下健治
  • 【セットデザイナー】橋本創
  • 【装飾】石上淳一
  • 【スタイリスト】松本智恵子
  • 【スタントコーディネーター】辻井啓伺(Gocoo)
  • 【キャスティング】新江佳子
  • 【助監督】山口義高
  • 【制作担当】益岡正志
  • 【音楽】池頼広
  • 【レコーディングエンジニア】松田龍太
  • 【主題歌】「NAMIDA~ココロアバイテ~」 [作詞]田中秀典/emmy [作曲]小形誠/井尻希樹 [編曲]飛内将大 [歌]ゼブラクイーン
  • 【挿入歌】「ゼブラクイーンのテーマ」 [作詞]宮藤官九郎 [作曲]飛内将大 [編曲]飛内将大
  • [歌]ゼブラクイーン
  • 【劇中歌】「ゼブラーマンの歌」 [作詞]宮藤官九郎/甲斐彰 [作曲]遠藤浩二 [編曲]池頼広 [歌]水木一郎
  • 【エンドロールナレーション】水木一郎
  • 【音楽プロデューサー】上野麗/津島玄一
  • 【製作】「ゼブラーマン-ゼブラシティの逆襲-」製作委員会(TBSテレビ/東映/毎日放送/電通/毎日新聞社/WOWOW/小学館/木下工務店/中部日本放送/東映ビデオ/ビンゴ/OLM/RKB毎日放送/ハピネット/Yahoo! JAPAN)
  • 【制作プロダクション】セントラル・アーツ
  • 【配給】東映
  • 【日本公開】2010年
  • 【製作年】2010年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】106分

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