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2010年6 月27日 (日曜日)

【映画評】さんかく (2010)

さんかく
(C) 2010「さんかく」製作委員会

倦怠期の同棲カップルのもとに彼女の中学生の妹が転がり込んでざわめく、三角関係未満の微妙で過激な恋模様。

【満足度:★★★★】 (鑑賞日:2010/06/26)

 微笑ましくて痛々しくて恐ろしい爽やかラブコメディ。

 同棲中の30歳・釣り具ショップ店員の百瀬(高岡蒼甫)と29歳・化粧品販売員の佳代(田畑智子)はちょっと倦怠期。
 そんな二人の住むマンションに、佳代の妹、中学生の桃(小野恵令奈)が夏休みを利用して転がり込んできた。
 天真爛漫でのほほんとした桃の言動に、ナルシストの百瀬はいつしか心くすぐられ、佳代との関係に微妙な溝を作っていく…。

 予想外の拾いもので気に入った『純喫茶磯辺』(2008年)の吉田恵輔監督の新作で、しかもお気に入りの女優さんの一人、田畑智子主演ということで、かなり期待して公開初日に駆けつけた。

 すごく面白いです。一風変わったラブコメを観たいなら自信を持ってオススメできる。
 ただ、個人的にはちょっと期待しすぎた感があって、もう一息インパクトが欲しかった。
 脚本の段階からはっきりとコメディ色だった『純喫茶磯辺』に比べると、良くも悪くも“普通”すぎて。
 普通と言っても映画としてありきたりってことじゃなくて、リアリティありすぎて生々しいっていう意味。

 タイトルや主役の三人が肩寄せ合うキービジュアルから予想されるであろう、ポップな三角関係はいい意味で裏切られる。
 確かにそんな感じの恋模様なんだけど、三角関係未満の一方通行な想いのせめぎ合い。
 悪意のない天然小悪魔な桃の思わせぶりな振る舞いに、ちょっとイタいナルシストの百瀬が一方的に熱を上げ、そんな関係に気づいてもいない佳代が、遠のいていく彼の思いを必死に引き留めようとしがみつく。
 ほんとにもう、ただそれだけのお話なんだけど、その過程で描かれる、男と女の愚かさとか醜さとかが、もう笑っちゃうしかないぐらい、痛々しくも切ない。そして恐ろしい。

 とりあえず男の自分からすると百瀬に肩入れせざるを得ない。
 桃みたいな女の子が目の前にいたら、思わずその気になっちゃうだろうなぁって同情するし、幾分めんどくさい女の佳代にしたって、あんだけ献身的にされ、感情をぶつけられれば情も湧くし、守ってあげたくもなる。とどめはあの笑顔でしょ。そりゃコロッとやられますって。
 たぶん女性がこの映画を観ても、立場を逆転して百瀬を同じように感じるんじゃないかな。

さんかく
さんかく
さんかく

 三人が三人、多少イタいとはいえ、まあまあ普通の人たちなのに、えらくキャラ立ちしてるのがこれまた愉しい。
 三人を演じる高岡蒼甫、田畑智子、小野恵令奈それぞれが、ほんとにいい仕事してると思う。

 百瀬にしても佳代しても、決して出来のいい人間じゃない。明らかに人間的な欠陥を抱えてるんだけど、それでも惹かれ合う。
 憎たらしい相手であっても心配してしまう、優しくしてしまう。そうやってどこか欠けた者同士が支え合うのが人間だよね、って好意的に受け止めさせる幸福感がこの映画にはあるの。まさに人間賛歌。

 付け加えると、エンディングに流れる主題歌『空が白くてさ』のアコースティックな響きが、ラストに見せる田畑智子の笑顔とともに非常に心地よく、余韻を残す後味がすこぶる良い。

さんかく
さんかく
さんかく

 それにしても田畑智子さん、あんたは素晴らしいよ。いい女優さんだ。
 前々からお気に入りの方だったけど、これまでで一番輝いていたんじゃなかろうか。
 一見普通に素敵な女性なのに、一途な愛情が徐々にあらぬ方向にずれていく可愛らしさといったら、背筋が凍るぐらいに愛おしい。
 そしてラストのあの微笑みでしょ、まんまと惚れ直しました。ああ女って恐ろしい。

 対する高岡蒼甫さんもいい味醸してるよ。
 でもおじさんは女じゃないんで多くを語れない。

 一方、小野恵令奈ちゃんは、うん、かわゆいです。
 さすが今をときめくAKB48、ええ、かわゆいです。
 ほのかなエロさもあって、もろ、かわゆいです。
 あえて言う、桃という役は、かわゆいが肝です。
 もっと言う、彼女のかわゆさこそがこの映画の生命線です。
 もう一度言う、ひたすらかわゆいです。
 でもおじさんはロリコンじゃないんで…、素晴らしいキャスティングを誉める(キリッ

 えーと、ところで、もしもし、桃ちゃん?

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】高岡蒼甫/小野恵令奈/田畑智子/矢沢心/太賀/大島優子/赤堀雅秋
  • 【監督/脚本/照明】吉田恵輔
  • 【企画】石田雄治
  • 【プロデューサー】有重陽一/三浦剛/深津智男/曽我勉
  • 【撮影】志田貴之
  • 【美術】藤田徹
  • 【録音】中山寿範
  • 【編集】松竹利郎
  • 【スタイリスト】小里幸子
  • 【ヘアメイク】加藤由紀
  • 【音響効果】田中俊
  • 【助監督】長尾楽
  • 【製作担当】中山泰彰
  • 【音楽】佐々木友理
  • 【主題歌】「空が白くてさ」 [歌]羊毛とおはな [作詞/作曲]市川和典
  • 【製作】「さんかく」製作委員会(日活/テレビ大阪)
  • 【制作プロダクション】日活撮影所/ジャンゴフィルム
  • 【協力プロダクション】フェイス・ワンダワークス
  • 【配給】日活
  • 【日本公開】2010年
  • 【製作年】2010年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】99分

コメント (4)

TBありがとうございました。
TB返ししようとしたら、恐らく桃ちゃんの事を書いた部分にNGワード(エロ系?)が含まれていたのか、スパム扱いで受け付けられませんでした。
なので、コメントのみで失礼します。

桃ちゃん、かわゆいですよね。
舞台挨拶で生の小野恵令奈も見ましたが、実物もけしからんかわゆさでした。
自分もおじさんで、ロリじゃないんですけどね・・・・

◆燃える映画軍団【ブログ編】さん
すみません。うちのシステムはTBを一旦すべて保留するんです。(自動承認にできないんです)
ちゃんとTB返しも届いてますので、承認しておきました。

桃ちゃん、犯罪的なかわゆさでしたね。
まあおじさんとしては、佳代の方が人間味を感じられるんですけど、桃ちゃんのかわゆさには負けてしまいそうです(笑)

TB有難うございました。
「一風変わったラブコメ」これが吉田恵輔監督の持ち味なんでしょうね。
主題歌『空が白くてさ』もエンディングにピッタリでした。
本来は百瀬の立場に立つのが自然でしょうが、田畑贔屓では
佳代を応援したくなりますよね。

◆Hiroさん
僕は正直言って俄然田畑派です(笑)
吉田監督の次回作も待ち遠しいですね。
コメントありがとうございました。

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