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2010年8 月31日 (火曜日)

【映画評】ハナミズキ (2010)

一青窈のヒット曲「ハナミズキ」をモチーフとした、新垣結衣主演の遠距離純愛ラブストーリー。

【満足度:★★☆】 (鑑賞日:2010/08/30)

 序盤はソリが合わなかったが、世界観が拡がっていく後半の展開は好き。

 カナダ、長距離バスに揺られる一人旅の女性・平沢紗枝(新垣結衣)。彼女は手にした写真に写る灯台を目指していた。
 時は遡り北海道、高校三年生の紗枝は、早稲田大学の推薦入学の試験を受けるため、緊張した面持ちで電車に揺られていた。その電車に乗り合わせた教習所に向かう木内康平(生田斗真)。彼は漁師の父の跡を継ぐべく水産高校に通う少年。
 ところが、二人の乗った電車が鹿と衝突、停まってしまう。これが恋する二人の運命的な出逢いだった…。

 一青窈のヒット曲「ハナミズキ」をモチーフとした10年にわたる純愛ラブストーリー。
 『恋空』(2007年、監督:今井夏木)、『BALLAD 名もなき恋のうた』(2009年、監督:山崎貴)の新垣結衣と、『人間失格』(2009年、監督:荒戸源次郎)、『シーサイドモーテル』(2010年、監督:守屋健太郎)の生田斗真が、10年越しの遠距離恋愛に揺れる主役二人を務める。
 監督は『いま、会いにゆきます』(2004年)、『涙そうそう』(2006年)の土井裕泰。

 予告編や作品の概要から予想される通りの、いちゃついたり離れたりを10年も引っ張る恋愛映画ですよ、一言で言えば。
 正直なところ、二人がつき合い始める高校時代での“掴み”に失敗してる感があり、紗枝が大学に進学したまでの序盤が少々かったるい。
 いくら紗枝が東京に引っ越して遠距離恋愛になったところで二人の気持ちは基本的に揺るがないから、どうもおじさんの目には、ただいちゃついているだけに見えてしまったのよ。

 物語が動き始めるのは、紗枝の就職活動が始まる大学卒業間近。
 ここで初めて、二人の思いだけでは成り行かない現実にぶち当たる。
 恋愛モノは障害がないと盛り上がらないからね。

 こうなってくると、やっと冒頭の伏線が効いてくる。
 この手の純愛モノは、紆余曲折があろうとも最後は綺麗にくっつくんでしょ、という暗黙の了解がある。
 しかしそれを甘んじて見過ごしていては、恋愛成就の緊張感が削がれる。
 そこでこの映画が取った仕掛け。冒頭で紗枝はなぜ一人旅だったのか。

 その後の顛末は実際にご覧になっていただきたいが、少々かったるかった序盤に比べ、中盤以降、先が読めない緊張感と、単に二人だけのラブストーリーから、少しずつ作品世界が拡がっていく面白さがあって、意外と言ってはなんだが、けっこう愉しめた。

 特に印象的だったのが、予想外のところで不意に登場した薬師丸ひろ子演じる紗枝の母。
 それまでもざっくばらんな母親だったが、ここに来て、この親にしてこの娘という行動力が裏打ちされた。
 個人的には序盤のソリの合わなさ加減に、やや引いて観ていた感があったのだが、ここで一気にギヤが上がった。その後はどんどんのめり込むことに。

 序盤はただ二人を見守るだけだった周囲の人々にも、10年の間にはドラマが生まれる。
 そんなサイドストーリーを、饒舌になりすぎず、さらりと見せる。

 康平の恋敵ともいうべき向井理演じる紗枝の先輩・北見純一の決着のつけ方は少々安易という気がしないでもなかったが、父親の面影を宿す彼に神が与えた宿命。それもまた人生、ということなんだろう。
 この落としどころは、康平と純一を直接対決させなかったからこそ響く。
 それは紗枝自身の選択で、それを康平も喜んでいたのだから。

 一方で、紗枝の恋敵、蓮佛美沙子演じるリツ子を最後まで描いたこと。これにはちょっと驚いた。
 紗枝と康平のラブストーリーという枠組みでは、彼女の結末は蛇足という気がしないでもない。あのままフェードアウトしても差し支えのない位置づけだったはず。
 しかしそれを描いたということは、監督はこの映画を二人の世界だけで終わらせず、二人を取り巻く人々の群像劇として描こうとしている証左だろう。

 映画が進むにつれ、紗枝と康平の10年越しの恋と同時進行の、あるいはそれ以上の時間を掛けた“想い”も描かれていると気づかされる。
 この映画の主役はもちろん新垣結衣と生田斗真が演じる紗枝と康平だが、映画は人々の人生をもっと広い視野で、すごく優しい視点で見せようとしているのだ。

 10年の時間を掛け、北海道、東京、ニューヨーク、カナダと世界を股に掛けた紗枝と康平のラブストーリーの結末は、そこまでの紆余曲折に比べると案外あっさりしたものだが、その淡泊さは、紗枝と康平の人生はまだ過程だということを物語る。
 最後の最後で紗枝と康平が交わす言葉、それは互いの人生にエールを贈りあっていた二人だからこその「返礼」。
 ハナミズキの花が見届ける二人の前には、百年先をも見据えた新たなスタートラインがそこにある。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】新垣結衣/生田斗真/蓮佛美沙子/徳永えり/金井勇太/小柳友/高橋努/木之元亮/林愛夏/水島かおり/松重豊/ARATA/木村祐一/向井理/薬師丸ひろ子
  • 【監督】土井裕泰
  • 【製作】八木康夫
  • 【エグゼクティブプロデューサー】濱名一哉
  • 【プロデューサー】那須田淳/進藤淳一
  • 【脚本】吉田紀子
  • 【音楽】羽毛田丈史
  • 【撮影】佐々木原保志
  • 【美術】部谷京子
  • 【照明】祷宮信
  • 【録音】小野寺修
  • 【編集】穂垣順之助
  • 【記録】鈴木一美
  • 【助監督】宮村敏正
  • 【製作担当】萩原順
  • 【アソシエイトプロデューサー】辻本珠子
  • 【ラインプロデューサー】橋本靖
  • 【主題歌】「ハナミズキ」 [作詞]一青窈 [作曲]マシコタツロウ [編曲]武部聡志 [唄]一青窈
  • 【劇中歌】「影踏み」 [作詞]一青窈 [作曲]都志見隆 [編曲]山内薫 [唄]一青窈
  • 【音楽エグゼクティブプロデューサー】桑波田景信
  • 【製作】映画「ハナミズキ」製作委員会(TBSテレビ/東宝/レプロ エンタテインメント/ジェイ・ストリーム/毎日放送/中部日本放送/RKB毎日放送/TBSラジオ&コミュニケーションズ/TCエンタテインメント/北海道放送)
  • 【配給】東宝
  • 【日本公開】2010年
  • 【製作年】2010年
  • 【製作国】日本
  • 【上映時間】128分

コメント (2)

個人的にはイチャイチャしてる前半が好きです。
理由はイチャイチャしてるから。
後半はそれぞれの旦那と奥さんが都合よく整理されちゃった感じにちょっと醒めてしまいました。

◆ふじき78さん
こんばんは。コメントありがとうございます。
後半はちょっとご都合主義的ではありましたね。

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