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2010年7 月 1日 (木曜日)

【映画評】エルム街の悪夢 (2010)

夢の中からあのフレディが襲ってくる、伝説の傑作ホラー完全リメイク。

【満足度:★★☆】 (鑑賞日:2010/06/28)

 日本では1986年に公開された『エルム街の悪夢』(1984年、監督:ウェス・クレイブン)の完全リメイク。
 旧作から再現された名シーンは懐かしいが、やはり偉大な傑作には及ばない。

 そこはエルム街、真夜中。
 悪夢に悩まされ寝不足顔の高校生ディーン(ケラン・ラッツ)は、同級生のナンシー(ルーニー・マーラ)がアルバイトしているレストランにいた。
 彼は配管が露わなどこかの機械室で、赤と緑のストライプ柄のセーター姿に顔が焼けただれた男フレディ・クルーガー(ジャッキー・アール・ヘイリー)から鉄の爪で斬りつけられる。
 だがそれは夢だった。
 しかしディーンは彼に会いに来た恋人クリス(ケイティ・キャシディ)に「夢が現実になる」と言い残し、手にしたナイフで自分の首を斬りつけ絶命するのだった…。

 一大ムーブメントとなるオリジナル版公開時、当時高校生だった自分はリアルタイムに映画館で観てます。
 この『エルム街の悪夢』シリーズと双璧をなす『13日の金曜日』シリーズはまるで興味がなく、映画館で一度も観たことがないけれど、こちらのエルム街シリーズはなかなか好きで、シリーズ4作目の『エルム街の悪夢4 ザ・ドリームマスター~最後の反撃』(1988年、監督:レニー・ハーリン)まで欠かさず映画館で観てました。
 5作目『エルム街の悪夢5 ザ・ドリームチャイルド』(1989年、監督:スティーヴン・ホプキンス)からは観てないんですけど、これは興味がなくなったというより、全国的な公開規模の縮小で当時住んでいた田舎では簡単には観れられなくなったから。一応の完結編、6作目の『エルム街の悪夢 ザ・ファイナルナイトメア』なんて、いつ公開してたかも気づかないほどでしたから。

 そんな中途半端なファンではありますが、一応思い入れのある人気シリーズの新作ということで、過剰な期待は禁物と肝に銘じて観てきました。

 結論から言えば、控えめに抑えた期待通り、今どきのホラー映画としてまあまあの凡作。
 ホラー映画の楽しさを教えてくれた1984年版を観てからすでに四半世紀近くも経ち、スクリーンから漂う雰囲気に懐かしさを感じると同時に、いくら最新技術で名シーンを再現されても、もはやこのシリーズは古典なんだと認めざるを得ない、なんとも言えない感触が感慨深かった。

 前半はかなり忘れかけていた旧作の“雰囲気”を忠実になぞっている印象。
 キャストが旧シリーズでフレディを演じたロバート・イングランドからジャッキー・アール・ヘイリーに代わったのでフレディの顔立ちが変わったのは個人的にはギリギリ許容範囲。
 細かいストーリーは意外とアレンジされているんだけれど、超有名なバスタブの湯の中から伸びてくる鉄の爪とか、廊下を引きずられる遺体袋とかの再現に、あったあったと思い出す。
 ただシーンとして忠実に再現しているのはわかるのだが、どうも演出が淡泊で、旧作で感じたはずのゾクゾク感がまるでない。ほんと、ただ再現しただけっていう印象なの。

 観ながら感じていた違和感は後半でより強くなる。
 いかにもホラーに謎解きを入れたがる今風だなと思ったのだが、悪夢に悩まされるナンシーらのフレディの正体探しが始まっちゃう。
 それ以上に驚いたのが、行き着くフレディの正体。
 おいおい、ちょっと待て、フレディってそんなロリコン変態男だったか?いやまぁ、連続幼児惨殺魔なんだからそういう傾向はあったかもだけど、そんなあからさまに言及されちゃうと違う映画になっちゃう。
 旧シリーズで自分が感じてたキラー・モンスター、フレディ・クルーガーの魅力って夢と現実を交錯させる神秘性と、絶対的優位からくる余裕かましたインテリジェンスな狂気だったんだけど、これじゃただの異常小児性愛者じゃん。

 後半に感じた強烈な違和感から、思わず旧作を観直しちゃったよ。ひょっとしたら自分の記憶違いかもしれないと思って。
 そしてわかってしまった。やっぱり名作ホラーと呼ばれるオリジナル版の方が断然面白い。

 新作の前半で感じた淡泊さの原因も旧作と比べると歴然。
 旧作のフレディはほんと、やりたい放題のえげつなさで、じわじわと対象をいたぶりながら死に至らしめる。それは言い換えると、作り手があれこれ知恵を絞り出してるんだよ。
 CGを使ってあれこれやってる新作に比べたら特撮技術なんてぜんぜんチープなんだけど、あの手この手で観客を驚かせる創意工夫が怖いながらも楽しいの。

 効果音の使い方も旧作の方が巧い。
 感覚を逆なでする引っ掻き音も印象的な縄跳び唄も、旧作の方がより耳に残る。
 旧作で真っ先に殺された「ティナぁ~」のささやくようなフレディの呼び声も四半世紀ぶりに思い出してゾクゾクした。

 件のフレディの正体だって単なる背景説明でしか言及してない。謎解き映画じゃないんだもの、それでいいのよ。
 絶対的優位と思われたフレディと互角にやりあうヒロイン、旧ナンシーの闘いぶりも新作ナンシーより果敢で観ていてハラハラさせてくれる。

 で、これも時代の差なのか、旧作の方がぜんぜん気持ち悪いのね。
 新作ではこれまた名シーンだったムカデのシーン、なんでカットしちゃったのよ。
 毒気の抜かれたホラー映画がオリジナルより面白くなるわけないじゃない。

 もともとの基本アイデア、夢の中で襲ってくる殺人鬼、襲われたくなかったら眠ってはならないという生理的緊張感は今でも新鮮で、新作の方が恐怖演出はおとなしめなので、ホラー映画初心者には新作もそれなりに楽しめるんじゃないかとは思う。
 でも旧作の方が盛りだくさんの楽しさが詰まっているので、新作を先に観てからオリジナル版を観ても楽しめちゃうはず。
 新作ともどもぜひご覧あれ。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】ジャッキー・アール・ヘイリー/カイル・ガルナー/ルーニー・マーラ/ケイティ・キャシディ/トーマス・デッカー/ケラン・ラッツ
  • 【監督】サミュエル・ベイヤー
  • 【製作】マイケル・ベイ/アンドリュー・フォーム/ブラッド・フーラー
  • 【脚本/原案】ウェズリー・ストリック
  • 【脚本】エリック・ハイセラー
  • 【製作総指揮】マイク・ドレイク/ロバート・シェイ/マイケル・リン/リチャード・ブレナー/ウォルター・ハマダ/デイブ・ノイスタッター
  • 【撮影】ジェフ・カッター
  • 【美術】パトリック・ラム
  • 【編集】グレン・スキャントルベリー
  • 【衣装】マリ=アン・セオオ
  • 【音楽】スティーブ・ジャブロンスキー
  • 【視覚効果監修】ショーン・フェイデン
  • 【特殊効果コーディネーター】ジョン・ミリナック
  • 【配給】ワーナー・ブラザース映画
  • 【原題】A NIGHTMARE ON ELM STREET
  • 【字幕翻訳】アンゼたかし
  • 【日本公開】2010年
  • 【製作年】2010年
  • 【製作国】アメリカ
  • 【上映時間】98分

コメント (4)

はじめまして。思ったことを並べただけの記事にも関わらず、トラックバックありがとうございます。

リメイク版を見て感じた違和感が私だけじゃなかったと知り、ほっとしました(笑)私もオリジナル版の方が断然好きです。

◆Greenさん
多少なりともこのシリーズに思い入れがあったら、今回の新作は違和感アリアリでしょう。
特にフレディあってのエルム街シリーズですから、そのフレディのキャラ設定を変えられちゃったら、もはや別物。
ストーリーはどんなに変えても、フレディさえ筋を通してくれれば納得できたと思うんですけどねぇ。
「殺人鬼=怖い」から「異常性癖者=怖い」っていう時代の流れなんですかね。
僕の感覚では「異常性癖者=気色悪い」であって、それはホラーとは違うジャンルと思うんですが。

私はホラーが苦手なんで基本的にDVDを見た程度なんですね。だからフレディの存在もそのものの存在感というより、ジェイソンとならぶホラーの二大ヒーローといったら変だけどそんな感じなんです。その意味では四半世紀ぶりにフレディを観て、あの縞のセーターとか帽子、鉄の爪、ケロイドで「おぉ~」とは思いました。
もっとも昔あれだけ苦手だったんですが、最近の過激なホラーに慣らされたせいか、この作品自体にはそれほどでしたけども。(苦笑)旧作見返してみますかねぇ。

◆KLYさん
うん、ホラー界の二大ヒーローだからこそ、そのファンにとってフレディ vs. ジェイソンは、エヴァ vs. ガンダムぐらい違うキャラクターなんです。
こう例えればキャラ設定を変えられたことでファンが憤慨する気持ちも想像つくかと(笑)

今どきの残虐ホラーに慣れてれば、オリジナル版は「面白い」と思いますよ。
最近の作品で言うとサム・ライミ監督の『スペル』のような“可笑しみ”もはらんだホラー映画なんで。
ぜひご覧ください。

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