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2010年10 月24日 (日曜日)

【コラム】『マイマイ新子と千年の魔法』待っててね、待っちょるよ~第23回東京国際映画祭みなと上映会

 昨日23日に第23回東京国際映画祭が東京・六本木ヒルズで開幕しました。
 そしてその初日、映画祭の共催企画“みなと上映会”の一本として『マイマイ新子と千年の魔法』が上映されました。
 『マイマイ新子と千年の魔法』としては、昨年の第22回にも関連イベント「アニメーションmeetsロケーション~ヒットアニメに学ぶロケハン術!」で片渕須直監督が講演されている(報道記事:プレセペアニメ!アニメ!)ので、同一作品で2年連続東京国際映画祭参加という快挙!

 自分は当初この日は東京にいないはずだったので参加は諦めていたのですが、急遽そちらの予定が変わったお陰で、このめでたい席に立ち合わせていただくことができました。

 みなと上映会は「子どもから大人まで一緒に楽しめる作品」を選んだ上映ということで、客席には多くの家族連れが詰めかけていました。
 今回の上映で初めて『マイマイ新子と千年の魔法』を観たというお客さんも半数以上いらしたようでした。DVD化され、レンタル店でのレンタルも始まったことで、それを機にこの映画を観てくださった方もたくさんいらっしゃるはずですが、まだまだ上映会の告知で初めて「こういう機会だから観てみよう」という方も少なくないんでしょうね。

 上映後には片渕須直監督、岩瀬智彦プロデューサー両氏が舞台挨拶に登壇され、その質問コーナーで、小学生と思わしき女の子が「なぜ新子ちゃんではなくて、貴伊子ちゃんが諾子になったんですか?」という、なかなか鋭い質問を監督に投げ掛けていました。
 それに対する片渕監督のお答えは、「おそらく新子ちゃんは、映画の中で描かれていないだけで、いつも諾子ちゃんになってるんじゃないかな。諾子だけでなく、想像を広げてもっといろんな人にも。貴伊子ちゃんにとっては、それが初めての経験だったから映画として描かれたんだと思う」とのこと。

 すごく象徴的だなと感じたんだけど、マイマイ新子に限らず「映画を観る」って、映像として描かれていることを確かめるだけじゃなく、映像で描かれていない部分を観客それぞれが自分の知識や経験から想像して初めてその映画が完成されると思うのね。だから同じ映画でも観た人の数だけ感想は違ってくる。
 小説だったら文字だけの文章から様々な光景を想像するでしょ。映画だってそれは同じ。映し出された映像がすべてじゃない。

 扱っているテーマの難易とは別に、観客が想像する余地がないくらい説明的な映画は映画的に“わかりやすい映画”なんだけど、それは監督から与えられた解釈しか認めない映画でもあるの。でも『マイマイ新子と千年の魔法』はそういう映画ではない。自分で想像できる“余白”がたくさんあるから面白い。
 その余白を「からっぽ」に思った人にはエピソードが断片的に語られるだけって感じられただろうし、余白を意識しつつも自分で埋められない人には難解な映画になってしまうんだけど。
 一方で自分自身の経験に裏打ちされた極個人的な思いで余白を埋めてしまった僕のような人には、ほかの何とも替えられない唯一無二の作品となってしまう。こうなってくるともう、「僕の観た『マイマイ新子と千年の魔法』という映画」は「片渕監督すら知らない映画」になってるの。
 以前、片渕監督が「自分では泣かせる映画を作ったつもりはなくて、観客の皆さんがこの映画のどういうところで泣いてくださるのかよくわからない」というようなことをおっしゃっていたんだけど、これってまさに、“最後の仕上げを観客自身がやっている”ことの裏返しなんだよね。

 昨日の女の子の質問に対する片渕監督のお答えも、決して断定的ではなくて、「おそらくそうなんじゃないかな」という一歩引いた想像という形で答えてらっしゃるの。
 もちろん作品の監督で、しかも脚本も兼ねてらっしゃるのだから、きっと監督自身にとっての明確な“正解”は当然持ってらっしゃるはずなんだけど、こういう質疑応答でも、観客の想像の余地を残すという姿勢は一貫しているのね。
 それは映画自体が、貴伊子が想像力に目覚める話だから、っていうのもあるでしょうが、作品を問わず、片渕監督の監督としてのスタンスがそうさせるんでしょう。
 だから昨日質問した女の子にも、片渕監督のお答えだけで満足せず、あれやこれやと想像していて欲しいな、と、期待する次第。

 さて、上映が終わった後は、常連のお仲間たちと一緒に、夜の街へとくり出すことに相成りました。
 遊び盛りの大人たちが、その後にどんな愉しい時間を過ごしたかは、皆さんのご想像にお任せします。

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