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2011年10 月31日 (月曜日)

【映画評】ミッション:8ミニッツ (2011)

8分間だけ犠牲者の意識に入れる装置を使って、連続爆破テロの犯人を突き止めようとするSFサスペンス。

【満足度:★★★★】 (鑑賞日:2011/10/30)

 『月に囚われた男』のダンカン・ジョーンズ監督が再び放つSFサスペンスの快作。

 コルター・スティーヴンス大尉(ジェイク・ギレンホール)が目覚めるとそこはシカゴ行きの電車の中だった。目の前の席に座っている女性クリスティーナ(ミシェル・モナハン)から「ショーン」と呼ばれるが、コルターはショーンも彼女のことも知らない。自分の身に何が起こっているのかもわからない。
 そうこうするうちにコルターたちが乗った電車が彼らもろとも大爆発を起こす。
 と、次の瞬間、コルターは密閉されたカプセルの中にいた。意識が朦朧とするコルター。モニター越しに軍の制服を着た女性グッドウィン(ヴェラ・ファーミガ)が声をかける。
 実はコルターは、特殊な装置により列車爆破テロの犠牲者ショーンの残された記憶とリンクし、爆弾を仕掛けた犯人を突き止める任務に携わっていたのだ。しかし過去を追体験できるのは爆破直前の8分間のみ。犯人を突き止めるまで、繰り返し生前のショーンの身体とシンクロするコルターだったが…。

 安っぽい邦題で損をしてると思うのだが、これはなかなかよく練られたSF映画だ。原題はセリフで何度も出てくる“SOURCE CODE”。原題のままでよかったと思うんだけどな。
 邦題以上にいただけないのが、キャッチコピーとなっている「このラスト、映画通ほどダマされる。」との煽り文句。そういう映画じゃないから。それっぽいオチもあるけど、この手のSF映画に見慣れていればぜんぜん守備範囲。

 ダンカン監督の前作『月に囚われた男』ほどストイックではないものの、本作もあざとい宣伝から予想されるような派手な映画ではないよ。犯人捜しのサスペンスは案外あっけないし、爆破シーンこそ派手だけどアクションとか期待すると間違いなく肩すかしを食らう。どちらかというとロマンチックなSFなのよ。

 監督のストーリーテリングが巧みで、表面的な派手さはそれほどでもない上に、微妙な状況の違いだけで展開されていく話にも関わらず、観客の興味をぐいぐい引っ張る。8分間の同じシチュエーションの繰り返しの中で変わっていく登場人物の心情が、この先に起こる何かを期待させてわくわくさせるの。

 ただ、ここに描かれているサイエンス・フィクションの題材に対する耐性がないと少々難解に感じるかもって気がする。
 映画的にややこしいのは、この装置を作ったラトレッジ博士(ジェフリー・ライト)自身がこの装置の真の力をわかっていなかったために、博士の説明と映画が行き着く結果とに矛盾が生じてしまっている点。博士の言葉を鵜呑みにしたままでいると、終盤の展開に混乱するんじゃないかな。
 ネタバレしない範囲でひとつだけ懸念する点を書いとくと、あのラストは“夢オチ”じゃないですから。さすがにそこで勘違いする人はいないか。

 勘のいいSF好きなら具体的に書かなくても何を題材にしてるかわかってしまうと思うんだけど、一歩間違うと何でもありの世界観ですよ。
 で、下手な監督がこれに手を出すと、ぐだぐだになってしらけるんだけど、ダンカン監督は違った。
 小難しい話はざっくりはしょって、さらっと哲学的なセリフを交えて人生論的な示唆を提示しつつ、SF的にニヤリとさせる決着をつけてきれいに終わる。若いのに早くも貫禄を感じさせる匠の技だわ。

 観終わるとコルターに代わって今度は観客自身がもう一度最初から観たくなる良質のリピートSFなので、SF好きなら特にお見逃しなきよう。
 難しい題材をウエルメイドな娯楽作に仕上げた監督の次回作にも期待大。大丈夫、きっとうまくいく。

作品データ - Film Data

  • 【キャスト】ジェイク・ギレンホール/ミシェル・モナハン/ヴェラ・ファーミガ/ジェフリー・ライト
  • 【監督】ダンカン・ジョーンズ
  • 【脚本】ベン・リプリー
  • 【製作】マーク・ゴードン/フィリップ・ルスレ/ジョーダン・ウィン
  • 【製作総指揮】ホーク・コッチ/ジョブ・ブロディ/ファブリス・ジャンフェルミ
  • 【撮影監督】ドン・バーゲス,ASC
  • 【プロダクション・デザイン】バリー・チューシッド
  • 【編集】ポール・ハーシ,A.C.E.
  • 【衣裳】レネー・エイプリル
  • 【音楽】クリス・ベーコン
  • 【提供】ヴァンドーム・ピクチャーズ
  • 【共同提供】スタジオカナル
  • 【製作】マーク・ゴードン・カンパニー
  • 【配給】ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
  • 【原題】SOURCE CODE
  • 【字幕翻訳】林完治
  • 【日本公開】2011年
  • 【製作年】2011年
  • 【製作国】アメリカ
  • 【上映時間】94分

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